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天才様の唯物論  作者: 上海X
御伽奏子と譜祇遊戯
100/116

96時限目 開催

100話目です

正直ここまで続けられるとは思ってませんでした

 AM9:00


『さぁ始まってまいりました年に一度の例大祭! そぐわぬ雰囲気ロマンと青春! 手にした瞬間(イマ)は一度きり! 今はしゃがずにいつはしゃぐ!? 祭が君を待っている!』


「……何だこのアナウンス」

「あ、あはは……」


 意味不明なアナウンスが流れだし、文化祭は開催を告げた。

 修学旅行の時もあったけど、一体誰が何のためにやってるんだか。

 ともかく、今日は晴天で良かった。


 今は校門付近。まだ入場者は居らず、学生も大半は教室にいる。

 夏燐や咲夜、零や雷斗たちは俺の近くで派手に装飾された校内を観ながら、パンフレットを観ていた。


「開始の場所は自由なのか」

「そうっすねぇ。まぁ本当に大きな学校なので、時間の尽くす限り行きたい所に行けって感じで」

「自由なのは良いんだけど、歩くの疲れるんだよねぇ」

「さいで」


 夏燐から渡されたパンフレットには、様々な催し物と講堂や屋外コンサート等のタイムスケジュールが記されていた。

 桜音祇と御霊の題目は、ちょうど昼過ぎからだそうだ。


「咲夜達は二人の手伝いに行くんだろ?」

「はい。といってもちょっと照明とか音響とかやるだけですけど」

「調光室と音響室で分かれててそれで」

「俺はどこに向かえば?」

「先生は舞台裏でいいんじゃないですか? 僕らや二人に何かあったとき対応できるでしょうし。表に居られないなら特に」

「……了解した」


 零が涼やかにそう述べる。

 人の事情を分かった上での発言だろうが…………どことなくそれ以外の何かを意図したように聞こえた。

 まぁ、気の所為だろう。


「招待した入場者は少し遅れて来るらしいから、それまでは自由にするよ。

 お前達も回りたい所とかあるだろう」

「はーい」「オレもどっか回ってくるっす」

「「じゃあ後で」」


 そこから散開して、俺は適当に歩き出す。

 中途、見覚えのある五人組に遭遇した。

 高校生ながらスーツに身を包み、大仰な荷物を運んでいる。

 その内の一人――――甲が俺に気がつくと、挨拶を交わしてくれた。


「おはようございます」

「ア、先生!」

「リルク達じゃないか。なんだその荷物は? …………てか、なんだその服装は……」

「聞かないで下さい……」

「コイツに無理矢理着させられてるの!」

「面白いじゃないですカ!!? スカ◯ラみたいで」

「そんな管楽器使わないだろうがっ」


 橘と甲はカジュアルなスーツの部類。少し着崩しており、洒落た雰囲気になっている。本人らはスーツに着せられている感覚がするようで、どこか落ち着かない様子だった。

 舘石とリルクも同じようなスーツだが、どこか燕尾服のような見た目をしている。というか多分燕尾服。どこかの執事か、と問いたくなったが舘石の表情を見て喉元で止めた。


「四人は分かるんだが……。なんで風岡まで男用のスーツなんだ……?」

「それは私が聞きたいっ!!」

「だって女性が男装って格好良くなイですカ!!」

「卯月が前着てたでしょうがっ!!」

「だっテ最近着てないですシ……」


 風岡も、二人同様燕尾服を着用していた。

 苛ついた表情を露骨に出して、訴えかけている。可哀想に。


「お前達はいつ頃に演奏なんだ?」

「僕らはお昼頃に、桜音祇さん達の手前で」

「それまでは自由だけど、クラスの手伝いとかもありながらって感じです」

「良かったラ先生も来てみて下サイ!!」

「お、おう……了解」


 大それた動きはできないものの、時間があったら色々な出し物を見てみたい。

 満弦先生や拓真には悪いが、隠れなければならない。本当に申し訳ないと思っているが、それぞれ会いたい相手もいるだろうから、まだマジだろう。

 ふと、思い出して声を掛ける。


「そいえば、無響や星夜はどこにいるか知ってるか?」

「星夜って……あぁ、復学した」

「見てないですけど……無響さんなら噂ぐらいなら」


 甲が心当たりがあるように口を開けるが、その表情はどこか所在なさげなようだった。

 他の四人とともに、思わず首を傾げる。


「噂ですよ? もし本当にいるんだったら……無響のクラスの出し物は和風の喫茶店だとは」

「和風の喫茶店? それならまぁ別に何も悪くは――――」

「いやいや先生、こういう所の喫茶店っていうのは」

「コンカフェとかと一緒でしょ? どうせ」

「つまりは和風メイドってコトですカ!?」

「――――まぁ……恐らくは」


 無響が……メイド? こんなこと拓真が知ったら絶対ネタとして扱うに決まってる。

 無響のためにも言うまいか……、いや、拓真自身「喫茶店」と名のつく所に飛び込む可能性もある。

 まぁ最悪のケースは免れないだろう。


 今のうちに心の中で合掌しておいて、俺も後で覗き見だけしようと覚悟する。

 道理でここ数日、出会ってない訳だった。


「金剛とか銀杏姉妹は放浪してるって聞いたけど、他の遊戯の皆のことはあまり知り得てない」

「出会ったラ何か伝えておくこととかあるんですカ?」

「いや、特にない。ちょっと気になっただけだ。それに連絡の手段くらいなら捻出できる」


 拓真が来てしまえば学校のセキュリティなんざハッキングするのなんて容易だ。連絡程度屁でもない。


「先生、顔怖くなってますよ」

「絶対何か変なこと考えてるでしょ」

「失礼な」


 客入りはもうすぐ。

 俺は人の往来しない道や客が出入りできない所を縫って動くしかない。敷地が広い分動けるスペースも多いが、どうしても制限される。

 ここに屯していると怪しまれてしまう。星夜の居場所は気になるが、いい加減去っておこう。


「じゃあまた」

「はい! 先生も楽しんで下さい!」


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