雪山の毛深い巨人
極寒の雪山の麓にある集落には、雪山には毛深い巨人が住んでいると言う話しが雪山の麓に人が移り住み集落が出来た300年程前から、親から子へ子から孫へと語り継がれて来た。
なんでそんな事を21世紀になった今思い出しているかと言うと、今朝、集落のメインストリートに巨大な足跡が残されていたからだ。
雪山の中腹から集落の北側まで繋がる森の中から巨大な足跡が始まり、南側の州道の先にある森の中まで続いている足跡。
集落に住む誰かの悪戯かとも思ったが、昨晩は集落を含む此の周辺を凄まじい吹雪が吹き荒れ天気予報で事前にそれを知った集落に住む者たちは皆、最近の燃料費高騰の事もあって集落の者を全員収容出来る私の家で1夜を過ごしているからあり得ない。
外部の者の仕業かとも思ったがそれもあり得なかった。
何もかも凍りつく凄まじい吹雪の中で外に居れば凍りついた遺体で発見されるだろうし、そもそも州道が集落の100キロほど南にある隣町で昨日の朝から通行止めになっているからだ。
巨大な足跡の跡を辿り州道の先の森の奥を窺う私や私の周りにいる集落の男たちは、森の深みから私たちを鋭く見つめる何者かの視線を先ほどから感じていて、その恐怖から遠ざかろうと手に持っているライフル銃を握りしめるのであった。