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トカレスカ騎士団  作者: 観測者エルネード
第一章:騎士団設立篇
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魔獣掃討完遂 ーーーそして来る、新たな戦ーーー

 あれから数日間かけてトカレスカ騎士団によってメドゥーエク街とティール港町の間の街道は完遂された。街道掃討のメンバー達はひとまずティール港町で一息つく。アニールとエルベンとイヴイレスは指揮官として、町の喧騒から外れた場を借りて打ち合わせを開始している。幼なじみ三人がそれぞれの反省点を語り合う裏で、海岸にて月を見上げているアルトのもとにレイザがやってくる。沈鬱した面向きでレイザがアルトの顔を見るが、依然として無口のままだ。


「何かな、レイザどの」


 アルトに声をかけられて初めて、レイザが閉ざされた口を開く。


「謝罪をしに来た」


 レイザが改めて姿勢を整え、頭を下げる。


「私はあなたのことを誤解していた。旧エイジリア王国兵という肩書だけで判断して勝手に悪者にしていた。実際のあなたは光の民を迫害したことがなかったというのに。本当に申し訳ない」


 その言葉を受け止めたアルトは襟を正し、レイザの言葉を咀嚼する。


「いや、エイジリア王国が光の民や他の種族・民族を迫害していたのは事実だし、他のエイジリア人が迫害しているのを止めなかったのも事実だ。元々エイジリアの兵だった私には、その責任を負う必要がある」

「……いや、あなたにはその責任を負う必要はない。今はトカレスカ騎士団の一員なんだ、あなたが過去を気にする必要はない!」

「いや、俺が負いたいんだ。あのとき自分にできることがもっとあったはずだ、とずっと後悔しているんだ、私は」


 その言葉にあ然としたレイザはしばし下唇を噛みながらアルトの言葉を反芻する。


「……わかった。なら、トカレスカ騎士団の一員として過去の罪を償ってくれ。今度は、他の種族・民族に優しくするんだな」

「ああ。俺はもとよりそのつもりだ。一生をかけて償っていくさ」


 二人の手が握手される。ここに、過去から続く因縁のひとつは一旦の解決をみたのだ。



 翌日、ティール港町から来た騎士団メンバーは港町に残り、メドゥーエク街からやってきたメンバーは辿ってきた道を戻ってメドゥーエク街に帰ることになった。帰還準備を進める裏で、アニールがティール港町の住人に対して演説をすることになった。アニールが演説の場まで歩いている時、ひとりの町人がアニールに話しかけてきた。


「トカレスカ様、久しぶりです! 街道の掃討、お疲れ様でした! 私、メドゥーエク街がどんなところなのか分からないので、行くのとっても楽しみです!」


 そう言う町人の目は輝いている。ーーーその目を見たアニールは心に深く胸打たれた。


(そうか、こうやって秩序は成り立っていく。人々の喜びの上に世界が成り立っていく)


 心打たれたアニールはしばらく立ち尽くし、我を取り返すと目の前の町人に言葉を返す。


「ありがとう。そう言ってくれて嬉しい。ーーーぜひ、メドゥーエク街に来てくれ」


 そこでアニールは再び歩き始め、演説の場に立つ。


「みんな、久しぶりだな」


 大きな木箱の上に立ち、アニールはティール港町を見回す。広場は先ほどの町人と同じ、輝く目で埋め尽くされている。


(ーーーああ、本当に騎士団を立てて良かった。世界の礎となれるなら、本望だ)


「我々トカレスカ騎士団はティール港町とメドゥーエク街を結ぶ街道の魔獣を掃討した。これが意味するのは、みんなが港町と街を行き来できることになったということだ! ……もちろん魔獣がまた現れないとは限らないので、街道を利用する時は騎士団団員の随伴が必要になるだろう。みんな! 街道を利用したい時は我々に相談してくれ! ティール港町とメドゥーエク街の更なる交流と繁栄は我々が保障する!」


 アニールの言葉の後に歓声が続く。


「これで港町をやっと出れる……!」

「トカレスカさん、あんたに一生ついてくよ!」

「街道万歳! 街道万歳!」


 人々がそれぞれ高く挙げた手が陽光に照らされて光り輝く。


(ーーーこれを見たかった。これで良いんだ)


 胸の中に温かいものが満ちるのを感じながら、アニールはゆっくりと木箱を降りる。温かな陽光に包まれながらアニールは帰りの馬車に乗り、馬車がティール港町を離れて小高い丘へと上る。



ーーーーーーーーーーーーーーーー



 アニールの心はすぐに掻き乱されることになる。ーーーアニール達がメドゥーエク街に帰ってきた時、街の外の田畑から数本の燃え燻る黒煙が立ち昇っていたのだ。


「……なんだ、これは」


 アニールが馬車から飛び降りて開口一番に出たのは、理解が追いつかない言葉だった。メドゥーエク街に帰ってきた騎士団メンバーが見たのは、既に焼けた田畑。そこに、人と人が争った形跡があった。幾つものの足跡が絡み合い、血痕が残されていた。そこへ、メドゥーエク街に残っていたメルカ教の聖兵がやって来る。その聖兵は、右手に包帯が巻かれている。


「アニール様、残念なお知らせがーーー」

「報告しろ!!!!」


 アニールが怒鳴り立てる。アニールの目が充血している。アニールの血管が浮き出ている。アニールは今、怒りと悲しみに満ち溢れている。


「アニール! メルカ教の人に怒鳴ったって仕方ないだろ!」


 すぐさまエルベンがアニールを制する。しかし、そのエルベンも怒りで表情が歪んでいた。


「……報告します。おとといの夜、北の方から数人かの野盗がやってきて田畑に火をつけました。我々やトカレスカ騎士団の残っていた団員で応戦し、こちら側にも怪我人は出ましたが野盗を撃退でしました。ですが火の勢いは止められず、田畑の半分が焼けてしまいました」


 メルカ教の聖兵はそう報告するとメドゥーエク街の門に向かって歩き、アニール達の帰還を街内の住民に報告した。

 アニール達がメドゥーエク街の中に帰る。負傷者が療養している建物の前に差し掛かると、アニールは怒りを隠せぬまま建物の中に入っていった。

 その様子は、凄惨であった。奇跡的に死者は出ていないが、腕を無くした者、顔を焼かれた者、下半身が動かなくなった者。メルカ教の聖兵とトカレスカ騎士団の団員、共に被害が出ていた。


「……皆の者、聞いてくれ。あなた方は街を守る為によく戦った! その武勇を私たちは永遠に胸に留め、讃える。後のことは我々に任せてくれ!」


 アニールは、怒りに顔を歪めながら涙を流していた。その表情のまま、負傷者を含めて野盗と戦った者を讃え、療養所を後にする。


「アニール様、早急に指令を。これは迅速な対応が必要でございます」


 アルトが横からそうアドバイスする。それは言うまでもない内容だったが、そう声がけしておくことでアニールの気持ちを引き締めるのに必要だった。

 アニールは一呼吸をして、指令を出す。


「ーーーメドゥーエク街の騎士団団員全員を集めろ。街内のメルカ教の聖兵にもなるべく全員来てもらうよう要請しろ。ティール港町方面は野盗について警戒し、港町の守りを固めるよう伝令を出せ。街道掃討から帰ってきたばかりの諸君、休んでいる暇はないぞ」


 アニールが指令を出す。アニールに着いてきている騎士団の団員もまた全員、怒りで身が震えている。


「必ず、この雪辱を果たしてやるぞ!!」

「「「おう!!!!!!!」」」


アニールの激に数多の拳が応え、場が揺れる。




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