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200年の眠りから覚めた聖王女は龍にもイケメン薔薇騎士に溺愛されて幸せになる未来しか約束されていません  作者: 七海美桜
ギルベルト編

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祭りへのお誘い

「お招きありがとうございます、ヴェンデル。今日も変わらず可愛い人ですね」

 午後のお茶の時間に現れたギルベルトは、ヴェンデルガルトを見ると嬉しそうに笑顔を浮かべて手にしていたプレゼントを差し出した。噂されているようなぼんやりとした風情は感じなかった。にこにこと笑っている。

「明日の朝食の後にでも、召し上がってください。リリントの実です」

 今が旬の、甘酸っぱく瑞々しい薄桃色の木になる実だ。ビルギットがその土産を受け取ると、深々と頭を下げた。


「ギルベルト様、お茶が終わりましたら夕食まで、ヴェンデルガルト様と西の国のお祭り会場に行かれてはいかがですか?」

「西の国のお祭りに……ですか?」

 ヴェンデルガルトがなかなかそれを話題にしなかったので、お茶のお代わりをカップに注ぎながら、カリーナがそうギルベルトに話した。

「ヴェンデルガルト様は、見たことがないそうです。是非、お見せしたいんです」

「そういえば……バッハシュタイン王国は、西の国とは国交がなかったはずですね?」

「はい。西の国の文化の事は、あまり知りません」

 バルシュミーデ皇国になってから、西に攻め込み西の国のほとんどがバルシュミーデ皇国の植民地になった。バッハシュタイン王国は保守的な国だったので、龍に守られて東のレーヴェニヒ王国のようにあまり外交が盛んな国ではなかった。


 しかし、その話題になってからギルベルトの顔が陰った。先ほどまでは楽しそうだったのだが、ヴェンデルガルトを祭りの場に連れて行くことにあまり乗り気ではないようだ。

「あの……最近ギルベルト様がお元気ではないことと西の国のお祭りは、何か関係あるのでしょうか?」

 ヴェンデルガルトは、少し心配げにギルベルトに尋ねた。ギルベルトは、その言葉に少し驚いたようだ。

「私の事で、ヴェンデルに心配させてしまっていたなんて……すみません」

 本当に申し訳なさそうに、ギルベルトはヴェンデルガルトの手をそっと握った。浮かない顔をしていたが、ギルベルトは何かを決めたようだ。


「隠れていていては、騎士らしくありませんね。ヴェンデル、お祭りに一緒に行きましょう。ビルギットたちも、ロルフと一緒に行きませんか?」

「ギルベルト様とヴェンデルガルト様がご一緒にお出かけになるのに、お邪魔できません。どうぞ私たちの事はお気になさらずに」

 ギルベルトの言葉に、カリーナが「賛成」と言い出す前に慌ててビルギットが断った。ビルギットはギルベルトの柔らかな物腰と聡明さに、尊敬しているようなところがある。隣でがっかりしたような顔で、カリーナが肩を落とした。

「少し離れて、付いて行きます。ビルギットも知らないことですし、よろしいでしょうか?」

 意外なことに、ロルフがそう言った。ビルギットもカリーナも驚いた顔をしたが、ギルベルトは優しげな表情で頷いた。

「勿論だよ。君たちには、たくさん世話になっている。それに、毎日大切なヴェンデルのお世話も熱心にしてくれている。たまには、新しいことに触れるのもいい」

 ギルベルトは、ヴェンデルガルトが南の国に連れ去られたときに、ひどく落ち込んでいたのをメイド二人にたくさん励まされたことを忘れていない。その礼になるなら、一緒に気分転換に行こうと思っていた。

「ありがとうございます! お邪魔しません!」

 嬉しそうな顔でカリーナがギルベルトにお辞儀をした。ビルギットは少し困った顔をしていたが、ギルベルトが頷くと同じようにお辞儀をした。

「では、暗くなる前に出よう。たくさんの露店やダンスが行われているので、時間が足りなく感じるほどですよ」

 ギルベルトはゆっくりお茶を飲み干すと、ヴェンデルガルトにそう話しかけた。慌ててヴェンデルガルトもお茶を飲み干して、メイド二人も出かける用意をする。

「ロルフ、二人を頼むよ。大事な子たちだから」

「はい、承知しています」

 用意をしている三人を眺めながら、ギルベルトはロルフにメイドの事を頼んだ。人込みで、何かあっては困る。何より、彼女たちに何かあっては、ヴェンデルガルトが悲しむ。メイドたちのためのお金をロルフに預けて、小さなカバンを手にしたヴェンデルガルトの手を握ってギルベルトは彼女に笑いかけた。

「祭りの場所は、人込みです。迷子にならないように、しっかり手を握っていてくださいね」

「はい!」

 ヴェンデルガルトが、嬉しそうにギルベルトに笑い返した。その笑顔を見てギルベルトは、この『西の旅団』から逃げようと隠れていた自分が、少し恥ずかしくなった。小さくて柔らかいヴェンデルガルトの手を握って、部屋から出た。後ろから、はしゃぐメイドを落ち着かせながらロルフも続いた。


 まさかこの祭りに行き、ちょっとした騒動になるとはヴェンデルガルトは思いもしなかった。



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