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俺は地球で隕石によって命を失ったらしい。
そんな俺は、現在神と名乗る人物の元に呼び出され説明を受けていた。
「その世界はお主と同じ人間――俗に言う人族を始めとして様々な種族に分かれておる。森族や小人族といった感じにの」
「エルフとかドワーフとかってことですか?」
「おーそうとも呼ばれておるかの。そしてそんな種族たちじゃが、大きく分ければ二つのグループに分けることができる。それが"魔族"と"それ以外の種族"じゃ」
「魔族……?」
「うむ、こやつらは相当に気性の荒い種族でのう、それでいて保有する魔力量が膨大で単体での戦闘力が非常に高いという特性を持つ。それによりお主ら人族を始めとしたそれ以外の種族に非常に嫌われていると同時に恐れられておる。現に相当危険な種族で、世界中見渡せば年に百や千では収まらんほどの犠牲者が出ておるでの」
「めちゃくちゃヤバい奴らってことですか」
「そうなのじゃ。まぁそれでも今までなんとか種族間で協力して抑えておったんじゃがの、最近になり動きが活発化し始めた。というのも、魔族の長となる"魔王"という存在が新たに誕生したのが一番の原因じゃ」
「魔王……」
神様は神妙な顔つきで言葉を続ける。
「ここ数百年は現れておらんかったんじゃ。それもこれも先代勇者が自らを犠牲に封印しておったからのう。魔王は同時期に一個体しか生じんから、封じ込めておる限りは新たに魔王が誕生することはなかったんじゃが……少々前にその先代勇者がついに寿命で力尽きての。それにより魔王が封印から解き放たれた」
「ああ、それは……」
「となると一番の拠り所は現代の勇者ということになるのじゃが、勇者一族間で次世代勇者の育成が上手くいっておらんくての……現時点で一番力を持つ筆頭勇者は十三歳の小娘という状況になっておる。当然魔王と対峙させるには技術も覚悟も全く足りておらん。それらの事情も重なって魔王は完全に野放しになっており、ぐんぐんとその勢力を増してきておる。被害も今までの比にならんくらい出ておるのじゃ」
「はぁ、なるほど」
よく分からない部分もあるが、神様の口ぶりからその世界が大分まずい状況になってきているというのはなんとなく理解できる。
「このままでは世界は魔族に完全統一され、世界の秩序はめちゃくちゃに破綻してしまう。そうなる前にテコ入れが必要じゃ。お主、裏勇者として異世界に転生し、世界を救ってくれ」
「えぇ」
ここで俺? そういう風に繋がるのか。いやいや待て、そんな急に言われてもというか、なんで俺なんだというか。
「たのめんか」
「ちょっと待ってください、そもそも俺なんかがどうこうできる問題じゃないでしょう。それこそ神様が直々にどうにかすればいい話じゃないですか。だって神様なんでしょう?」
「それができれば苦労しておらんわ。神々の間でも掟というものがあって、重大な事柄に関しては厳戒なルールが敷かれておる。それはワシでもどうすることもできん、絶大な広さを誇る神々の海の中においてはワシですら中クラス程度の神なのじゃからな」
「よく分かりませんけど無理ってことなんですか?」
「無論、世界に直接神の力を行使することは固く禁じられておる。神の思い通りになる世界など世界とは言わない、ただの傀儡でしかないからの。わざわざ手間隙かけて管理しておる意味がなくなる」
「でも僕を転生させてどうこうさせるのはありなんですか?」
「そこが今回の作戦の肝じゃ。神が魂に肉体を持たせ別の世界に送り込むこと自体はなんの問題もない。ただし、神の力をその者に付与したり、特別な道具を着用させたりすることは当然禁止されておるがの。それじゃと直接的か間接的かの違いだけで神の力を行使するのとなんら変わらんからの」
「だったら僕が転生したところでなんにもならないじゃないですか」
百歩譲って依頼を引き受け転生するにしても、魔王に対抗できる力がないのなら何の意味もない。自慢じゃないが俺は喧嘩の一つもろくにしたことがないモヤシ人間だ。その辺の大人のパンチ一発も持ちはしないだろう。せめて神の力を借りるなり貰うなりして戦うとかなら分からなくもないが、それさえ無理なら一体何をどうすれば魔王に対抗できるというのだろう。
「そこは心配いらん。なにせお主はその世界において特別な存在じゃからの」
「……特別?」
「これを見よ」
神がその言葉を発した瞬間、目の前の空間にとある画像が浮かび上がった。
横棒がありその上に何本かの青い棒が伸びている。いわゆる棒グラフのようだった。
「これは……?」
「これは異世界における魔法適正を示すグラフじゃ。当然数値が大きく棒が長いほど高い適正があるということになる。まずはこれを見よ」
神様はグラフの中でも一番低い棒を示した。ほぼ潰れているような棒とも呼べないような棒だ。
「これは一般的な人族の平均的な魔力適正じゃ。見ての通り殆どないに等しい」
次に神様はその隣にある、棒を指さした。短いは短いが、一応ちゃんとした棒にはなっている。
「これが森族と呼ばれる、魔族以外では一番魔力適性のある種族の平均値じゃ。そしてその隣が魔族の平均値で、森族の平均値のおよそ四十倍の数値を誇る」
確かにその横にある棒グラフは森族のものと比べて遥かに大きかった。
「それで、ここからが肝心じゃ。次に示すのはお主の魔力適正になる。それがこれじゃ」
神様が何やら合図すると、魔族の棒の横から新たな棒が立ち上がっていく。
これが俺の魔力適正値ということなのか。
その棒はぐんぐん伸びていき、画像の枠組みから大きくはみ出て、すごい勢いで部屋の天井をも突き抜けていった。
「……え?」
「これがお主の魔力適正値じゃ。つまり無限大じゃ!」
「そんなわけあるか!」
俺は珍しく大声でツッコんだ。




