第3揚 ちゃんと目を見て話すのだ
青毛天然パーマに紫のゲジゲジ型カチューシャ。気色悪いぞ、食欲減退させるパスタみたいな見た目やめるのだ。
ましてや西瓜の種に見せかけた鼻糞をトッピングするなんて食への冒涜なのだ。
許すま、許す魔神。
「オイラの頭を料理する? おまえ変わったヤツなのだな、そっちさえいいならお好きにするのだ、ただ最近ヤンデレJKに命令されて風呂入ってないけど」
「どれどれちょいとこっち来い、…………くさあっ!? や、やべえ! ブルーチーズがサウナで整いましたってくらいのゲロ臭さ!」
汚い物には汚い物を。鼻糞には不潔を。似た者同士を向き合わせるのはどうしてこうも胸が高鳴るのだろう。
オイラは特殊フェチ過ぎるのだ。こんな変態な一面を知ったらキャ風のみんなからドン引き間違いなしなのだ。
包美からおもてなしされなくなるのは嫌だから流石にそれは隠すとして……。
「謝ればまだ穏便に済ませてやるのだ、さっさと悪事を認めるのだ」
「やってねえっつってんだろ、人を疑っておいて当然証拠はあるんだろうな?」
恐らく四十代後半の大の大人がカウンターチェアで仁王立ちし、まるでジャングルジムのてっぺんで燥ぐ井の中のクソガキなのだ。
あまりの滑稽さにミドルシュートを椅子側面にぶち込みたくなるのだが器物損壊罪に問われるのは勘弁だった。
「オイラはナノレベルで物を観察できる、というかそんなの使わなくたって目を凝らせば一般の肉眼でもわかるはずなのだが」
「おいおい誰だよこんなお喋りな顕微鏡用意したのは、ふざけんなよ? 証拠を出せや」
「わかったのだ」
そう言うと威張り散らしてるオッサンの真横の席まで行くと、対抗して椅子を台にして仁王立ちした。
熱い眼差しを向けてやる。
「なんだよ? やんのか?」
「動かないで、おまえの目をオイラのレンズに反射するつもりで見るのだ」
「は? んな気色わりーこと出来るわけ……」
逆への字で怪訝な表情をし、視線を逸らそうとする顎を強引に手で引き止めた。
「おぶふっ!?」
「見て」
その瞬間、春を待ち焦がれた桜のように頬は紅潮し、二人だけの空間を作るが如く青薔薇が辺り一面を覆い尽くす。
純粋無垢に洗われた彼の瞳はプロジェクターとなり、断片的な言葉が飛び込んでくる。