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第2揚 情報をくれなのだ

 キラキラしてるわけでも静かな空間でもない、そんな曖昧な居心地を絶妙に演出するオイラの桃源郷。

 此処に来たらまず頼んじゃうのが「お飲み物 『ミルキージンジャーソウル』」で、冷たく突き放す辛味の効いた生姜と飴を与えすぎた毒親のような乳臭いバター風味、交わりそうもないこの理不尽な組み合わせ病みつきなのだ。


 「シゲちゃんいつにもましてお子ちゃまっぽいわね、ナニ? 欲しいの? アピっちゃってるのソレ?」


 口の見開き一個分の動作で頷くと包美は慈愛の眼差しを向け、しなやかな手付きで頭を導く。

 

 「どーしてほしーの?」


 明らかにこれはもう誘ってる、目を開けば二つのお、お山ととっ、物寂しそうに突起した唇、遊びを感じる悪戯な眉。

 オイラは……オイラはあっ…………


 「今日で卒つっ……」


 「だーめ」


 膝枕の寝心地へ配慮しつつもう片手で瓶詰を持ちグラスにドロドロと注いでいく。

 濃厚な白い沈殿物が透き通る逆三角錐に囚われながら、まるで子を孕ませたいような雄の気概を想起させる。

 そういえば紹介が遅れたのだ、此処は風俗とキャバクラを足して濁したみたいな場所。

 指名の娘が同意の上なら軽いスキンシップからハッスルまで行為の限度幅は広い、そのために欲望を最大限に吐き出すにはいかにその娘を退屈させないかなのだ。

 んまオイラには一ミリも関係ない話なのだ、何せ欲望を満たしに来た訳ではないのだから。


 「今夜抱いてやるよ」

 

 「!! ………………ふぅ、なーんだデータ収集の方ね、いきなり驚かさないでよー」


 「今夜抱いてやるよ」はこのキャ風(キャバクラ+風俗を適当に掛け合わせて呼んでるだけ)で使われる隠語で、仕事を抱え込むというニュアンスを含んでいる。

 別にコソコソする必要もあんましなさそうだけど問題児巣窟の回遊魚過激派、通称しーちきが耳をダンボにしているかもしれないのだ。

 奴らからはとにかく碌な噂を聞かない、行き過ぎた正義から情報漏洩する奴を謀殺してるとかなんとか。

 長くなりそうだからその話はまた暇な時にゆっくりするのだ。


 「んで、どんな情報をお求め?」


 「オイラの行きつけに難癖つけるクレーマーが現れてな──」

 

 サクッとジューシーな日常を守れるネタを。

 

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