97 大手結婚情報誌と休日の予定
金曜日。生徒会とオケ部を終えた私はキーネン家へ行くことなく、瀬尾さんとの帰り道で本屋へと立ち寄った。
今日は大手結婚情報誌の発売日だ。
水無月さんと撮られた写真が掲載されているはずである。
「今日は本屋さんになにか御用ですか?」
本屋の雑誌フロアへと向かう道すがら瀬尾さんが私に問う。
「うん。実はこの間水無月さんとモデルのバイトしたんだけど」
「え……? モデルさんですか?!」
瀬尾さんは驚くように言う。
「うん。別にチェックしなくても良かったけど、一応ね……」
「そうなんですね……」
「おぉ! あったあった!」
そう小さく言って手に取る。
今月号の付録は有名ネズミキャラクターの描かれたマルチケースみたいだ。
毎回色々な付録が付いてきて、それ目当てで買う人もいるって聞くけどこの現実世界に似た乙女ゲー世界においてもそれは変わらないようだ。
「え? それって結婚情報誌ですよね?」
「うん。実はウェディングドレス着せられてさ、あはは」
私が苦笑いをすると、
「えぇ!? ウェディングドレスを着たんですか香月さん! 羨ましいです!」
と瀬尾さんは目を輝かせる。
「300円なんですね……私も買ってみようかな。
香月さんと水無月さんのドレス姿とっても気になるので!」
「いやたいしたことないよきっと、数枚載ってるだけだって」
「それでも見てみたいです!」
そう言って瀬尾さんも雑誌を手に取る。
パッケージングされているので中身の写真はいまここで確認できないが仕方ない。
私達は雑誌を手にレジへと向かった。
∬
家へと帰り、私は戸吹さんに“衣装製作はどんな感じですか?”とメッセージを送り返信を待つ間に、買ってきた大手結婚情報誌を開いた。
確認しようと、前半のページを適当に開いた次の瞬間。
全面に私と水無月さんが二人で写ったドレス姿が目に飛び込んできた。
記事には『貴方の素敵なマリアージュをグランドメサイアで』という一文が添えられている。
「ちょ……! これ二人で撮ったやつ! これも使うなんて聞いてない!」
しかもメインの特集である。かなりページ数が割かれていて、他に浅神と写った写真が何枚も掲載されていた。水無月さんと黒瀬の写真も何枚もある。
「水無月さん綺麗だなぁ……」
ついそう呟く。
ゲームでは未名望を宇宙人とかブスビッチとか呼ぶ夢女も多かったけど、こうしていざ実物を見ると綺麗という言葉しか浮かんでこない。
そう思いながら写真を眺めていると、スマホの通知音が鳴った。
“香月さん! メインの特集じゃないですか!”
瀬尾さんがカフェテリアグループでそう綴っている。
“そうみたいだね”
そう私が返すと、
“なになに? 何の話ですか?”
とひつぐちゃんが食いついた。
しばらくして、“今月号の大手結婚情報誌です!”というコメントと共に、瀬尾さんが私と水無月さんが二人で写ったページの写真をアップした。
“これはこれは……二人共似合ってますね”
ひつぐちゃんがそう返し、次々と他カフェテリアメンツがコメントを残し始めた。
“なにこれ? 二人共結婚したの?”と守華さん。
“こりゃ綺麗だねぇ香月さんも水無月さんもべっぴんさん!”と鈴置さん。
“はい。お二人共とってもお似合いです”と天羽さん。
“めっちゃ綺麗だけど、なんで大手結婚情報誌に?”と桜屋さん。
“あぁ……メインの特集だったのね……”と水無月さん。
神奈川さんは今日もメイドをやっているらしく反応がない。
「いや私だって驚いてるから! なんでメインの特集!?」
そうぼそりと呟くと戸吹さんから返信がきた。
“ぼちぼちかな。ヒロインの衣装は割りと完成近づいた感じ”
“そっかー。私達も王子様の衣装は裁断終わったとこ”
“そっかそっか。早めに練習始められると良いね”
“そだね! そうだ、ねぇ明日か明後日空いてるかな?
出来れば硯さんも一緒だと良いんだけど……一緒に遊びに行かない?”
私は戸吹さんを遊びに誘った。
“私は明日も明後日も空いてるけど、花撫はどうかな……誘ってみようか?”
“うん……お願いできるかな? 私も水無月さんを誘ってみるから”
“分かったよ、ちょっと待ってて”
私も水無月さんを誘おう。
私は水無月さんとのグループを開いた。
“水無月さん、明日か明後日、桜濤学園の二人とどこかへ遊びに行かない?”
「よしっと……」
水無月さんからはすぐに返事が来る。
“私は土曜日にももの家庭教師があるから、日曜ならいいわよ”
“りょーかい!”
私は戸吹さんとのメッセージで“水無月さんは日曜日ならいいってさ”と書く。
すると数分して戸吹さんから返事が来た。
“うん。花撫も日曜の午後だったら良いってさ!”
“そっかー。じゃあ池袋辺りに13時の待ち合わせでいいかな?”
“うん、いいよ。花撫にも知らせておくね”
“うんうん。私も水無月さんに知らせておくー”
そうして私は戸吹さんとのメッセージのやり取りを終えると、水無月さんに日曜13時の待ち合わせ予定を伝えた。
“そう。どこに行く予定なの?”
すぐに水無月さんから当日のプランを聞く返事が来た。
“軽く家電屋さんとかアニメショップでも回りながらカラオケの予定なんだけど、ダメかな?
”
“硯さんはアニメショップや家電屋は喜びそうね。戸吹さんもカラオケなら楽しめるはず。
えぇ、問題ないプランじゃないかしら”
水無月さんが私の計画に太鼓判を押してくれる。
よし、明後日は戸吹さん達といっぱい遊ぶぞ!




