90 ももちゃんとお出かけ その2
入ったレストランで私は欧風カレー、水無月さんはトマトソースのロールキャベツ、ももちゃんは牛タンシチューを注文。
注文した食事が来るまでの間、話題は統制学院の話となった。
「水無月さんも香月さんも生徒会に入ってるんですよね?
生徒会って何をしているんですか?」
「うーんとね、目安箱の意見に目を通したり、各部活の予算配分したり、あと最近多いのは学園祭の出し物の準備かな」
私が答えると、ももちゃんは目を輝かせる。
「学園祭の出し物ですか! 生徒会ではなにをやるんですか?」
「演劇の予定よ。もも、貴方も学園祭はくるのかしら?」
水無月さんが演劇だと教え、そしてももちゃんは学園祭に来るのか問う。
「はい! 行きたいです!」
「じゃあ私が入場チケットを手配するわね」
「わぁーやったー! ありがとうございます。水無月さん!」
「良かったねももちゃん」
統制学院の学園祭はチケット制を採用している。
故に基本的に在校生の家族か友人しか入ることはできないのだ。
だが例外はあるにはある。
例えば、例年生徒会で出し物を共同でやる桜濤学園では少なくない枚数のチケットが生徒会を通じて配布されているという。
これは最近の生徒会活動で知り得た情報だ。
ゲームではチケット制であること以外は語られていない。
統制学院在校生には一人辺り3枚のチケットが配られる。
水無月さんはこの内1枚をももちゃんにあげるつもりらしい。
「私は無難に父と母にあげるつもりだけど、あと1枚余っちゃうな」
「朱音ちゃん……はもう直に国外へ発つものね……」
「うんそだね。それに必要なら浅神が誘うでしょ。
うーん、雨宮さんにでも押し付けようかな」
私がそう言うと、ももちゃんが「雨宮さんって誰ですか?」と聞いてきた。
なので私は水無月さん、神奈川さんと一緒にキーネン斎藤宅でメイドのアルバイトをしていることを教えた。
「オケ部の部長さんのお家でメイドさんに……お二人共大変なんですね」
「ももは知らなかったわね。私はももの家庭教師が無い時だけお邪魔してるわ」
「そういえばそれだよ! 浅神のやつもオケ部に入ったわけだけど、ももちゃんの家庭教師もちゃんとやってるの?!」
「はい。浅神さんは授業開始時間が少し遅めになりましたけど、しっかり教えてくれてますよ? この間は……」
ももちゃんがキョトンとして私に浅神の仕事ぶりを教えてくれる。
ぐぬぬ。浅神のやつ上手いことやってたのか。
「そっか。それなら良いんだけどね!
もし浅神が手を抜いてそうだったりしたらいつでも言ってね!」
「はい。分かりました……!」
ももちゃんが私の言に素直に応じる。
そして食事が届き始めた。
最初に届いたのは私の欧風カレーだ。
私達は話をしながら食事を楽しんだ。
∬
午後。私達は買い物を楽しみ終え、解散することになった。
「今日はありがとうございました! とっても楽しかったです!」
「うんうん。私も楽しかったよももちゃん! 勉強頑張って!」
「はい! 水無月さんもありがとうございました。
あとこれからも勉強よろしくお願いします!」
「えぇ……今日は楽しかったわ。明日からまた頑張りましょう」
「それじゃあ、私これで失礼します!」
渋谷駅でももちゃんと別れ、移動した新宿で私と水無月さんも別れることとなった。
「水無月さん、今日は楽しかったね」
「えぇ。これでももがまた勉強を頑張ってくれると良いのだけれど」
「きっと大丈夫だよ。ももちゃんはやれる子! 統制合格間違いなし!」
「そうね。きっと大丈夫よね……」
水無月さんは心配そうだ。
「そういえば、夏休み期間はどうするつもりなの?」
私達はサウジに行かなければならない。
気になったので聞いてみた。
「大手塾の夏期講習に行かせるつもりよ。
無論、それ以外のサポートは浅神くんに頑張ってもらうつもり」
「そっか、夏期講習に……。でもそれ浅神がかなりキーマンじゃない?」
「えぇ。そうなるわね。けれど彼なら下手な塾講師よりも的確な指導をももにできるはずよ」
水無月さんは自信を宿した目を私に向ける。
浅神の家庭教師としての能力には一目置いているらしかった。
それならば問題はない。
「じゃあ体制は万全だね! ももちゃんならきっと夏を乗り切って来春統制に来てくれるよ」
「えぇ……そうね! 香月さんに話したら私も少しスッキリしたわ。
ももならきっと大丈夫! 香月さんまたね!」
自信がついたらしい水無月さんと別れ、私は来春を思うとつい嬉しくなって家路を急いだ。




