86 休日の終わり
佐籐たちを撃退した後、しばらくはひつぐちゃんを一人にしないようにプールで遊び。
午後4時を過ぎた頃、帰る準備を始めた。
着替え終えた後、温水プールのロビーに集合した私達。
「カフェテリアメンバー全員揃っての休日、ちょっとしたトラブルはあったけど楽しかったわ!」
桜屋さんがそう感想を述べ、私が「また来ようね!」と微笑みかける。
するとみんなが「またきましょう!」と大いに盛り上がった。
「ところで香月さん。カフェテリアメンバーに鈴置さんとひつぐも加わるってことで良いのよね?」
桜屋さんが当然の顔つきで私に質問する。
「うん。みんなそう思ってくれると有り難い! 鈴置さんとひつぐちゃんには後から誘うことになっちゃったね。私達みんなでお昼にカフェテリアでご飯食べてるんだけど、今度から一緒にどうかな?」
「私、兄とご飯食べることが最近多かったから嬉しいです。是非参加させてください!」
ひつぐちゃんがそう言い、鈴置さんが「水無月さんと神奈川さんがいつもお昼に抜け出してたのはそういうわけね! いいわ私も参加する!」と了承した。
「これでこの9人が新カフェテリアメンバーだね!」
私が嬉しくなってそう確認すると、皆各々に「そうね」「そうですね」「ね!」と反応してくれる。
「それと鈴置さんとひつぐにも伝えておくわね」
水無月さんがそう切り出した。
「私と香月さんで困ってる人を助ける活動をしているの。佐藤くんのシスコンで困ったらいつでも私達に相談して頂戴。今日ももし家に帰ってから良くない事があったら誰でもいいから相談してほしいわ。きっとそれで楽になるから」
「そんな活動してるんですね。はい。分かりました頼らせてもらいます」
ひつぐちゃんが応じ、私が「鈴置さんも彼氏募集中でトラブルとかあったらいつでも言ってね!」と続ける。
「なにそれー!? まぁなんかあったらみんなに頼るよ!
ねぇ桜屋さん!」
桜屋さんに抱きつくと、大きな胸を押し付けるようにする鈴置さん。
どうやら二人は今日かなり仲良くなったらしかった。
推し同士の仲が良いのは良きことかな。
私も嬉しくなって、ちょっとうざったそうにしている桜屋さんに笑ってしまう。
そうして、私達は温水プールをあとにした。
多摩からバスと電車での帰り道、寝そうになって左側にいた水無月さんの肩に頭が当たる。
「ちょっと香月さん大丈夫?」
「うん……さすがにちょっと疲れたかな」
私の一言に、右隣にいた天羽さんが「無理ありません。あれだけ遊んだのですから。私の肩ならいくらでも使ってください香月さん」と微笑む。
それに、「天羽さ~ん」と頭を天羽さんの肩へこすりつけると、暫くして微睡みが私を支配した。
∬
「香月さん!」
多摩からの電車は気付けば新宿へと着いていた。
起こされ、私は慌てて立ち上がる。
既に桜屋さん、ひつぐちゃん、守華さんの3人は電車を降りていなくなっていた。
「天羽さんも本当は降りるはずだったのよ。香月さんが余りにもよく寝てるからって新宿まで来てくれたんだから感謝なさい」
水無月さんが私に状況を説明し、隣にいた天羽さんが「私はほんの少し遠回りになるだけなので……」と私を気遣う。
「ごめん私ってば、完璧寝てた! 天羽さんありがとうね~!」
「はい。それでは失礼します」
天羽さんが渋谷方面へと乗り換えていく。
その後自宅のある田園調布へと向かうのだろう。
しかし、いつもは車登校の天羽さんを電車で一人ぼっちにしても平気なんだろうか?
田園調布までの道のりで駅しか使わないならばそれほど危険でも無いかもしれないが……。
「痴漢とか会わないといいけど……」
「天羽さんですか?」
瀬尾さんが私に聞く。
「うん、そうそう!」
「痴漢なら体が小さい香月さんとかも狙われやすいんじゃないです?」
「それはそうかもしれないけど……」
私は偶然なのか幸運なのか分からないが、いまのところ人生で痴漢に出会ったことはない。
もし出会ったらとっちめてやろうと思ってはいるが、いざ男に強引にされた時は恐怖で動けないかもしれない。
「それじゃ私もここで失礼するわね」
水無月さんが言い、それに鈴置さんと神奈川さんが「私も~」と続いた。
三人は同じ方面らしい。
私と瀬尾さんも最寄り駅が一緒なので二人一緒に帰ることになった。
そうして休日は過ぎていった。




