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85 いざ屋内温水プールへ!その2

 午後1時過ぎ。私達は昼食を取ることにした。

 私もさっき豪徳寺達と出くわしたことで飲み物が買えず喉が乾いている。

 さっさと水分補給しておきたい。


 みんなで売店前の飲食スペースに集まると、いくつか置いてあったテーブルも私達で一杯になった。

 私はふと気がついて辺りに豪徳寺と佐籐がいないか見回す。

 しかし二人の気配はなかった。

 豪徳寺がさすがに佐籐に呆れて連れ帰ってくれていればいいのだが……。


 ひつぐちゃんの様子を窺うが、いつもと変わりなく淡々としている。

 どうやら佐籐と豪徳寺に出くわしたのは私と水無月さんだけらしかった。


「どう? 皆仲良くやっていたかしら?」


 水無月さんが皆に問う。


「大丈夫よ、割りと仲良くやってるんだから。ね? 鈴置さん」


 桜屋さんがコーラを飲みながら鈴置さんに確認する。


「うんうん! 桜屋さんと仲良くやってまーす」


 楽しそうに答える鈴置さん。

 あのAクラス以外を馬鹿にしていた節のある桜屋さんが、Eクラスの鈴置さんとここまで仲良くしているのだ。問題はなさそうに思える。


 ひつぐちゃんは確認しなくとも瀬尾さん守華さんと楽しそうにしていたので、私は神奈川さんと天羽さんに聞いてみた。


「どう? 天羽さんと神奈川さんは? 競泳用プールにいたみたいだけど」

「うん。いまどのくらいのタイムなのか、天羽さんに軽く測ってもらったんだ」

「はい。50mをあんなに早く泳げるなんて尊敬します!」

「いや……中学までスイミングスクール通ってたからね……!

 たいしたことないよ。あはは」


 神奈川さんが両手をふるふると振って謙遜する。

 どうやら二人共仲良くしていたらしく打ち解けている。


 すると「私達も仲良しでしたよ?」とひつぐちゃんが小さく言った。


美有(みゆ)とみのりと一緒に波に負けないようにしてました!」

「波に負けないようにって?」


 私が問うと、守華さんが「それはひつぐが一人でやってただけでしょう?」と笑う。

 そして瀬尾さんが「そもそも私は浮き輪してましたし……!」とひつぐちゃんにツッコミを入れる。3人共佐籐を見かけたとかの問題はなさそうだった。


 佐籐はきっと豪徳寺が連れ帰ったのだろう。

 そう思っていた矢先だった。


 あろうことか、佐籐と豪徳寺が堂々と私達の元へと現れた。


「やぁみんな、奇遇だね」


 佐籐が私達全員へ向けて言い放つ。

 知り合いの男子の急な登場にか、瀬尾さんは胸を隠すように俯いてしまった。


「佐籐と豪徳寺……? 奇遇……って何? アンタ達こんなところまで何しに来たわけ?」


 桜屋さんが警戒する視線を佐籐と豪徳寺に投げる。

 すると豪徳寺が「おい佐籐、やめておこう」と佐籐を止めに入った。

 しかし……。


「何って僕はひつぐの保護者として一緒に来ただけさ」


 豪徳寺の手を払い除けると、さも当然のようにそう言い切る佐籐。

 しかし、ひつぐちゃんがそれを認めない。


「お兄ちゃん……私そんな事頼んだ覚えないけど……それに双子の妹の保護者ってなんかおかしい」

「うるさいな! ひつぐは黙っていろ!」


 佐籐が激昂してひつぐちゃんに近寄る……が守華さんがブロックした。


「ちょっと佐藤くん。少しは冷静になったらどうなの?」

「冷静……? 僕は最初から冷静だよ」


 そう言う佐籐だったが、傍から見てどうみたってそうは思えなかった。


「ひつぐ……お昼も食べたんだろ? そろそろ解散の時間じゃないかな?

 ほら帰るぞ……!」


 佐籐が守華さんの制止をも振り切り、ひつぐちゃんの腕を取る。

 しかし……。


「私は帰らないから……まだ皆と一緒にいたい」


 ひつぐちゃんが淡々とそう言い、佐籐が「何を馬鹿なことを……」と強引にひつぐちゃんの腕を引っ張ったその時だった。


「行かないって言ってる……!」


 ひつぐちゃんが佐籐の腕を強引に引き剥がすと、守華さんに隠れるようにした。


「な……ひつぐ……!?」


 呆然とする佐籐。そこにひつぐちゃんが追い打ちをかける。


「ねぇお兄ちゃん。お兄ちゃんってもしかしてシスコンなの?」

「な……なにを言って!?」

「私、付きまとわれてるとまでは思って無かったよ。

 皆はお兄ちゃんのことシスコンって言うけど、私はそんな事ないって信じてた。

 けど……今日のはどう考えたっておかしいでしょう?」


 ひつぐちゃんが守華さんに隠れつつも必死に抗議すると、佐籐は相当に狼狽えていた。


「そうよこのシスコン! クラスじゃいちいち言わないけど、今日という今日は気持ち悪いわよ佐籐! ひつぐちゃんが嫌がってるじゃない。出直したら?」


 狼狽える佐籐に、桜屋さんがはっきりきっちりと言い切った。


「くっ……! 行くぞ理人(りひと)!」

「お、おう……すまんなお前たち」


 逃げるように去っていく佐籐を豪徳寺が悪びれながら追っていく。


「ふぅ……もう大丈夫よひつぐ」


 桜屋さんが優しい視線をひつぐちゃんに向ける。


「うん……みんなありがとう……!」

「良いわよ。別に、佐籐には普段から一言二言言ってやろうとは思ってたんだから」


 ひつぐちゃんがお礼を言い、桜屋さんが胸を張る。

 男子の前で水着姿でも堂々としている桜屋さんはかっこよかった。

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― 新着の感想 ―
[一言] キモキモストーカーめ、ざまあみろ!相手の気持ちを考えないと嫌われるんだ 豪徳寺は皆の水着を糧にメンタルを癒してくれ、ぶっちゃけ縁切った方がいいと思うぞ…
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