84 いざ屋内温水プールへ!その1
日曜日。私達は多摩の屋内温水プールへとやってきていた。
着替え終え、プールサイドに集った私達は各々準備体操を終えた。
そこを桜屋さんがまとめる。
「今日は1日遊ぶぞー!」
「「おー!」」
桜屋さんの一声で、私達は各自プールへと散っていく。
私は暫くの間、流れるプールでまったりしようと持ってきていた浮き輪を手に取った。
そうして流れるプールへ入ると、瀬尾さんが私同様に浮き輪を持って続いた。
二人で距離が離れないように手を繋ぐ。
「香月さん! 離れませんよ……!」
「もう瀬尾さんったら大胆……!」
そうして私達二人は「うふふふ」と笑う。
何周かしただろう。少し喉が乾いてきた。
「私、飲み物買ってくるね」
瀬尾さんにそう言って、流れるプールを後にすると、波付きプールの波際に水無月さんを発見。
「やっほ水無月さん。飲み物でも飲まない?」
「良いわね……行きましょう」
私達は二人で財布を取りに戻ると、売店へと向かった。
売店に着き「すいません」と中の店員さんに声掛けしたのだが、私と全く同時に男が注文をしようと店員さんに声をかけた。
「ん……? 香月……?」
「ちょ……豪徳寺!?」
びっくりして私はお財布を落としそうになる。
「な、なんで豪徳寺がこんなとこにいるのさ……!」
私がそう非難するような目で豪徳寺を見る。
「やれやれ……何事かと誘われて来てみれば香月たちがいたとはな……」
そう言って頭を掻く豪徳寺。
「豪徳寺くんどういうことかしら?」
水無月さんがきつい目で豪徳寺を睨みつける。
「いや……俺はほら、あそこにいる佐籐に誘われてな……」
豪徳寺が「おーい佐籐!」と声をかける。
そして私達のもとへ佐籐がやってきた。
「佐籐、どういうことか説明しろ」
豪徳寺が困った顔で佐籐を見る。
「説明……? ひつぐが友達とどこか行くっていうから心配で後をつけてきただけだよ」
それにしては、豪徳寺も佐籐も水着にまでなっている。
「じゃあなんで水着持ってるの!?」
「それは昨日君たちが水着を買っているのを見ていたからさ」
平然と言ってのける佐籐。
じゃあ何? 昨日の時点から私達こいつらに付けられてたってこと?!
豪徳寺を睨みつけると、豪徳寺が「いや、俺は今日急に水着持って来いと誘われただけでな……」としどろもどろだ。
「佐籐、それストーカーって言ってもいいよ?」
私は水無月さんと一緒に佐籐を睨みつける。
「うるさいな、放って置いてくれ!」
佐籐は怒声を飛ばす。
これでは話し合いになんてなりっこない。
「行こう水無月さん!」
「えぇ……」
私達は佐籐を侮蔑する視線を送ると、彼らの元をあとにした。
∬
「皆には内緒にしておこう……」
「えぇそうね、あの様子だと豪徳寺くんがなんとかするかもしれないし」
私は水無月さんとそう相談し、結局飲み物を買うことなく皆の元へと帰っていく。
するとウォータースライダーの方から桜屋さんと鈴置さんが二人揃ってやってきた。
豪快にスライダーからプールに没し、二人で笑っている。
そして桜屋さんが私と水無月さんを見つけたようだ。
「香月さん! 水無月さんも!」
「二人共、スライダーどんな感じ?」
「結構長いスライダーで爽快感あったよー。二人共やってみたら?」
鈴置さんがそう答え、私は水無月さんを見やる。
「どうする水無月さん」
「えぇ……それじゃ私達もやってみましょう」
そうして私達は二人でウォータースライダーの階段を登っていく。
持っていた浮き輪は桜屋さんに預けた。
高く登ったので皆の姿を探してみる。
どうやら桜屋さんと鈴置さんは二人で流れるプールへ移動。
瀬尾さんはひつぐちゃんと守華さんに合流して波のあるプールに。
そして神奈川さんと天羽さんが50mプールにいるようだ。
意外な組み合わせに驚く私。
頂上へ付き、私達の順番が回ってきた。
私が先に座り、水無月さんが私の背後にぴったりと付く。
「行くわよ!」
水無月さんがスタートを宣言し、私と水無月さんがスライダーを滑り降りる。
「ちょ、結構スピード速いいぃぃい」
私がそう叫ぶがスピードが緩まる気配はない。
「黙ってないと舌を噛むかもしれないわよ」
水無月さんが冷静に私を嗜める。
右へ曲がり、左へ曲がり、そしてフィニッシュ。
さきほどの桜屋さんたち同様、凄い勢いで水中に没した。
「きゃあ!」
着水して1、2秒後、水無月さんが鋭い叫び声を上げる。
「香月さん。私のトップス……探してくれる?」
「うわ……マジか!」
凄い勢いで水中に没したからだろうか、水無月さんのトップスが外れて流されていた。
両腕で前を隠すようにする水無月さん。
私は辺りを見回すと、すぐに水無月さんの黒いトップスを発見。
飛び込むように水中へ入り、水無月さんのトップスを掴む。
そしてすぐに水無月さんに手渡した。
「全くもう、きっと私の水着を守りに入りすぎだとか言った罰だよ水無月さん!」
「まだ根に持っていたのね……」
水無月さんはそう返事をしながら水着を直す。
私は次の客が来ると危険なのでスライダーの出口から離れながらも、水無月さんが水着を直し終えるまで警戒して水無月さんを隠すように隣りにいた。
「ありがとう。香月さん。もういいわ」
水無月さんがそう言って水中から出た。




