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76 キーネン家 その1

「あら香月さん……それに神奈川さんも」

「やっほ水無月さん!」

「こんばんは水無月さん!」


 キーネンを追い、車まで来た私達。

 水無月さんを見つけて挨拶した。


「ついに統制学院キーネン家メイド隊3人が揃ったね!」

「なんだその名称は」

「いいから、私達で付けたの!」


 キーネンがメイド隊に文句を付けてくるが気にしない。

 私達はキーネンに続くように後部座席へと乗り込む。

 さすがに4人乗ると狭く感じる。


 そうして、私達の乗った車がキーネン家へと向けて走り出した。


「キーネン、両手に花だね!」


 そうからかうと、神奈川さんが「もう、そういうのはやめておいて上げなさい」と神奈川さんが叱る。おかしくなって3人で笑うと、キーネンは「何を笑う……!」と不思議そうに声をあげる。


「そもそも我が家のメイドとは……」


 と、キーネンが一家言語り出しそうになり、私が割り込む。


「はいはい。そう言うのはお家でだけでいいから! 今はまだ向かう途中。そうだねキーネンくん」

「だが既に報酬は発生している。契約期間内だ。俺に従って貰うぞ……!」

「うーん、まぁそれはそうだから仕方ないか……」

「いいだろう……ではまず第一に、淑女たるもの馬鹿笑いするべからずと言っておく」

「なにそれ、私達そこまで大きく笑ったっけ?」


 私が不機嫌な顔でキーネンに問う。


「まぁまぁ香月さん。一応私達今は斎藤くんのメイドなわけで……」

「ふふふ、そうね。斎藤くんの言い分にも一理あるわ。彼を笑ってしまったのも事実だもの」


 と神奈川さんと水無月さんが言うので仕方なく私は口を閉じた。


 そうして、キーネン家へとたどり着いた。


 ガレージへと車が向かい、私達は玄関に降り立つ。

 何人もの使用人が挨拶をしてくる。

 その中にはメイド長の雨宮さんがいた。


「お帰りなさいませ坊ちゃま」

「あぁ……雨宮、変わりないか?」

「はい。大奥様と奥様はお変わりありません。旦那様はまだお戻りになっておられませんが、直にお帰りになられるかと……」

「そうか……俺は暫く指揮の練習をする。部屋に籠もるぞ。夕食になったら呼んでくれ」

「かしこまりました」


 雨宮さんがそう応対し、キーネンは自室へと去っていく。

 私達3人は休憩室兼ロッカーへと向かった。


「あいつも指揮の練習するんだ」

「確かに。学校では私達の指導時に振ってるくらいで、あまり一人で振ってるところみたことないものね」


 着替えながら私が意外そうに言うと、神奈川さんが同意する。


「あれで努力家なところもあるのよ……」


 とぽつりと水無月さんが言う。

 もしかして水無月さんはキーネンルートを通った事があるのだろうか?

 気にはなるけど聞くに聞けない。


 着替え終わり、私は骨折している水無月さんに聞いた。


「水無月さんはまさか掃除とかじゃないよね……?」

「私は斎藤くんのお付きよ」

「じゃあ部屋にこもってる今は?」

「なにもやることがないと言うとでも思った……?

 斎藤くんが購入してる株式情報をチェックしてまとめて持っていくとか、色々仕事はあるのよ?」

「へぇ……なんか秘書さんみたいだね」

「実質そうね」


 水無月さんが余りにも慣れた様子でそう語る。

 きっと神奈川さんは水無月さんってこんな人だったんだ……と思っているに違いなかった。


「さぁ、仕事にかかりましょう」


 最後に着替え終わった水無月さんの号令で、私達は各自持ち場へと散っていった。




   ∬




「よいしょっと」


 掃除を終えた私は、洗濯物を大量にかごに入れると持ち上げる。

 洗濯が終わった洗濯物を各部屋に配っていかなければならない。

 まずは大奥様――キーネンのお婆ちゃんの部屋だ。

 前回の洗濯物に大奥様の分はなかったので、今回始めて会うことになる。どんな人だろうか?


 部屋の前まで来てかごを床に一度置く、そしてノック。


 すぐに「どうぞ」という声が響いた。


「失礼します。洗濯物をお持ちしました」

「あら、ありがとう……ん……見ない顔だけれど新人さんかしら?」


 ベッドに横たわったまま、お婆さんが私に声をかけてくる。


「あ、はい。この度3人でメイドにならせて頂いた内の一人。

 統制学院2年香月伊緒奈と言います。よろしくお願いします」

「あらあら、確かに3人新しい子が入ったって聞いてたけど、まさかこんな可愛らしい子だなんて……! 私びっくりしちゃったわ」


 お婆さんが私に笑いかけてくる。そして続けて言った。


「私は斎藤(ひな)よ。統制学院の2年生ってことはキーネンの同級生よね?」

「はい。私はBクラス、キーネンくんはAクラスになります。

 あ、部活は一緒にオーケストラ部に入っています」

「へぇ……そうなのね……全く嫌だわあの子ったら、こんな可愛らしい子達が入ったんならもっと早く教えてくれればいいのに……」


 雛さんはそう言って再びにっこりと笑い、そして言った。


「ねぇ伊緒奈ちゃんって言ったかしら、うちの孫とはどういう関係なの……?」

「え? 関係ですか?」

「そうよ。伊緒奈ちゃんが良ければあの子のお嫁さんにどうかななんて!」

「え……お嫁さんに!?」

「えぇ……あの子ったらぶっきらぼうでしょう? 私がお嫁さんくらい用意してあげなきゃ、おちおちあの世ににも行けないわ」

「いや~お嫁さんはちょっと~あははは」

「そう? 残念だわ」


 そう言って再び笑顔を向けてくる雛さん。

 いきなり嫁に来てくれとかぶっ込まれてめちゃくちゃ焦ったけど、どうにか平静を取り繕うことができたみたいだ。

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