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64 番号くじと後輩の話

 休日。私は父を連れ立って近所のスーパーに買い出しに出ていた。

 そして、ここで私は併設されている店舗で番号くじを買うつもりだ。

 事前に父に話は通してある。


「それにしても番号くじかー。お父さんが初めて買ったのは大学のときだったかな?」


 父はそんなことを言いながら、私との外出に笑顔だ。


「よし……番号はこれで合ってる。これでお願いします」


 受付の中年の女性は私の姿を見て隣の父に確認する。

 それに父が、「私が付き添いで買うのは娘です」と説明すると、受付の人は「6口で1800円になります」と金額を提示してきた。


 私は事前に用意していたお金をさっと支払うと、中年女性から処理済みの番号くじ権をゲットした。


 水無月さんにメッセージで貰った番号を全部で6口。

 これでキャリーオーバーで最大1口10億円として、本当に一等が当たったならば最大で60億円もの大金が私のもとに転がり込むことになる。


 同じ番号のくじを6口も買うのは父には見せないようにしている。

 父に不審がられないようにする為だ。

 でも、もし当選した場合は結局、同じ番号を6口も買ったことはばれちゃうんだけどね……。


 主人公である水無月さんは最大で100万円ほどが当たった事があるだけだという。

 ならば新たな因果を切り開いていける私ならば、もっと大量の金額の当選が狙えるかもしれない。


「といっても、私は所詮モブだしなぁ……」

「うん? なにか言ったかい?」

「ううん、なんでもない。それよりお母さんに頼まれてる買い物しなきゃ!」


 私はそう言って父の腕を引くと、スーパーへと入っていった。




   ∬




「そんなわけで番号は水無月さんに教えてもらった通りに、番号くじゲットしといたから!

 結果は来週の金曜日に発表だよ!」


 夜になって意気揚々と水無月さんに通話をかけてそう言い放つと、水無月さんは少しだけ期待混じりにか声を浮つかせて、「当たっているといいわね」と言った。


「もし当たってたらどうしよう?」

「親御さんには説明してあるんでしょう?」

「うん、それはもう念入りにばっちり」

「ならば隠すことはないわ、堂々と全額頂いた上で私の指示するように使ってほしい」

「それって桜屋さんを助けるためとかも含まれる感じかな?」

「えぇ……呉服屋桜屋を救うために新たに会社を立ち上げるつもりよ。

 社長は私がやるけど、資本金の方は香月さんに投資してもらうわ。

 無論、香月さんには投資だけじゃなくて会社に副社長として参加して貰うから覚悟してね」

「そっか、そっかー楽しみだなー」


 副社長業なんて当然やったことなんて全くない。

 でも1万回以上ループしているという水無月さんは会社の経営に携わった事もあるらしかった。たぶん皇ルート後辺りなんだろうけど、水無月さんにとっては悲しい記憶だと思うので、詳細を確認することはしない。


「ところで、水無月さんは今日はなにを?」

「今日は周防さん家で家庭教師を1日中してきたわ。

 ももを統制学院に合格させることは問題なくできそうだし、来年が楽しみね」

「そうなんだー。私、ももちゃんの事は私はあまり詳しくないんだ。水無月さんには知っている限りの事を教えてもらいたいな」


 何故ならばももちゃんはゲームには登場しないキャラだからだ。

 新入生はいることにはいるのだろうが、水面のカルテットは基本的に11月に行われるコンテストに向けてゲームが展開される。そして年度を跨いでしばらくオケ部に参加しない生活が続き、直にゲームの攻略結果が出る。

 部活動は基本的に3年時には活動参加している学生はいないって設定なのだ。

 それはこの現実の乙女ゲー世界でも同じようで、私達2年生がオケ部を取り仕切っていて、3年生はみんな引退している。


 無論、例外はいるにはいる。


 何故ならば私は既に、「受験勉強の息抜きに」という理由でパート練習に参加している三年生がいることを知っている。


「そう。ももの事は香月さんは詳しくないのね? ゲームではももは?」

「それが出番ないんだよねー。

 後輩ちゃんが居ればもっとゲーム生活も華やかになるかもだけどさ。

 ほら、基本的に水面のカルテットは――この世界は11月のコンテストに出るカルテットメンバーを決めるために動いていくじゃん?」

「えぇ……そうね」

「だからか知らないけど、3年時には部活は引退って設定だし、基本的に後輩にかかわる機会がゲームではなかったんだ」

「……へぇ……それならば、私の経験を教える事も香月さんには必要かもしれないわね」


 水無月さんは冷静に言う。


「水無月さんの経験……?」

「えぇ……この世界が男たちの倫理に支配されている世界だってことは香月さんも知っているでしょう?」

「うん。そういう乙女ゲー世界だからね」

「だから、ももにも学院に入ってからある問題が生じるのよ。

 それは厳密にはTp2をやってる霜崎くんに関係してくる話なんだけれど……」

「へぇ……あいつ、放置してれば基本無害だと思ってたけど、ももちゃんに害を与えてくるのか。ったく、あいつらってなんでそうなのかなぁー」


 私が機嫌悪そうにそう言うと、水無月さんがフフっと笑う。


「霜崎くん本人が関係してくるってわけじゃないんだけどね。ももと一緒に入学してくる霜崎くんの弟くんがももに一目惚れしちゃうのよ。それに霜崎くんが少し関わるってだけ」

「へー、あいつ弟なんていたんだ」


 設定資料集を買っていれば分かった情報かもしれない。

 本編では霜崎の家族に言及する展開は一切なかった。


「とにかく、ももはそれで一目惚れから猛アタックされて酷く迷惑を被るってわけ」

「ももちゃんが霜崎弟に流れるって展開はないの?」

「ないわね。ももはそれよりも大学のときの先輩のほうが危ういんじゃないかしら……」


 水無月さんが断言し、ももちゃんの情報を次から次へと教えてくれる。

 私からしてみれば、全く知らない水面のカルテット情報だ。

 しかし推しが関わっているからには、心して聞いておかねばならない……!

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― 新着の感想 ―
[一言] この世界の男はろくな事しないな 操縦できるキーネンがマシな部類ってマジでキツい
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