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59 放課後の約束

 募金活動の投票だけで手早く今日の生徒会を終わらせた私たちは、水無月さんを除いて、すぐにオケ部の練習に合流することになった。今日は合奏はなく、基礎練のあとに長い時間パート練習があるという。私達が合流した時、もう既に基礎連は終わっていた。


「ひつぐ、練習に行くぞ」


 音楽講堂に入ってすぐ、佐籐が妹のひつぐちゃんに声をかけた。

 しかし――、


「――え? お兄ちゃん何言ってるの。

 今日の練習は、このあと弦楽器パートとのパート練習だよ。

 だからお兄ちゃんは男の人同士で練習でしょう? ほらヴィオラのイヴン君とかさ」


 ひつぐちゃんがキョトンとした顔で言い、佐籐は先程の生徒会でも見せたように顔を若干歪ませた。


「そうか……最近そればっかりだな」

「うん、まぁね。でも斎藤君の指示だから仕方ないよ」

「そうか……じゃあ帰りは一緒だろう?」

「えーっとごめん。さっき鈴置さんと帰りにハンバーガーショップへ行く約束しちゃった」

「……」


 佐籐はなおさら居所無さげにばつの悪そうな表情を見せると、「……そうか」とだけ残して、男子たちとの練習へと向かっていった。


 佐籐にざまぁみろと言ってやりたかったが、私は必死に堪えた。

 そんなことをしていると、


「香月さーん!」


 と笑顔でやって来た鈴置さんに見事に捕まる。


「喜べ、香月さん! 今日はクラとオーボエとフルートの子たちも一緒だよ!」

「え? 本当に?」


 私が鈴置さんの脇に挟まれながら横目で確認すると、瀬尾さんが


「はい。よろしくお願いします香月さん」


 と、私に向けて挨拶をしてくれた。

 その黄色の瞳には明らかに喜びの色が浮かんでいる。


 瀬尾さんと練習するのオケ部では初めてだもんね!

 朝やお昼は最近いつも一緒だけれど、部活で一緒になることはなかった。

 オケ部と初めてと言えば……、


「守華さんも一緒だね!」


 と声をかけると、守華さんが「そうね。久しぶりに弦楽器とのパート練だわ」と意気込んだ。


 そうして、私達はパート練習の教室へと誘われていった。




   ∬




 長いパート練習が終わり、さて講堂へ帰ろうかという折、私は再度鈴置さんに捕まってしまった。


「香月さん! このあと暇? いや暇でしょ? 私達とバーガーショップいこ」


 さっき佐籐とひつぐちゃんが話してたやつか。

 私も誘ってくれるとは思っていたけど、やはりか。


「……誰が来るの?」

「今のところ、ひつぐと私、それと香月さん!」

「いやいや、私はまだ行くと言ったわけじゃないよ鈴置さん」

「弓佳、香月さんも誘うの? 

 水無月さんとは私もお友達だし、私も香月さんともっと親しくなりたいなと思ってたんだ。歓迎するよ」


 そう淡々とひつぐちゃんが言い、1年生が私達の話を横目にささっと音楽講堂へ帰っていく中、話を聞いていたのか守華さんが「それ私も行っていい?」と声をかけてきた。


「うお、守華さんもくるー? きちゃうー?」

「うん。香月さんが行くなら私も行きたいかな」

「おっけー! じゃあ決まりね! 香月さんもいいよね?!」


 そう言って、私を捕まえる鈴置さんの手に強く力が入る。

 どうやら私を逃がすつもりは端からないらしかった。


「分かったってば、行く、行くってば! ならさ、もう一人誘ってもいいかな?」

「うーん後一人くらいなら全然いいよー」

「じゃあ、瀬尾さん。一緒にバーガーショップいこ!」

「……! はい。私で良ければ!」


 黙って私達の話を聞いていて、もう教室をでようとしていた瀬尾さんに間一髪というところで声をかけることに成功した。

 せっかくお昼メンツが二人いるのに、瀬尾さんだけを誘わないなんてことは、私にはできない。これで、今日のパート練習メンツでは推しが全員揃った!

 推しが集まれば楽しい。絶対に間違いのない私流のやり方だ。


 そうして、私達5人は音楽講堂の楽器室で楽器をしまうと、学院を出て駅近にあるハンバーガーショップへと向かっていった。

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