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56 カフェテリアに集え!

 お昼になった。

 日直の号令が終わり、私は即座に隣のクラスにいる守華さんへと連絡を取る。

 返事はすぐに来て、「カフェテリアね!」とお昼を一緒に食べる約束を取り付けたのだ。


 カフェテリアへ向かうと、いつものメンツが既に揃っていた。

 そこへ私が来て、そして少しだけ遅れて守華さんが合流した。


「香月さん! って人がたくさんいるのね。立日もいるんだ」

美有(みゆ)。こっちこっち私の横に座りなよ。注文はしてきたの?」

「うんさっきランチを……じゃあ有り難く」


 桜屋さんが誘導し、守華さんが席についた。

 カフェテリアの大きな丸テーブルとはいえ、テーブル一つでは手狭になってきた感がある。

 もうちょっと人数が増えたら、テーブルを2個専有するなんてことになるんだろうか?

 水無月荘の住人たちは何人いるのだろう?

 私の知る限りここまで住人が増えると、きっとマンションを買ったというのも1棟丸ごと買ったに違いない。小規模マンションなら50戸程度までのことを言うらしい。

 天羽さんや他お嬢様がメンツに含まれることからも、資金面での抜かりはないだろうし、どんなに大きなマンションを買っていたとしても不思議はない。

 時の百合ゲー主人公、水無月未名望に出来ないことなんてないのだ。たぶん。


 そんな事を思いながら、私は話を切り出した。


「守華さんを呼んだのは言うまでもなく、今度から私達と一緒にご飯食べない? って誘うためです!」


 実は他にも用事がある。

 浅神妹ちゃんの一件だ。だがそれはひとまず置いておく。


「それはとっても有り難いお話だけど……一体どういう集まりなの?」

「どういう集まりかしら……うーん。

 私の知る限り、香月さんと水無月さんに助けて貰った人達……?」

「私はそうです」

「私もです」


 守華さんの問いに桜屋さんが答え、天羽さん、瀬尾さんが同意した。


「まぁ、そんなとこかな? 実は水無月さんも私が助けたのだよ、ドヤァ」


 私が戯けてドヤ顔で擬音を発すると、水無月さんが「まぁそうとも言うかしら」と素知らぬ顔をしている。そんな酷い! 私が居なければ天羽さんだって桜屋さんだって助けられなかったんだよ! 水無月さんってば、もう!


「じゃあみんな香月さんに助けてもらった人達なの?

 私は……ちょっと香月さん、まさかバラしてないでしょうね?」


 守華さんは佐籐の一件を話されていないか気にしているらしい。


「いや! 私は誰にも話してないってば!」


 水無月さんを除いて、だけどね。てへ。

 でも水無月さんに話すのは、水無月荘の住人を助け出すという目的上仕方がないことなのだ。守華さんにも目を瞑って貰いたい。


「そう……それなら良いけど……」


 守華さんが納得するように言うと、桜屋さんが「なになに? 美有の秘密知りたーい」と守華さんにちょっかいを入れる。

 そしてそれを制するように、水無月さんが話題をもとに戻した。


「それはともかく、どうかしら守華さん。今度から一緒にお昼を食べないかって話」

「うーんクラスメイトや他の友達と食べるってこともあるから、毎回ってわけには行かないけれど、それで良ければご一緒するわ」


 さすがは副会長。

 クラスの人達や他のお友達との関係もしっかり維持していくなんて頭が下がる。


「そっか。私たちはそれでおっけーだよ! ようこそ水無月荘へ!」


 私がそう言い放つと、水無月さんが厳しい目線を私に向けた。


「なんですか? 水無月荘って」


 天羽さんが珍しく小首を傾げながら聞いてくる。


「いやいや、なんでも無いよー。

 将来同じマンションで皆が生活できたら良いなーとかそういう願望的な?」

「それが水無月荘?」


 桜屋さんが面白がって聞いてくる。


「うん、まぁね! ね、水無月さん!」

「私は別に……」


 水無月さんが恥ずかしがってか顔を伏せる。


「なんですか、私も気になります!」


 瀬尾さんも気になるようで水無月さんの方を見た。


「別に……将来良い人が見つかるまで、ただ楽しく皆で過ごせたらなとか、それだけのことよ」


 水無月さんが皆の注目を集めながら言うと、桜屋さんが笑う。


「なにそれ、私達みんな行き遅れるって言いたいの?

 なんかそれ行き遅れ女子が集う老人ホームみたいね」


 老人ホーム――そんな単語が桜屋さんから出てきたことで、水無月さんがハッとした顔をする。

 もしかしたら、百合ゲー時代に水無月荘のことを老人ホームと言い出したのもまた、桜屋さんなのかもしれない。そんな事を私は思った。


 お昼休みも終わりに近づき、私がもう一つの目的を切り出した。


「それとさ、守華さんにも知ってもらいたいことがあって」

「知ってもらいたいこと……? なになに?」

「実は……」


 そう言って、私は浅神妹ちゃんのことを包み隠さずに説明した。

 最初、1年時のクラスメイトである浅神の家庭事情に困惑した表情だった守華さんも、妹さんを助けたいという私の話を聞いて、段々と真面目な表情になってきた。


「で、募金を募りたいって思ってるんだ」


 私が説明を終えると、天羽さんが真っ先に「お金で良ければ、祖父に相談してみます」と言ってくれた。この中で一番自由にできるお金が多そうな天羽さんがそう言ってくれると安心できる。きっと募金は海外での手術費用の満額を集められるだろう。


「そう……浅神君にそんな事情があったなんて……私知らなかったわ」

「それよそれ、あいつそう言う事はクラスメイトにくらい相談しなさいっての」


 守華さんが顔を伏せて言い、桜屋さんがそれに同調する。


「今度、生徒会でも議題に挙げようと思ってるから、その前に守華さんに言っておきたくてさ!」

「分かったわ、任せといて。私も賛成するわ!」

「募金活動が始まった際には、私もお手伝いします」


 守華さんが賛成してくれて、瀬尾さんが募金活動への意欲を見せる。

 そしてその一部始終を見ていた水無月さんが、ほっとしたかのように息を吐いた。

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