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53 水無月さんの急病と浅神の理由

 メッセージで神奈川さんの件を水無月さんに問い合わせているのだが返事がない。

 何故だろうか?

 時は既にお昼になろうかとしている。


「それでは、本日の授業はここまで、日直ー」


 古文の先生がそう言って、日直による起立、礼が終わり教室を出ていった。

 そうしてすぐ、私はスマホを確認した。


「既読は付いてる……のか」


 他のグループで桜屋さんや天羽さん、瀬尾さんに連絡はすぐにつき、

 いつものようにカフェテリアでご飯を食べることになった。


「あら? 水無月さんは今日はお休み?」


 桜屋さんが私に問う。


「いや……昨日までは元気そうにしてたんだけどね?」

「生徒会の合宿でしたか?」

「うん、そうそう合宿合宿~」


 天羽さんが心配そうにしている。


 と、そこへ水無月さんから電話が来た。

 私はすぐにその電話に出ることにした。


「やっほ。水無月さん。今日はお休み?」

「えぇ……ちょっと体調を崩してしまって、熱があるの。

 いまは皆とカフェテリアでしょう?」

「うん。ちょうどみんなで水無月さんの話をしてたところだよ。

 誰かに風邪でもうつされたの?」

「私が風邪をうつされるとしたら、それはステーキを交換した貴方からかしら……?」

「え! 私が原因!?」

「コホッ……コホ……。冗談よ。それよりお願いがあるのだけれど香月さん」

「え? なになに?」

「今日、例の周防さん家の家庭教師のアルバイトがある予定だったのだけれど、この調子でしょう? 代わりに貴方に周防さんに勉強を教えて欲しいのだけれど、どうかしら?」

「私で良ければ! 文系科目はそんなに得意じゃないけど、中学生に教える分にはバッチリだと思うよ? あ、でもさ今日は浅神のやつに理系科目を教えて貰うことにするって手もあるんじゃないの?」

「それも考えたけど、今日は彼、夜まで別の用事があるんですって。

 たぶんあれよ。妹さんのお見舞いでしょうね」

「ほへーそっか。浅神は妹さんのとこね、なるほどなるほど」


 そう。浅神には病気の妹さんがいる。

 それも海外での手術をしないと、もって20歳くらいまでと言われている難病なのだ。

 その手術費用を稼ぐため、浅神は高校に入ってから毎日のようにアルバイトに明け暮れている。

 おかげで入学試験時には上の上だった成績は落ちに落ち、1年時Aクラスだった勉強特待生の浅神の成績は最下位のFクラスへ降格するほどに落ちてしまった。

 故に、1年時もAクラスだった皇は浅神の事を覚えていたのだ。


 浅神ルートを攻略する上ではこの海外での手術の資金を集めるのが最重要課題となる。

 1年時に各イケメンたちの好感度をバランス良く稼いで募金を募る手と、生徒会に入って募金を募る手、及び、これまたオケ部に浅神が入る事でキーネン家に頼るという手がある。


 しかし、現状水無月さんも私もこの浅神に関しては良いバイトを紹介してやるくらいしかしてやれていない。無論、現在小学校6年生になる浅神の妹ちゃんが水無月荘の一員である可能性は捨てきれない。確かゲームではこれまた唯野さんと同じような新人声優さんが声を当てていたはずだ。私もかなり好きな部類の声ではあったが、あまりにも新人さんだった為、推しとまでは言えないかもしれない。

 それでも事務所のホームページを確認して、サンプルボイスの出来に驚愕したくらいだから、推しその10と言ってもいい。


「それなんだけど、水無月さん。妹ちゃんに関してはどうする気なの?」


 助けてあげるつもりがないのだろうか?


「えぇ……彼女は……水無月荘の一員よ。

 だからできることなら生徒会で募金の旨を議題に上げたいところね」

「え!?」


 ゲームでは病院にお見舞いに行く時に会うのと、浅神トゥルーエンド時に元気な姿を見せるくらいだ。まさか彼女まで水無月荘に所属することになるだなんて……


「なんにせよ、今はカフェテリアでの食事中でしょう。

 香月さん、周防さんの家庭教師の件は任せたから。あとで住所を送っておくわ。

 それじゃあまたね」

「うん。ばいばい」


 電話が切られ。私は桜屋さん、天羽さん、瀬尾さんの3人に顔を合わせた。


「風邪だってさ! んでちょっと頼まれごとをした……今日のオケ部は出られないかもだよ」

「そうですか、残念です……」


 と瀬尾さんが肩を落とし、桜屋さんが「それより浅神の妹さんって?」と話を切り出した。


「うん。浅神に妹さんがいて、海外で手術が必要らしいんだよね」

「まぁ……!」

「へぇ……」


 天羽さんがびっくりするように唸り、桜屋さんが意外そうに声を上げた。


「私、浅神って単純に素行不良でバイトばっかりしてるのかと思ってたわ。

 1年の時は同じクラスだったけど、彼、終始授業中は寝てたし。

 もしかしてその妹さんの為にアルバイトに明け暮れてたのかしら」

「うん。まぁ……そうかもね。

 いずれ生徒会で募金企画立てるかもだから、その時には協力お願い!」


 私が手を合わせて頼み込むと、3人とも協力を申し出てくれた。

 きっとこれなら妹ちゃんは大丈夫に違いない。

 手術が上手く行った暁には、浅神のやつには私と水無月さんに感謝してもらいたいね!

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