49 守華さんの胸中
女子全員を集めてのカードゲーム大会は唯野さんの辞退により消滅。
たぶん統制新聞部特派員としての仕事だろう。
PCを持ってきてたみたいだから、なにか作業をするのかもしれない。
私は守華さんと共に自室で、スマホを弄りながら長野県のローカル番組を眺めて時間を潰していた。
「守華さん。集合は何時だっけ?」
私が知っていることを態々問うと、
「夜6時にロビーに集合して夕飯の支度よ」
と守華さんが丁寧に教えてくれた。
「ならあと1時間くらいあるかー。
よし! ねぇ守華さん。佐籐とひつぐちゃんのことなんだけど……」
私は思い切って切り出した。
さっきはやり過ぎて佐籐を激昂させてしまい大失敗からの歪曲に繋がってしまったが、今度は慎重に行こうと思う。
「あー、うん。私もその話をしようと思ってたんだけど……」
守華さんが困ったようにベッドの上で頭を右手で擦った。
「シスコンって話。実際のところどう思う?」
「うん。私も改めてこの1年間のことを考え直してみたの。
1年の頃は私も佐籐くん達もAクラスだったけど、
ひつぐちゃんが年度末の試験結果次第でBクラスに落ちそうになったときがあって、
私含めて女子何人かで勉強を教えてなんとかなったの。
そんなとき彼ずっと寂しそうだったなって思ったり。
やっぱり、普通の兄妹としての関係以上の何かが、あの二人にはあるのかもって思っちゃった」
アハハと照れているかのように振る舞う守華さん。
彼らの、いや、恐らくは佐籐から一方的にひつぐちゃんへの愛情を看破できなかったことを、守華さんは恥ずかしく思っているのだろう。
「ま、実際、実の兄妹を好きとか無いよねー」
「うん、そうね」
その上、ちょっと煽られたくらいで大激怒だものな。
やばい奴にはあまり近づかない方が良い。
絶対周りが迷惑を被る。
「じゃあ豪徳寺とかはどう?」
ついでとばかりに私が豪徳寺の事に話題を転換した。
「え? 豪徳寺くん?
うーん。実際会長として頼りになるところもある人だけど、私のタイプとはちょっと違うかなぁ」
守華さんはそう言って首をかしげる。
「そっか、そっか。うんうん。理想の相手って重要だよね。
早計に決めてもあれだし、慎重に相手を選ぶのって私好みの戦略だな
さすがは守華さん! 生徒会副会長だけあって慎重派だね!」
「別に、そういうわけじゃないんだよ? ほんとよ?
ただまぁ、香月さん相手だから正直に言うと、
ちょっとだけ佐籐くんに惹かれてたのかも……」
守華さんはどこか遠いものを見るような目つきでTVの方向を眺める。
「そっかー。まぁ、ご愁傷さまです!」
私が戯けてそう言うと、フフっと笑顔を取り戻す守華さん。
「ちょっと、馬鹿にしてるでしょ香月さん!」
「別にしてないって!」
「うそ! 誰かに言ったら承知しないから!」
「はーい、わかりましたー。
シスコンの佐籐に惚れつつあったのは企業秘密にしておきます!」
「よろしい!」
そう言って、二人で見つめ合い笑い出す。
この感じなら守華さんと佐籐の関係性は大丈夫だろう。
私達が生徒会合宿に介入して大正解だったと言える。
私はこの事を内緒にすると言っておきながら、水無月さんにだけは密かにメッセで報告した。
あとは豪徳寺が守華さんに惹かれてこないようにガードするだけだ!




