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46 合宿地にて その1

 買い込んだ食材のほとんどを男子二人に持たせ、私たちは悠々自適に豪徳寺の別荘へと到着した。


「お坊ちゃま、こちら、お部屋の鍵でございます」

「おう、ありがとう。あとは休んでくれ全て俺たちで行う」


 豪徳寺は管理人らしき初老の男性から鍵を受け取ると、後は自分たちに任せて休むように伝えた。男性は「かしこまりました」と言うと別荘を出ていく。


「うわ、思ってたよりもかなり広い!」


 部屋を見回す私達。

 ゲームで知っている画面ではもっと小さめに感じたが、8LDKの別荘はさすがに広かった。


「ハハハ、そうだろうそうだろう。みんな自由にくつろいでくれ!」


 広い別荘のロビー兼ダイニングキッチンで冷蔵庫に買い出し食材を入れていく。

 それが終わってすぐ、豪徳寺がみんなを呼び集めた。


「では、各自に部屋の鍵を渡そうと思う。

 2階にある西向きの二部屋を、俺たち男子二人が使わせてもらう。

 残りは女子で部屋割りを決めてくれ」


 豪徳寺はそう宣言すると、守華さんへ残りの鍵を手渡した。


「ほら、佐籐行くぞ」


 豪徳寺と佐籐は自分たちの荷物を手に、2階の部屋へと向かっていく。


「それじゃあ、お部屋どうするか決めよっか? どうする? 見て回って決める?」

「賛成!」


 私が声を大にして賛成の意を唱えると、水無月さんと唯野さんが「そうね」、「ですねー」と続けたので、私達女性陣は別荘の部屋を1つ1つ物色することにした。


 1部屋目。1階にある一番奥の東向きの部屋だ。

 南向きというわけではないが、時間帯も合ってか採光は悪くない。

 家具もシングルベッドに机が一つ、収納が一つというシンプルな構成だ。


 ここは即座に唯野さんが「はい」と手を挙げた。

 二人部屋は嫌なのだろう。

 それを察したのか誰も異を唱える事なく、唯野さんの部屋に決定した。


 2部屋目。同じく1階にある東向きで、唯野さんの部屋の前にある部屋だ。

 部屋の家具の構成も前の部屋と全く同じ。

 ここは水無月さんと私の二人が手を挙げた……のだが。


「香月さんは守華さんとご一緒したらいいんじゃないかしら?」


 と水無月さんが宣った。部屋は8つもあるんだよ水無月さん。


「え? なんでさ?」

「私は骨折しているし、一人のほうが気が楽なのよ。

 着替えとか色々遅くなって迷惑がかかってしまうかもだし

 それに二人部屋を一人で使うのも考えものでしょう?」


 その意見に、守華さんが「確かにそうかもしれないわね」と頷く。


「それじゃあ、香月さん。私と同じ部屋にしましょう!」


 守華さんが元気よくそう言い放ち、私は「そうしよっか!」と応じた。


 そうして私と守華さんが南東向きの二人部屋の角部屋を使用することを決め、2階にある残り2つの二人部屋、及び2F西のもう1つの一人部屋は使用しないことになった。

 贅沢に二人部屋を一人で使用する案も私の中にはあったが、しかし、守華さんが佐籐に近づくのを阻止する為にも、そして豪徳寺のやつが守華さんに接近するのを阻むためにも、私は守華さんと同じ部屋にするのが最善だろう。


 大丈夫、守華さんは私が守るぜよ!


 2階に向かい、二人部屋を確認する。

 セミダブルベッドが2つずつ、机が1つ、そして収納と化粧台が1つずつ。

 更に50型を超えるであろうTVが一つ、部屋の中央の壁に付いている。


「二人部屋にはTVが置いてあるのかー。あと化粧台も! てか広い!」


 私の自室2つ分はあろうかという部屋の大きさにびっくりする私。

 いくら長野県といえども、高級別荘地である軽井沢の一等地にこれだけの別荘を持てるのは、さすがは不動産屋の息子――豪徳寺と言える。

 確かゲームでは元々は寺社の分家で、お父さんが都内でかなり大きな不動産屋をやってるんだよね。

 きっと豪徳寺に嫁ぐ女の人は、何不自由のない生活が保証されているのだろう。

 だからといって、私は別にそのご厄介になるつもりはサラサラ無いけどね!


 部屋に荷物を置いた私達二人は、ロビーへと戻った。


「よし、では次に入浴の順番を決めたいと思う。

 ちなみに俺たち二人は今晩は浴槽は使わないので、女子たちで自由にしてくれ」


 言われ、私たちは入浴の順番を手っ取り早くじゃんけんで決めた。

 豪徳寺と佐籐の後に、私、守華さん、水無月さん、唯野さんの順となった。


「それじゃあ早速だけど昼食の準備を始めましょう。今日はシチューの予定よ。

 私は見ての通りこの腕だから、あまり御役には立てないけど指示はだすわ」


 買い出しを買って出た水無月さんが指示出しを担当し、私たちは料理をすることになった。


「使えそうな包丁は3本あるわね。

 それじゃあ香月さんと唯野さんはじゃがいもをお願い。

 守華さんにはたまねぎをお願いしようかしら。

 豪徳寺君と佐籐君は人参をよろしく。ピーラーくらいなら使えるでしょう?」


 私が「おっけー」と答えて、唯野さんが「はぁい」と続き、守華さんが「はい!」と元気よく返事をした。

 そして豪徳寺が「まぁな! 任された! やるぞ佐籐!」と佐籐の背を叩き、佐籐が「はい、はい」とやるせなく返事をした。


 佐籐の奴はきっとひつぐちゃんが居ないからあまりやる気が出てないのだろう。

 普段の生徒会活動だって、一刻もはやく終わらせてオケ部でひつぐちゃんに合流するというのが佐籐の行動方針だったはずだ。

 全くひつぐちゃんの関与しないこの合宿では、やる気が失われるのも無理はあるまい。


 元々、佐籐はひつぐちゃんに押される形で豪徳寺とセットのように生徒会活動に加わったのだ。妹のひつぐちゃんの期待に応えないわけにはいかなかった。

 今のところはただそれだけが、佐籐が生徒会に所属している理由のはずだ。


 守華さんが佐籐に惹かれ、佐籐が守華さんのことを気にし始める前に、佐籐の株を大暴落させてやることが、守華さんをこの世界で男たちから助け出す唯一の手段なのだ。

 そうすれば、次は豪徳寺辺りが守華さんに勝手に惹かれ始める。

 それをも防ぎきろう。きっと、必ずだ。

 その為にも合宿中は気を抜くわけには行かない。

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