45 亀屋スーパーで買い出し
軽井沢に到着した私たちは、ご飯の買い出しを先に済ませておく事にした。
「この先に亀屋というスーパーがあるからそこで買い出しを頼む」
「え? スーパーならこっちの方が近いんじゃない?」
私がスマホで地図を出してそう言うと、豪徳寺は露骨に嫌そうな顔をした。
なにか理由でもあるのだろうか?
あ、たしかに評価では少しばかり亀屋スーパーの方が高い……。
もしかしてこちらのほうが高級店寄りのスーパーなのかもしれない。
「買い出しは私にまかせて頂戴。まず献立を決めましょう」
そう言って、水無月さんが場を仕切り始めた。
さすがは4桁ルーパー。スーパーも料理もお手の物というわけだ。
「はーい! 私は昼はハヤシライス。
朝はベーコンエッグにトーストがいいな、夜はお任せで」
「じゃあ私はお昼は惣菜パンに一票。夜はホワイトシチューとパンがいいわね。
朝はヨーグルトさえあれば文句は言わないわ」
私と守華さんが即座にメニューを提案し、私が「唯野さんは?」と聞いた。
「私は好き嫌いはありませんので、お腹に溜まっておいしければなんでも……」
「俺はカレーだな。合宿の定番といえばカレーだろう」
「僕は唯野さんと右に同じく。みんなに任せるよ」
唯野さんに豪徳寺と佐籐が続き、メニューは大方出揃った。
「そう。それじゃあ少し遠いみたいだけど、まずは亀屋に行こうかしら?
私はもう片方も大して変わらないと思うのだけれど、
結局は買い物する人の見る目次第よ」
水無月さんはそう言うと、「荷物持ちはお願いね二人共」と豪徳寺と佐籐も使い倒すつもりのようだ。
亀屋スーパーへ着くと、私がカートを押し、水無月さんが食材を放り込んでいく係になった。
それから水無月さんは守華さんと唯野さんにパンを見繕うように頼むと、豪徳寺と佐籐にはレジ前で待つように伝えた。
「2日目の夜は車内で食べるんだっけか?」
「えぇ、守華さんの計画ではその予定ね」
「じゃあ昼2夜1朝1分を6人前ってわけか。結構な量だね?」
「そうかしら……昔、私達が水無月荘に住んでいた頃を思えば少ないものよ」
「い、一体何人いたの!? てかどんだけでかいマンション買ったの!?」
「フフフ、内緒」
水無月さんは楽しそうに野菜類をカートへと、骨折していない左手で放り込んでいく。
「今日のお昼は手早くシチューにしましょう。
明日の朝は軽く済ませる予定だから、がっつり行きたい人は余った分のシチューを食べればいいわ。それから夜だけど、せっかく予算がたくさん組まれているのだから良いお肉を食べたいじゃない?」
そう言うと、水無月さんは国産牛コーナーで和牛ステーキに手を伸ばした。
「わー! 贅沢だね水無月さん!」
「席をグランクラスにするくらいの余裕があるのならこれくらいはね」
「うんうん!」
普段予算的に余り食にこだわっていない、私達二人だからこそ出来る会話だろう。
他の仕事を割り振った人達には、庶民的過ぎて聞かせられないかもしれない。
「お待たせ、パンはこれでいいかしら? でも少し多くない?」
パンを持った守華さんと唯野さんが私達に合流した。
「お米はどうする?」
「お米はあまり余らないように1kgのものを買いましょう。
その為にパンを多く買ってもらったんだもの」
そう言って、すっと目を細める水無月さん。
きっと米が余り食べられない事を知っているのだ。
ループでは何度も合宿に参加しているのだろうから当然かも知れない。
私は米食うけどね!
良いお肉のステーキに米! 最高じゃないか!
なんならシチューオンライスしたっていいけど、なんか文句がありそうな面子だから控えておこう。
私がカートへ1kg分の米を選んでよいしょと乗せた。
「あとは朝食べるヨーグルト、守華さんはどれが好き?」
「私に選ばせてくれるのね! 任せて! ヨーグルトならこれよこれ!」
守華さんがヨーグルトを選び、唯野さんが朝食用にとシリアルと牛乳をカートへ投入。
シチューにも使うから牛乳はちょうどいいだろう。
「あとはお水ね……水道水も飲めるのだけれど……」
あっ! と口に左手を当てる水無月さん。
まるで知っているとばかりに言ってしまった事を後悔しているのだろう。
「うんうん。長野の水道水はきっと綺麗だよ~」
と私がフォローすると、守華さんと唯野さんの二人は「そうかも」と同意した。
カート下部へペットボトルの水6本セットを載せる。
チョイスは私による硬水だ。
軟水よりも硬水が好きな女なんだよね私ってば。
こうして、私たちは合宿で消費する食材の買い物を終えたのだった。




