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44 生徒会合宿

 東京駅。朝8時。

 多くの人たちで賑わう中、待ち合わせ場所となっている休憩場所にようやくたどり着いた。


「お待たせ~」

「遅いぞ香月。もう少しで俺たちは先に新幹線ホームに行くところだった」


 私が急いできたのが見えたからか、豪徳寺が笑いながら言う。


「ごめんってば。てか私そんなに遅刻したわけじゃないと思うんだけどな!?

 ほら! きっちり時間通りじゃん!」

「みんな早く来ていたのよ。別に香月さんが悪いわけじゃないわ。

 さぁ行きましょう」


 水無月さんがそう促し、私達は駅ホームへと向かうことになった。


「香月さん。これチケットね」


 改札まで歩きながら守華さんが手渡してくれたのは――なんとグリーンクラスのチケットだった!

 うわお、高校生なんだから集団で行くにしてもせいぜいが指定席にすれば良いものを。


「グリーンなんだね」

「うーん。私も指定で良いって言ったんだけどね。

 豪徳寺くんは最初グランクラスを借り切るつもりだったらしいよ」

「は!? たった1時間の旅なのに!?」

「うん……。まぁグリーンで十分妥協させたのよ。

 まぁ費用は生徒会持ちだから気にしないで香月さん」


 そう言う守華さんも実は良家の子女である。

 普段ならばグリーンに乗っているのだろう。


「お! ちょうど清掃が終わったところらしいな。さぁ乗るとしようか」


 ホームにつくと豪徳寺が開いた新幹線のドアを確認してそう言った。

 私達は学生の身分でありながらグリーンクラスに乗り込むと、席を回転させた。


 私からすればグリーンクラスに乗ったのはこれが初めての経験だったので、「グリーンクラスでも席って回転するんだ」といった感想を呟く。


 すると面白そうに笑いながら水無月さんが「そうね」と応じた。


「ちなみにグランクラスでは回転はしてはいけないそうよ。

 グリーンで正解だったんじゃないかしら?」


 水無月さんが知識を披露すると、「おう、そうだったのか」と豪徳寺が顎を掻いた。


 私達は女子4人で回転させた席を囲む。

 その後方で佐籐と豪徳寺の二人がいた。


「なにしよっか?」


 私が切り出すと、水無月さんが唯野さんの方を見た。


「自己紹介なんてどうかしら? 私達、唯野さんとはこれが初めてでしょう?」


 唯野さんは言われ、「いやーなんでもないですよ私なんて」と謙遜する。


「唯野さん。普通に自己紹介すればいいから……!」


 守華さんにもそう促され、唯野さんは自己紹介を始めた。


唯野(ただの)結子(ゆいこ)です。生徒会は会計。2年Aクラス。統制学院新聞部他、いくつかの部活を掛け持ちでやってます。よろしくお願いします」

「よろしく~」

「こちらこそ、よろしくお願いします」

「うんうん。唯野さんは会計とPC関連を主にやってくれてるんだ。

 PCで分からない事があれば彼女に聞いて!」


 守華さんがそう紹介し、唯野さんが「何もできませんが」と畏まる。


 喋る唯野さんは初めて見たが、やはりゲーム通りに新人声優の人と同じ声をしていた。

 瀬尾さんや鈴置さんの例もあるし、モブだからといって油断してはいけない。

 そう思っていたのだが、思い込みすぎだったようだ。


 今日、佐籐のやつは完全に諦めたらしく、ひつぐちゃんは連れてきていない。

 だから今日の参加者は私達6人だけだ。


 女の子が4人集まれば、話に華が咲くのは当然のことだろう。

 しかし、一昨日守華さんとメッセの交換をしたにも関わらず、佐籐の話が出ることはなく、合宿の話がメインとなっていた。

 きっと私達の内、唯野さんを除く3人は佐籐の話がしたい。

 けれど、真後ろに本人が居るとなっては、『佐籐くんがシスコンってマジぃ?』と話をし始めるわけにもいかないのだろう。

 せっかく席を回転させたというのに、私達は押し黙ったままだった。


 しかし、そこで意外にも唯野さんが話をし始めた。


「佐籐君とひつぐちゃんが一緒じゃないなんて、珍しいこともあるものですね」


 そして更に意外なことに、私達が避けていた話題をクリティカルヒットしてきやがった。

 さすがは統制新聞部。

 唯野さんが欲しい話題はそこらしい。


「そうなの?」

「……」

「えぇ! 私と守華さんはAクラスなんですが、それこそ佐籐くんとひつぐちゃんが一緒に居ないなんてことのほうが珍しいくらいですよ? ねぇ守華さん」

「えぇ……そうね……それよりもよ! 今は生徒会合宿の話をしましょう!」


 私が聞き、水無月さんが何も言わず、守華さんがしどろもどろに話題転換を図ろうとする。

 けれど、唯野さんはそれを許しはしなかった。


「ねぇ佐籐君。ひつぐちゃんと離れ離れの2日間になるわけだけど、どんな心境?」

「別に。いつも一緒にいるから2日くらいはたいしたことないさ」

「ほほぉ。これはこれは余裕ですなー」


 後ろに振り返ってまで佐籐に話しかけて、その表情をチェックしようとする唯野さん。

 しかし、


「唯野。それくらいにしておけ」


 という豪徳寺の一言に、唯野さんは素直に「はぁい」と応じたのだった。

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