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38 生徒会庶務 その2

「二人が生徒会庶務に!?」


 守華さんが驚くような声をあげる。そして開いた口が閉じられていない。

 そんな驚くようなこと言った覚えはないんだけどな。

 庶務必要じゃん? 生徒会の仕事大変じゃん?

 オケ部に合流するのもいつも遅くなってるってくらいだし、人手は猫の手であっても借りたいと思っているのでは?

 そう考えていたのだが、違ったのだろうか……?


「それは……歓迎はするけど……でも……」

「どういう事だV1!?」


 キーネンの奴がキーキー喚いているがそんなことは気にしない。


「分かってる! 私達二人共が女子なのが問題かなって思うんでしょ守華さん?

 でも今どき男女で役職を必ずやらなきゃならないなんて古いよ古い!

 だから新しい統制学院生徒会の幕開け! みたいな感じで私達女子二人を庶務にしちゃうべきだと思うんだよね。

 そうすれば会計の唯野さんと合わせて生徒会女子は4人。

 会長の豪徳寺と会計の佐籐を合わせて男子二人の2倍の勢力だよ! どうかな?」

「ど、どうかなと言われても……うーん」


 守華さんは言われて、背後の教室を見た。

 きっと豪徳寺と佐籐の意見を気にしているんだろう。


「どうかな? 会長さんも」

「うーむ。俺は良いと思うけどな庶務女子二人。

 俺たちもオケ部との掛け持ちで大変なんだ。

 加えて、会計のもう一人の唯野さんは新聞部他いくつかの部活を複数掛け持ちしてて、お忙しい御仁だ。それが原因で時折姿を消しがちだからな。

 今までの統制学院では会長と副会長は異性同士がやるもので、会計や庶務もまた同様だった。でも新しい統制学院生徒会ってキャッチフレーズは気に入ったぞ香月さん!」


 豪徳寺は乗り気のようだ。

 そうして豪徳寺が佐籐を見た。


「僕は……仕事が早く終わるようになるようなら構わないよ。

 オケ部の方へ早く顔を出せるようになるからね……」


 と佐籐は賛成の意を示している。

 しかし、その思惑は私には透けて見えていて、なんだか嫌な感じがした。

 佐籐がオケ部に早く行けるようにするのも考えものなんだよね……。

 そこはでも仕方がない。

 まずは守華さんを守るために、私達二人が生徒会にねじ込んでいく必要性がある。


「あとは守華さんだけだよ! 守華さん、私達二人と一緒に生徒会やろっ」

「……そうね。会長と会計の二人も言ってることだし、お願いするわ香月さん。

 それと……水無月さん……? だったかしら」

「えぇ水無月未名望よ。よろしく」

「うん。水無月さんもよろしくね!」


 守華さんが笑顔になって私と水無月さんへ握手を求めてくる。

 私は即座に守華さんと右手を交わし合い、水無月さんもそれに続いた。

 そうして、私達生徒会庶務立候補騒動は落ち着いたかに見えた……がしかし。


「生徒会に入ると言うのは俺は反対だV1。

 チューバとAクラも、それにオーボエも最近はオケ部を蔑ろにしているだろう。

 それにV1たるお前が加わるなど言語道断だ」


 キーネンが眉を吊り上げて怒りをあらわにする。


「だから私はオケ部は退部したって言ってんでしょ!」

「何度も言うが俺は承認していない。顧問の承認なしに部活の退部は認められん」


 もう何度目になるかも分からないこのやり取り。うんざりしてきた。

 そろそろ決着をつけるべきに思うんだよね。


「でもだからといって、生徒の自主性を重んじるこの統制学院においてだよ?

 生徒が辞めるって言ってるのに、顧問が頑として首を縦に振らないってどうなわけ!?」

「く……それは……!」


 効いてる、効いてる。ここは生徒会の面子も味方につけたいところだ。

 でもここにいる皆がオケ部関係者なんだよね……。

 私についてくれるだろうか?


「ねぇ、豪徳寺会長はどう思うの?」

「いや……俺は……。うーん、生徒の自主性を優先すべきだとは思う。

 思うが、しかし香月。生徒会に入るためにオケ部を辞めるのか?

 俺たち3人はむしろ、オケ部に早く参加したいが為に、労働力として庶務である君たち二人を受け入れたんだぞ?」


 豪徳寺が頭を掻きながらなんとか言葉を捻り出したようだ。

 でも賛成ならそれでいい。あとの部分は答えずに置いておく。


「じゃあ豪徳寺会長は私の自主性を重んじるってことで賛成ね。会計の佐籐は?」

「僕も生徒の自主性を尊重すべきだと思うけど……」


 佐籐が簡潔に答え、守華さんが「私もそう思う」とすぐに続いた。


「どう? キーネン。これでも私の退部が認められないって言うわけ?」

「く……!」


 私が眼鏡のずり落ちを直しながらキーネンに畳み掛ける。

 キーネンは何も言えずに押し黙るしか無い。

 これで私の勝ちが決まった……!

 そう思っていたのだけれど――、


「――でも、私も香月さんには辞めてほしくないな」


 守華さんが突如としてそんなことを言い出し始めた。

 な、なんで? 守華さん!


「香月さんは、これから生徒会を一緒にやっていこうって人でもあるし。

 私達はいつも早く仕事を終わらせてオケ部に合流しようって三人で頑張ってたんだ。

 だからそこに香月さんと水無月さんが加わるなら、二人にも同じ意志を持ってもらいたい。

 もちろん、骨折して既に退部が認められてる水無月さんに無理を言うつもりはないけど……」


 そんな、ここに来て守華さんが敵に回るだなんて……!

 どういうことだろうか。

 守華さんの話を聞いて、豪徳寺と佐籐の二人までもが「まぁ確かに」「うんうん」と守華さんの言を肯定するかのようになってしまっている。


「せっかくお友達になったし、同じ生徒会の戦友になるんだから。

 私、香月さんと一緒にもう少しだけオケ部をやってみたい。

 だから、香月さんの気分が向いた時だけで良い。私達とオーケストラをやりませんか?」


 守華さんが私を真っ直ぐ見て、そう言い切った。

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