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32 恋のストロベリートライアングル

「どうも、香月さん。俺は生徒会長をしている豪徳寺(ごうとくじ)理人(りひと)

 オケ部では何度も言うようだがチューバを吹いてる。

 たまに俺の事を理人(りじん)って呼ぶやつもいる。それも俺のことだ」

「僕は佐籐。佐籐(さとう)(かなで)。生徒会会計をしてる。

 オケ部では双子の妹のひつぐと一緒にクラリネットを吹いてるよ」


 二人の魑魅魍魎(イケメン)があーだこーだと喚いている。

 そんな事は別に紹介されなくても知ってるし、私には要らない情報だ。


「改めまして、私は守華美有。生徒会副会長をしてるわ。

 オケ部ではオーボエを吹いてる事がほとんどね。

 たまにクラリネットをやることもあるくらいかしら」


 そう言って自己紹介をする守華さん。

 やはりゲーム通りに、私の推しその6と同じ声をしている。

 彼女はほんわかした声でも良いし、なんなら男勝りの声も得意な声優さんが演じている。

 若手の実力派として知られる声優さんなので、私も良くチェックしていた。


 ズバリ言おう。

 この3人はゲームでは三角関係になる運命(さだめ)にある。

 2年始めに行われる生徒会合宿を経て急激に彼らの関係が進展し、うっかりしていると豪徳寺と佐籐の二人共が未名望から心が離れていってしまう。


 放っておくと守華さんは佐籐の事が、そして豪徳寺の奴が守華さんが好きになるっていう典型的な三角関係を作り出すのだ。


 私はと言えば、守華さんを攻略する時――私としては豪徳寺と佐籐の二人を攻略する気はないのだが、ほぼ守華さんの声だけを頼りに生徒会活動を行っていた。


 ちなみにだが会計の女子がもう一人いてモブ子ちゃんなのだが、ゲームではその子にも声が用意されていた。でもまぁその子は推しってほどでもない新人声優さんだったんだよね。

 でも別に決して下手というわけではなかったのを覚えている。

 私の読み筋が正しければ、彼女は統制新聞部員だ。


 “生徒会のラブロマンス!?”


 というトピックはきっと彼女が作った記事に違いない。

 警戒すべき対象としては分かりやすい。


 でも水無月さんには、守華さんも助け出すべき老人ホーム水無月荘の入居者なのかを聞いていない。私としては生徒会に関わりたくはない。

 ないが、しかし推しその6の子をみすみす生徒会合宿に一人で行かせるわけにもいかない。

 ことは刻一刻を争うんだよ水無月さん……!


「ところで、いま生徒会みんなは何をしてるのかな?」

「いまはそろそろ行う生徒会合宿の準備かな。

 それから学祭の準備ももう始まってるよ。それ以外にはうーん、目安箱に入ってた問題への対処……とかかな?」

「目安箱?」

「うん……ちょっと待ってね」


 生徒会室の棚をごそごそとする守華さん。


「うん、これこれ。香月さんにも一枚上げるね!」


 そう言って、名刺を1枚手渡された。

 そこには、統制学院目安箱と書かれていて、


 “お困り事がありましたら、生徒会目安箱へ!”


 というコメントが記され、一緒にQRコードが大きく記載されていた。


「これ、アンケートフォームなんだけどね。

 目安箱を学校内に設置するのもなんか古いなってことで、

 私達の代から校内にこの名刺を設置することにしてるんだ。

 お悩み相談はお気軽に生徒会へどうぞ! ってね」

「誰の案だったっけ?」


 豪徳寺が大きな左手で頭を掻きながら、守華さんに聞く。


「会計の唯野(ただの)さんよ」


 そう守華さんが答える。

 やはりか……会計のモブ子ちゃんは唯野さんというらしい。

 裏統制新聞のアプリを教えて貰う時に似たやり方だ。

 ただしあちらはプリントされた紙で限定配布。

 こちらは名刺で学校中に非限定配布というわけだ。


 しかし、これは使える。


「物は相談なんだけど……」


 ずれた眼鏡をかけ直すと、私は軽快に切り出した。


「最近、友達のある子が複数の男の人に声をかけられて困ってるって話なんだ」

「え……? そうなんだ。

 良ければもっと詳しく話を聞かせてもらっていい?」

「うん……急に知らない人から友人伝てに電話番号を教えて貰ったとか、

 お昼休みに突然呼び出されたりとか、あと知ってた人から執拗に言い寄られるとか……」

「それは酷いな……」


 豪徳寺が私の言に感想を述べる。

 だがしかし、いずれお前も守華さん相手に近い事をし始めるのだが……。

 まぁそれはいい。いまは置いておいてやろう。


「それで、彼女にはそうなる心当たりは?」


 佐籐にそう問われ私が頭を振ると、守華さんが喋り始めた。


「実はね香月さん。

 貴方のお友達の他にも複数の生徒から似たような相談を受けてるのよ」


 守華さんに合わせて、佐籐が首を縦に振った。


「うん。実は2年が始まる前の長期休みの頃から同じ相談が増えてるんだ」


 そうだろうそうだろう。

 裏統制新聞ではちょうど春休み頃に掲載された記事だったはずだ。

 相談が増えてなければ機能していない目安箱と見ていい。

 しかし相談がきっちりあるというのが、むしろ不思議だ。


 それだけの相談があって、何も動いていないのだろうか?


「相談はある……んだけど、みんな匿名なのよ。

 だからどうしても私達も動き難くって……せめて加害者の名前だけでも明らかになれば」


 そこで私はピンと来た。

 瀬尾さんにつきまとっているという針山……貴様には犠牲になって貰おう……!


「アー私実は一人だけ加害者に心当たりがアッテー。

 その、皆は信じてくれないかなって思うんだけど、

 オケ部でパーカスやってる針山クンがネー。

 どうもある女子につきまとってるラシイヨー」


 私がそう言うと、3人は口々に「あの野郎……」「嘘、針山くんが!?」「へぇ……」と興味津々といった様子だった。


 ふふふ、針山。貴様が悪いのだよ貴様が。

 お前が裏統制新聞の利用者なのかなど知ったことか。

 彼女にしつこく声をかけたお前が悪いのだ!

 瀬尾さんは私が絶対守るマン!!

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