31 生徒会へ
「矢那尾さん。結局ダメだったかー」
「そうね」
「それにしても水無月さんいきなり怒るからびっくりしたよー」
「そうかしら? 私、新聞部にはいる前にセーブしたもの。
少しくらい突っ込んだ会話をしても戻れば良いと思ってたのよ」
「へ!? そういうこと事前に言っておいてよ!」
私はあの歪曲が苦手だ。
世界があれで終わりになるって感覚には、何度経験したって慣れる気がしない。
だからできるだけ歪曲は避けたいと思っている。
でもそんな事は水無月さんはお構いなしだ。
くっそー普通にお喋りしてる分にはとっても良い子なんだけどなぁ。
こと女の子達の話となると、水無月さんは容赦がない。
私は正直に言って、その水無月さんが少しだけ怖いのだ。
「それで、どうしよっかこの後」
「私は取り敢えずやることがあるから、それと天羽さんと桜屋さんの件も気になるし。
まだ完全に終わったと油断しているわけじゃないから」
「そっか。それじゃうーん……」
たぶん私はオケ部へ行くのが数ある手段の中における好手の一つだ。
しかし、どうしたってオケ部には行きたくない。
それに楽器だってお家に持って帰ったきりで持ってきていない。
瀬尾さんを針山の奴からガードする為にも、オケ部にいくのは無理っぽい。
「今日楽器持ってきてないしなぁー」
言いながら私が片腕を組んで頬に手を当てて考えていると、水無月さんが言った。
「それなら香月さん。生徒会の様子を見に行ってみるのはどうかしら?」
「生徒会の?」
「えぇ……そうよ。
生徒会にオケ部の生徒が複数人掛け持ちをしているのは知っていて?」
聞かれ、私は緩慢な動作で縦に首を振った。
確かに何人かが生徒会と掛け持ちをしている
そしてゲームでもそれがあるいざこざに発展して、トロフィー獲得の為に生徒会庶務をやらざるを得なくなる。
「そう。香月さん、生徒会向きに思えるけど?」
「えぇ……」
「……まぁ貴方はしたいようにするのが良いか……任せる。
とにかく、生徒会に顔を出してみる事をおすすめするわ。
用事が無いというのならば、適当にでっち上げればいいのよ」
水無月さんはそう言って、私の元から去っていった。
∬
私は、生徒会室の前をウロウロとしていた。
「水無月さんは適当に話題をでっち上げろって言うけど、何を……?」
裏統制新聞の話を生徒会に持ち込むという話も考えた。
だけど、私達にとって有用な情報源なのは確かだ。
もし裏統制新聞のアプリが提供終了なんてことになってしまうと、私達にはマイナスしかないだろう。だから裏統制新聞を持ち込むわけには行かない。
では……。
私がウロウロとしていたからだろうか、それとも別の理由か急に声をかけられた。
「あら、香月さんじゃない」
「えっと、えーっと確か――守華さんだったっけ?」
彼女のことは見た目と名前は覚えている。
ゲームでの重要キャラクターだからだ。
それ以外にもオケ部で練習している時、ちょうど視界左端辺りに映ったり映らなかったりする。ショートカットの黒髪が似合う活発そうな子だ。
「そう。守華美有。生徒会室に何か御用かしら?」
「いやえっと、ちょっと生徒会に興味ガアッテー」
特に話題がなかったので、適当にでっち上げるしかなくなった。
別に生徒会そのものになんてまるっきり興味がない。
仕方ないのだ。仕方ない……。
「そうなの? もしかしてそれでオケ部を退部しようとしてるの?」
「え!?」
「斎藤くんから聞いたのよ。オケ部女子は全員揃ってたわよ。
『どうにかしてV1を繋ぎ止めろ』ってさ」
「あーそうなんだーやっぱりかー」
あの野郎め。決して私をオケ部から逃さないつもりか……!
でも私は絶対オケ部をやめる! やめるったらやめる!!
絶対に魑魅魍魎の餌食になるのはゴメンだ!
「まぁそういうことなら入って! いま割と皆揃ってると思うから」
「じゃ、じゃあちょっとだけお邪魔させて貰おうかなー」
「うん、どうぞどうぞ」
そう招待され、彼女が生徒会室のドアを開けた。
「みんな、お客さんよ! 転校生の香月さん。
生徒会に興味があるんですって」
そう一斉にみんなに紹介される。
私はドギマギとしながらなんとか自己紹介をした。
「ど、ドウモー。ご紹介に預かりました転校生の香月伊緒奈です……!」
生徒会室にいた全員の視線が私に集まる。
ゲェ……やっぱり二人もいるじゃんか魑魅魍魎が。
「ほぉ……香月さんが生徒会に興味があったとは」
「へぇ……これは本当に意外な……」
豪徳寺と佐籐の二人が物珍しそうに私の顔を見て唸った。




