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30 報道少女は譲らない

「――というわけなんだよ!」


 お昼休みの図書館の書庫。

 水無月さんに説明を終えると、彼女は私の話を聞きながらコンビニのおにぎりを齧った。


「だから、どうしても瀬尾さんを救う必要性があるんだ。

 それで水無月さんにも一緒に統制新聞部に行って欲しいんだよ!

 矢那尾さんのこと知ってるんでしょう?」

「それは別に構わないけれど……だけど徒労に終わるであろう事は言っておくわ」

「徒労に……無駄ってこと?」

「えぇ……香月さんにはまだ話していなかったわね、矢那尾さんがどういう人か……」


 そう言うと、水無月さんは残ったおにぎりを豪快に一気に食べきった。

 それからペットボトルからお茶を一口飲むと、私に言った。


「……矢那尾さんは絶対に、私達全員が揃わなければ本気で力を貸してはくれないわ。

 彼女は最後に助け出すことができる……そういう人よ」

「どういうこと……?」

「だからそういうこと、この世界がゲームだったっていう貴方なりに言うならば、

 矢那尾纏女は()()()()()()()()()()()()()キャラってことよ」

「はぁ!? なにそれラスボス的なキャラってこと?!

 ゲームじゃ矢那尾さんが出てくることはないから……」


 まさかゲームUI担当のゲームクリエイターの女性その人なんてことはないだろう。

 そうだった場合は、矢那尾さんはこの世界で言うところの神のような存在だ。

 水無月さんが言うように、最後にしか攻略できないキャラっていうのも頷ける。


 けど、私はなんとなく神様とは違う印象を矢那尾さんに抱いていた。

 なんと言っても推しその4の声なんだし、それに水無月さんの助け出す女子リストにも含まれているようだし、たぶん攻略対象で間違いはないのだ。

 ただそういう性質の人というだけと思うことにしよう。


「ただ、瀬尾さんは私も助けたいと思っていた子よ。

 香月さんがいることだし、ワンチャンあるかもしれない。

 だから私も矢那尾さんのところへ行くのは付き合っても良いわ」

「そうなんだ……!

 それと水無月さん、できれば私に助け出したい女の子全員を教えてほしいんだけど……」

「それは……どうしても教えろと言われれば教えて上げても良いわ。

 でも私、今はその時じゃないって思うのよね……。

 貴方にはもっと自由に動いてもらいのよ香月さん。

 だから無駄な情報を貴方に持たせたくない……分かって」

「そんなー、じゃあどうしてもー」

「こら」

「……はーい」


 そんなじゃれ合いをしながら、私は水無月さんとの作戦会議を楽しんでいた。




   ∬




「結論から言って、ご要望にはお答えできかねます」


 放課後の統制新聞部。

 矢那尾さんは、眼鏡のツルを両手で持ち上げながら掛け直して言った。


「そんな、どうして!?

 瀬尾さんはとても困ってるんだよ」

「大変申し訳無い。ですが、我々の情報がなくともきっと瀬尾さんはおモテになる。

 我々がここで情報を取り消したところで、既に出回ってしまっている情報に蓋をすることはできません。暫くは誰とくっついたのかを厳重に監視されるような事になるでしょう。

 いっそどうです。誰かと実際に付き合ってみては?」


 矢那尾さんにそう言われて、水無月さんがキッと彼女を睨みつけた。

 おお、怖。触らぬ(主人公)に祟りなし……クワバラクワバラ……。


「矢那尾さんだって、Dクラスのはずでしょう?

 お友達を助けたいとは思わないのかしら?」


 水無月さんがそう言うと、矢那尾さんは「ふむ、なるほど」と言いながら再び眼鏡をかけ直す。


「ちょっと水無月さん……! 矢那尾さんを責めたってもうどうしようも……!」

「香月さんは黙ってて。

 矢那尾さん。私、貴方が本当はAクラスに簡単に入れるくらいの成績を容易にテストで叩き出せる才女だということは知っているわ……。

 そして、瀬尾さんとは話をしない仲でもないことも知ってる。

 そんな彼女が報道が命の貴方にとっては、かなり親しい友人であることも……!」

「……」


 矢那尾さんは水無月さんに捲し立てられても、黙ったままだった。

 そうして暫くして言った。


「――失敬。誰かと実際に付き合ってみてはというのは軽率な提案でした。

 私からも心からお詫び致します。

 ですが、裏統制新聞に掲載している情報は引き下げるわけには参りません。

 下らないゴシップかもしれませんが、我々新聞部員の努力の結晶ですので……。

 ご用件が以上でしたら、お帰りください」


 そう言って、私達二人は統制新聞部から追い出された。

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