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26 作戦計画はアレグロで

 休日。

 私は市内の安価なファミレスに水無月さんを呼びつけた。

 そうして二人でドリンクバーを楽しみながら桜屋さんについて話している。


「それで……?

 一度は断られたアマバネコラボ案件を再検討してもらえそうってこと?」


 ドリンクを用意して早々に、水無月さんが私を睨みつける。

 きっと桜屋さんの事を心配して気が立ってるのだろう。

 私は余り気にせずに話を続けることにした。


「うん。どうやらそうなりそうだよ。

 天羽さんと私で組んでるグループにも『お祖母様ともう一度話してみる』ってさ」

「そう……それならば良いのだけど……。

 けれど香月さん、貴方一体どうやって立日を説得したの?」

「どうやってって……」


 終わりかけの夕日をバックに屋上で話をしただけだ。

 それ以外に特になにかをしたわけじゃない。


「んー分からないけど、こうドラマチックな感じに終わりかけの夕日をバックに……ね?」

「はぁ……皇のときも貴方が彼に操り人形の話をした途端に、

 彼の様子がおかしくなったものね。

 やっぱり貴方には特別な力が備わっているんじゃない?」


 そんなこと言われてもさっぱり分からない。

 見に覚えがないと言えば嘘になる。

 でも何か特定のキーワードを私が知ってて口走ってるだけの可能性だってある。

 皇で言えば『操り人形』だったりだ。


 まるでゲームで主人公がパラメータ条件を満たした時のように、

 あっさりと説得が上手くいってしまう時がある。

 私自身もこの主人公補正に関しては、本当になんとなくだけど自覚している。


 だけど、私はただのモブに過ぎない。

 ヒロインは水無月さんであって私じゃない。

 だって言うのに……。


「まぁ……私が乙女ゲームのヒロイン? になっているような状態?

 それよりは香月さんがそうなっている状態の方が、

 遥かに新たな因果を得られそうなのは分かった。

 私が一人でループしていたときは、怒涛の展開なんてほとんどなかったもの。

 だから香月さんに任せるわ」


 そう言って水無月さんは華麗に笑い、ドリンクをストローで啜る。

 水無月さんがヒロインじゃないですか、やだもー私に押し付けないで……!


「ところで、怒涛の展開って?」

「斎藤くんがグランドメサイアに招待されていたことが一つ。

 もう一つは皇くんがまさかこんなにも速く天羽さんを諦めて、

 立日に手を出して来たことが一つ。

 こんなに凄まじく進行速度が速い怒涛の展開はなかったわ」

「ほへー。そうなんだ……」


 そう言われてもだ。

 天羽さんはゲームでは登場頻度の低いレアキャラ。

 桜屋さんに至っては皇ルートで主に登場する悪役令嬢と来ている。

 この二人に関連する男も皇以外に思い当たる節がない。

 となれば、攻略対象でもない二人の女の子を助け出す方法なんて皆目検討がつかない。


 天羽さんはたぶんもう大丈夫だろう。

 お爺さんが納得してくれたっぽい。きっと守ってくれるだろう。

 それに皇父が皇と桜屋さんとの婚約話に乗り気らしいことから見ても、天羽さんと皇の話はなかったことになっていると見ていいだろう。


「うーん裏統制新聞にも有用な情報はないよね……」


 私はやるせなく独りごちる。

 そも裏統制新聞にグランドメサイアでの顛末がコンテンツとして掲載されないということは、あの場に新聞部の記者が紛れ込むのは相当難しかったということだろう。

 だからこそ私達に位置情報を提供しろと矢那尾さんは要求してきたのだ。

 天羽さんと皇の政略結婚についての情報は裏統制新聞には望めそうもない。


「とにかく、今は立日が家族を説得するのを待つしかないわ……。

 上手くいくといいのだけれど……」


 水無月さんが心配そうに片手でストローを弄ぶ。

 そんな時、ピロロンと私のスマホが鳴った。

 メッセージだ!


“お祖母様の説得に成功しそう。

 天羽さんと一緒にアマバネの通販サイトの仕様を説明に来て欲しい”


 メッセにはそう書かれていた。


「水無月さん! 説得行けそうだってさ!」

「本当に!?」

「うん、ほらこれ見て!」


 スマホの画面を水無月さんへと向けると、水無月さんは食い入るように画面を見た。

 そして――


「――香月さん。これ、私も連れて行って貰えないかしら?」

「え?! でも水無月さん……骨折してるけど大丈夫?」


 私は天羽さんと協力して着物を着て行こうと思っていたのだ。


「着物って骨折してても着れるものかな?」

「えぇ……大丈夫だと思うけど……」


 水無月さんは着物を着る時の事を考えているようで目線を左上に向ける。


 まぁ本人がそう言うならば大丈夫だろう。

 ループで何回も着物を着るタイミングだってあったはずなのだ。

 ここは水無月さんの言い分を信じてみよう。


「おーけー。じゃあ天羽さんに連絡してみる」


 私は天羽さんと水無月さんの3人で組んだグループでメッセージを送る。

 そして素早く計画を立て終わった後に、桜屋さんへとメッセージを返した。

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