表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/135

21 百合ゲー狂想曲

「水無月さんには分からないかもしれないけど、

 私にはその理屈ちょっとは分かるんだ……

 私の世界では乙女ゲーとして発売されてるけど……でも……元は百合ゲーかもで……」


 百合ゲーだった可能性がある……。

 そんな事を本人の前で大手を振って口走っても良いのだろうか?

 水無月さんが天羽さんを大切に想っているのは分かる。

 分かるけど、ガチ百合なのかまでは判別に困る。


「香月さん驚かないで聞いてくれる?

 私達は何もみんなが皆、女性同性愛者だったというわけではないの。

 ただ、お互いを尊重し合った結果、男よりも好いていた……それだけの話よ。

 だから私達はみんなでお金を出し合ってマンションを購入したの。

 お互いにお互いよりも好きな男性ができるまでの場所、あるいはそれが永遠と続けば……。

 みんなからはこう呼ばれていたわ――老人ホーム水無月荘」


 水無月さんは真面目に自分たちのことを語っている。


「老人ホーム……」

「そう。貴方には分からないかもしれないけど」


 水無月さんは悲しそうに瞼を伏せる。

 百合ゲー時代の情報はこれ以上もう引き出せそうにない。


「そ、それで。セーブについて教えてもらってもいいかな?」

「えぇ……いいわ。どうせ貴方が新たな因果を得るのをサポートするつもりだもの」


 そう言って水無月さんは片手で鞄を開く。そして暫くゴソゴソすると、1枚のルーズリーフを渡してきた。そこにはこう書かれている。


 ――――――――

 セーブ1。

 転入初日(20xx年4月1日)。

 夜、寝る前。


 セーブ2。

 転入2日目(20xx年4月2日)。

 10時頃。病院に運び込まれた後、骨折だろうと簡易診断された直後。


 セーブ3。

 転入2日目(20xx年4月2日)

 グランドメサイアにて。Amabane一行が到着した直後。


 クイックセーブ。

 転入3日目(20xx年4月3日)

 お昼。3人でお昼ごはんを食べた直後。


 ――――――――


 各セーブポイントとその詳細について記されている。

 うげ。まだ水無月さん転入初日のセーブ残してあるのか……。

 転入2日目のセーブも2つ残っている。


 もしかしたら、転入初日に戻られたら私は消えてしまうかも知れない……。

 そんな不安を覚えながら、水無月さんの方を見た。

 いっそお願いしてしまおう。そうすれば少しは躊躇ってくれるかもしれない。


「セーブに関しては分かったよ。

 あとお願いがあるんだ。

 私が転生者だってことに気付いたのは、転入2日目の朝なんだ。

 だからセーブ1に戻るのはできれば止めて欲しいんだよ水無月さん」


 私が消えてしまうかも知れないから……そこまで言わずとも伝わるだろう。

 事実、水無月さんは私の言葉を聞いて、


「そう……分かったわ。

 その代わり貴方には私達を手助けして欲しいの。

 この男たちの倫理が支配する世界から抜け出すための手助けを……!」


 真剣な面持ちで私を見る水無月さん。

 真面目な時の表情はやはりそれはそれでとっても可愛い。

 こんな可愛い推しに頼まれれば『うん』と言わないわけにはいかない。


「分かったよ……!」


 決意を新たに女の子達を助ける事を決めた私。

 他にも知りたい情報がある。


「それで……ステータス画面とかはあるのかな?」

「ステータス……? それはないわね」

「え……? マジでないの?! 他にチートは!?」


 私が狼狽えて頭を掻くと、水無月さんは不思議そうな顔をした。


「何度も言うようだけれど、男たちの倫理が支配するこの世界と違って、

 女性が強くて優しい世界だった。それだけで至って普通の世界だったのよ。

 セーブの使い方も至って単純だし、他にチート? っていうのはないわ」


 そう言って水無月さんは、セーブの使い方を教えてくれる。


 この地点をセーブ○とする。でセーブ。

 セーブ○へ戻る。でロード。


 たったそれだけだ。

 ステータス画面も何もない。


「マジで良く今まで何度もループ出来てるね水無月さん!! 凄い! 凄いよ!!」


 私が尊敬の眼差しを向けると、水無月さんは目を細めると「やめてよ……」とだけ呟いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ