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128 プレゼント選び

 始まったPFU内の宿舎での生活。

 今は二学期も終わって夏休み中だから授業は私達の為に態々開かれるものになる。

 そんなサウジアラビアの英語の授業をなんとか聞きながら、私達はPFUでの生活を楽しんでいた。


 その他ナディラさんと共にPFU内のスポーツが行われるというスタジアムに行ったり、あるいは女性専用だからか観光評価が高いPFU内のモスクに行ったり、コンピューターサイエンスの学科棟に行ったりなど、PFUで充実した生活を送っていた。


 そんなある日の朝6時。ナディラさんが私達の宿舎を訪ねてきて言った。


「皆さん今日は大学図書館へ行こう! 日本の本もたくさんある」

「大学図書館ですか?」


 天羽さんの表情がぱーっと明るくなる。

 天羽さん本好きだものね!


「それは良いのだけれど、PFUでの生活も明日で最後でしょう? 私達、日本語科の皆さんになにか贈り物をしたいわ……。外に出ることはできないかしら? 近場にあるショッピングモールとか」


 水無月さんがそう言って外出を希望すると、守華さんが「良いわね!」と同意する。

 桜屋さんが「私は大学図書館でも良いのだけれど……」と気怠そうに言った。


「じゃあイヴン呼んで二手に別れよっか?」


 私が提案すると、「イヴンくんに態々来てもらうのもあれだけれど、それが最善でしょうね」と水無月さんが同意し、皆も「賛成ー」と言った。


「じゃあイヴンくんに連絡するわね」


 と水無月さんがメッセージアプリでイヴンを呼び出す。

 返事はすぐにあり、1時間ほどでPFUの入口へ来てくれることになった。


「それじゃあ、私と水無月さん、守華さんがイヴンとショッピングモールで贈り物探し、桜屋さんと天羽さんがサラちゃんナディラさんと一緒に大学図書館へ行くってことで!」


 私が話を纏めて、各自準備を始めた。




   ∬




 PFU入口でアバーアとヒジャブを着込んで待っていると、イヴンが時間通りにやってきた。


「お待たせしました。それでは参りましょう」


 イヴンに付き従い、私達はPFU近くのショッピングモールを目指した。


 ショッピングモールへ着き、何か良いプレゼントはないかと模索する私達。

 しかし店をいくつか巡り歩いても、余りプレゼントに良いものが思い浮かばない。


「うーん日本の専門店とかはさすがにないよね?」


 私が聞くと、水無月さんが「それは厳しいでしょうね。リヤド中探せばアジア食品専門店くらいはありそうだけれど……」と答える。


「なにか日本っぽい小物を事前に日本から用意しておけば良かったわね……」


 と守華さんが初手を誤っていたことを反省する。


「イヴンは何が良いと思う?」


 私はダメ元でイヴンに聞いてみた。


「私ですか……? 送るのは日本語科の学生や先生達にでしたね?」

「うん、そうそう」

「それでしたら、無難に漫画が良いのではないでしょうか? アラビア語版ではなく、日本語版のものを……ただし売っているかどうかは保証できませんが……」

「漫画かーショッピングモール内に書店ってあるっけ?」


 私の質問に水無月さんが「いいえ、でも少し離れたところに大きな書店があるわ」と水無月さんが答える。


 私はこそこそっと水無月さんに耳打ちして聞く。


「水無月さん! そこ行ったことあるの? 日本語版の漫画なんて売ってる?」

「いいえ、行ったことはないわ。このショッピングモールも来るのは初めてよ。でもネットで調べた限りでは日本のアニメや漫画の商品も取り扱っているみたいなのは知っているわ」


 水無月さんが小さな声で答える。

 ほーん、ゲームではサウジで書店に行くことは無かったように記憶している。

 やはり私なしでは水無月さんの行動は強く制限されているということだろうか。


「それじゃあ、ショッピングモール探索はこれくらいで諦めて、その近くの書店に行ってみよ! 日本の漫画置いてあるかもしれないし!」


 私がそう決めて、私達はショッピングモール近くの書店へと徒歩で移動した。


 書店へ着くと、思っていたよりも大きな書店でびっくりする私。


「うはーおっきい書店だね!」


 建物には何故かアマバネのマークも刻印されている。

 これならば日本の漫画も取り扱っているかもしれないと思った。


「これだけ大きければ日本語版の漫画を売っているかもしれないわね! さぁ行きましょう!」


 守華さんが先を促し、私達はイヴンを先頭に書店へと入っていった。


「あ! あった! あった! 日本の漫画だよ!」


 漫画はすぐに見つかる。それも翻訳版ではなく日本語版だ。

 良くぞ売っていてくれた! やるじゃんかサウジアラビアの書店!

 割と種類があったので、私達は大学図書館に行った天羽さんにメッセージで聞いた。

 返事はすぐに返ってくる。


“そのラインナップでしたら忍者漫画にするのが良いかと思います。その他の漫画は大学図書館に何巻かありましたから”

“そっかそっか! ありがと天羽さん!”


 私達は世界中で大人気の忍者漫画を10巻分手に取るとレジへと向かった。

 レジに並んでいる最中に気付いたが、輸入品だからかべらぼうに値が張る。

 1巻あたり27サウジアラビアリヤルでスマホで日本円に換算すると1000円を超える値段に多少尻込みするものの、日本語版だから仕方ないとそのまま購入した。


「よし! 日本語科の皆へのプレゼントはOK! じゃあ帰ろっか」


 PFUへの帰還を提案すると、水無月さんと守華さんが「そうね」と同意した。

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― 新着の感想 ―
[良い点] PFUでの暮らしはかなり充実してたみたいだね~男が居ないのもプラスだろうし 日本語の漫画を読んで勉強の糧にして、ゆくゆくは日本に遊びにきて欲しいものだ
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