127 日本語科
宿舎から電車で15分。大学の校舎へとやってきた。
普段授業に使う一室だという部屋に入ると、30人以上の学生が私達を出迎えてくれた。
「ようこそPFU日本語科へー!!」
という掛け声と共に大歓迎される私達。
中には学生だけでなく教員の先生もいるようだ。
「はい。皆さん落ち着いて下さい! まずは日本から来た5名と通訳として一緒に来た中学生を紹介します。ちなみにこの中学生、皆さんよりも日本語が上手いですよ?」
日本語科の先生らしき女性がそう言って私達に自己紹介を促したので、水無月さんから順に一人一人自己紹介をする。そしてサラちゃんの番になった。
「サラ・アルザラニ、中学3年生です。生粋のサウジアラビア人ですが、2、3歳の頃から日本語を習ったので、割とネイティブに近い喋りができると思っています。日本からの短期留学生の皆さんに通訳として同行して参りました。一週間よろしくお願いします」
サラちゃんが頭を下げて、その緑色の纏められた髪を揺らす。
うんうん。サラちゃんの日本語は完璧だよ!
きっとPFUの先輩たちも驚いているに違いないよ。
「はい。皆さんありがとうございました。それでは質問タイムをしていきたいと思います。質問のある人は手を挙げてー」
先生の合図でたくさんの女生徒が挙手する。
「はい。では貴方!」
「ありがとうございます。好きなアニメはなんですか?」
絶対来ると思ってたこの質問!
これには水無月さんから順番に答えていくことになった。
「なにかしら……アニメは余り見ないのだけれど、敢えて言うならば最近見たのは鬼狩りかしら」
と水無月さんが鬼狩りを挙げる。
日本の武芸者が脅威となっている鬼を狩る少年漫画原作のアニメだ。
近年放送され大人気となっている。
次は私の番だ。
「私はアインズゲートかな。SFが好きなんです!」
とアインズゲートを挙げる。
日本の中二病の大学生がひょんなことから世界線を巡る戦いに巻き込まれるSFアドベンチャーゲーム原作のアニメだ。タイムマシンやタイムリープマシンなどが登場し、見事な伏線で物語を描いている。
次に守華さんが「アニメは大きくなってからは見てません! なので敢えて挙げるとしたら小さい頃に見た魔法少女エクセレント☆ガールかしら」
と小さなお友達から大きなお友達まで大熱狂の朝アニメシリーズ魔エガを挙げる。
そして桜屋さんが「あなたの名は、かしら……それぐらいしか見てないのよね」とあなたの名はを挙げる。子供から大人まで楽しめる新森まこ監督の大人気アニメ映画だ。
最後に天羽さんが「聖女の宅急便です!」と早崎宮生監督の大人気作を挙げる。
「ありがとうございました! 見てみます!」
「では次の質問がある人ー?」
たぶん殆どの人が好きなアニメやゲーム、漫画のことを聞きたかったのだろう。
一回目に比べて挙手の勢いが落ちた。
それだけ日本のサブカルチャーがここサウジアラビアに与えた影響が大きいということだ。やっぱり乙女ゲー世界になっても日本のサブカルは最強だよ!
「はい。それじゃあ貴方!」
「皆さん彼氏はいますか?」
その質問に黄色い声が上がる。
例えサウジアラビアと言っても女の園のPFU。そりゃこういう質問も出るよね……。
この質問にも水無月さんから順番に答えていく。
「いませんし、作る気もありません」
「うーんいないかなー。私も作る気はいまのとこなし!」
私が答えると、守華さんが「今はいないわ!」と簡潔に答え、桜屋さんが「婚約者がいたこともあったけど、今はいないわね」と答える。
そして最後に天羽さんが「いません」と一番短く答えた。
「はい。ありがとうございました!
皆モテるといいわねー。じゃあ次の質問はー?」
質問が続き、私達は次々に質問に答えていく。
そうして直に質問が打ち止めとなった。
「それでは皆さん、たった一週間だけですがどうぞよろしくお願いします」
最後に先生がそう締めくくると、PFU構内のスーパーで買ってきたというジュースで祝杯をあげることになった。