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124 教育省のお偉方との会合

 サウジアラビア時間8月10日。日曜日。

 あれから一週間と1日が経つ。

 イヴンに連れられ城塞やモスク、動物園などを見学した私達。

 サウジアラビアの首都リヤドに少しだけ詳しくなった。

 朝とても早く起きないといけないのはあれだったが、それ以外にはイヴン家での生活にも慣れ始めていた。

 それとやっぱネットがあるのは最高だと思う。

 外国に来てもインターネットに不自由しないのは、本当に私みたいな陰キャには嬉しい限りだ。


 城塞や動物園での写真をこれでもかとカフェテリアグループに送りつける私。

 硯さんと戸吹さん、ももちゃんにももちろん送った。

 シマウマ可愛いでしょう? とのコメント付きだ。

 朱音ちゃんがスマホを持っていないのが残念だった。

 かといって水無月さんから浅神の奴に送って、朱音ちゃんに見せてもらうのもなんだかなって感じだしね! 朱音ちゃんは私達と同じく夏休みを機に手術地の海外へ向かったはずだ。

 たとえ浅神に送ったとしても、浅神もご両親に送り直さないと朱音ちゃんには見てもらえないだろう。でも朱音ちゃん、心は一緒にいるからね!


 そして、今日はサウジアラビアの教育関係のお偉方との会合の予定だ。通訳としていつものようにイヴンが同行する。

 私達は制服で行くかアバーアを着ていくかで迷ったが、日本の代表として行くわけだからということで、今回は制服のみで行くことに決めた。


「さぁみんな準備はいいかしら?」


 水無月さんが確認する。


「えぇ、問題ないわ。教育省のお偉方相手だろうとしてみせるわよ」


 桜屋さんがカッコよく言い放ち、天羽さんが「私も頑張ります」とほんわか微笑む。

 そして守華さんが「えぇ、頑張りましょう!」と言った。


「うんうん、私も準備OKだよ水無月さん!」


 私も準備万端整い水無月さんに返事をすると、イヴンが「迎えの車が着たようです」と言った。表へ出ると、二台の政府専用車両が並び私達を待っていた。

 私達はまた水無月さん、私、守華さんの3人と、イヴン、桜屋さん、天羽さんの3人とに別れると車両に乗り込んだ。


 そして20分ほど車内で過ごし、リヤドの中心部にある高級ホテルへとやってきた。


 会議室となったホテルの催事場には、既に教育省の関係者らしき女性たちが来ていた。

 一部男性もいるがそのほとんどが女性だ。サウジアラビアにしては珍しいことだなと思う私。

 アラビア語でイヴンへと話しかける女性。


「どうやらボディチェックが必要なようです」


 イヴンが通訳し、私達は同性の役人らに服の上から体を触られ、武器や不審物を持っていないかのチェックが行われた。


 チェックが終ると、再びアラビア語でイヴンに何か言う女性。


「どうぞ座ってお待ち下さいとのことです」


 イヴンの指示に従い、私達は各自席に着いた。

 そして10分ほど待っただろう。ある一人の女性がやってきた。


 アラビア語で大きい声で女性がなにか言い、イヴンがそれを訳す。


「サウジアラビア王国、ラナ・ビント・アフマド王女殿下ご入場です」


 私はその台詞に、やはり来たかと思いながら席から立ち上がる。


 ラナ王女殿下。水面のカルテットではイヴンルートで名前付きで登場するサウジアラビア王族の内の一人だ。イヴンとはサラちゃんと同じく従姉妹の間柄になる今年で25歳と若い女性だ。そう、イヴンも王族の傍流なのである。これは一夫多妻制のサウジアラビアならではと言える。あまりにも孫やひ孫の数が多すぎて、王族らしくしていない王族も多いのだ。とはいえ、サウジアラビアの最重要事業たる石油会社を任されているイヴンの父であるファーリスさんも王族らしくはないが、重要な王族の内の一人に数え上げられるのだろう。

 水面のカルテットではどうにかして、この石油会社の跡取りをイヴンにしなければ、イヴンルートを攻略できないようになっていた。


 ラナ王女が席の前に着き「どうぞお座り下さい」とゆっくりとした英語で言ったので、私達は再び席に着いた。


 そうして今度はアラビア語でラナ王女がなにか言い、逐次イヴンが通訳してくれる。


「皆さん、本日はようこそお越しくださいました。こうして日本からの短期留学生の皆さんにお会いできて嬉しく思います。それからイヴンも……! 大きくなって通訳までしてくれるだなんて、小さな頃はこんなに立派になるだなんて考えても見ませんでした。

 皆さん、イヴンと仲良くしてやってくださいねと仰っています。

 ……こほん。王女殿下、本日はそのようなお話ではなく……」


 イヴンが困惑しながらも通訳を続ける。


「あら、良いじゃない。貴方が通訳しないなら別の人にやらせるわよ? と仰っています。

 私はそれでも構いませんが……」


 そこで水無月さんが私の隣で、「この地点をクイックセーブとする」と呟いた。

 そして英語でなにやら水無月さんがラナ王女に話しかけた。

 ゆっくり言っていたからか、なんとなく意味が分かった。


「失礼ながら、英語であれば私が話せますが、いかがでしょうか?」


 それにラナ王女がゆっくりとした英語で返す。


「ごめんなさい。私、英語は少ししか話せないの」


 水無月さんが今度は日本語で「失礼しました、申し訳ありません」と言った。


 それをイヴンが訳すと、ラナ王女が「いいえ、気にしないで!」と水無月さんを気遣い、再びアラビア語でなにか言い、イヴンが訳す。


「英語を喋れるなんてとても優秀な方もいらっしゃるのね……そうだわ。私、自己紹介をするのを忘れていたわ! サウジアラビア王国王女のラナ・ビント・アフマドと申します。教育省でお仕事をさせて頂いていますと、王女が自己紹介しておいでです」


 それに私達が英語は少ししか話せないと王女が言っていたので、水無月さんから順に日本語で自己紹介をした。


「ミナモ、イオナ、ミユ、フミカ、リツヒ!」


 とラナ王女が私達の名前を呼び笑顔を作る。


 そしてその後もサウジアラビアの女性の社会進出についてや、サウジアラビアでの日本語教育についてなどを話した。

 度々日本についても聞かれたので、日本でもまだ初めての女性総理大臣が誕生していないことなどを話す。

 そうして会議は終わり、会食の流れとなった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 宗教との兼ね合いで女性の社会進出は非常に厳しいからな~ しかし王女殿下はかなり親しみ易い方のようだしその点はありがたいね
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