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その幸せを希う  作者: 雲居瑞香
第4章【7月・夏の夢(王都)】
26/124

【2】













 王都のシズリー公爵邸に入ると、使用人の中にはメイやジーンを覚えている人がいた。それでも一応、ざっくり紹介された。初めてのブルーノもいるのだ。


「ブルーノは初めてだな。真面目だから、こき使いすぎるなよ。ジーンとメイは知っているな。ジーンは顔は怖いが優しいから大丈夫。メイは超の付く変人だから、奇行にも目をつむってやってくれ」


 何やメイの紹介が気になるが、お世話になる側なので文句は言わない。もはやすでに帰りたいので、奇行に走る可能性は限りなく高かった。


「王都、初めてきました! すごいですね!」


 はしゃいでブルーノが言った。ギルバートとセアラは、他にも護衛や使用人を何人か連れてきているが、この三人が連れてこられた理由はまた別にあるので、彼らとは別行動になるだろう。

「ブルーノ、お前、人がいいんだからあんまり王都を一人でフラフラすんなよ。ぼったくられんぞ」

「ジーンさんに言われたくないですけど、わかりました」

 ジーンはどういう意味だよ、と毒づいているが、ブルーノは気にしていないようでメイに話しかける。


「メイさんはギルバート様の遠縁の娘さんってことになってるんですよね。了解です」


 勝手に自己完結している。メイは一応、「そうだね」とうなずいておいた。たぶん、こいつなら大丈夫だろうと思わせる何かがブルーノにはある。

 基本的に、メイはセアラに張り付くことになりそうだ。なので、ジーンとブルーノはギルバートの護衛になる。喧嘩しないでやってくれるといいのだが。

「明日は宮殿ですよね。なんだかドキドキします……!」

「こいつ、連れて行ってもいいと思うか?」

 ブルーノが目をキラキラさせているのを見て、ジーンがメイにささやいた。メイも「どうだろうね……」と少し不安になる。礼儀正しい子だから、無礼な真似はしないだろうと思う一方、正義感が強すぎて問題を起こすような気もする。メイは思わず頭を押さえた。

「大丈夫か?」

「頭が痛い……」

「え! メイさん、大丈夫ですか!?」

「叫ぶな」

 うん、たぶん気のせいだと言うことにしておこう。そうしたのだが、やはりストレスはあったようで、メイは王都到着初日から奇行を発揮していた。


「メイ」

「いや、一応反省はしている。これでも」

「その状態で言われてもなぁ、説得力ないよな」

 使用人に報告を受けたシズリー公爵の説教を受けながら、メイは壁になついていた。いくつかあるメイの奇行の一つである。見る人をぎょっとさせるが、実害はない。

「……頼むから、明日宮殿で変な行動はするなよ?」

「わかっている……何処までなら変ではないんだ」

「お前がツッコミを放棄するな。収集つかなくなるだろ」

 ギルバートにツッコまれ、メイは不本意そうに壁から離れた。夫婦の向かい側のソファに座る。ちなみに、彼女の奇行は、洗面用の水を頭からかぶる(ベランダ)、あてがわれた部屋の大きさを計り始める、それから窓から屋根に上がろうとする。ここで捕まった。すべて一時間以内に起こったことである。


「部屋の計測は奇行ではないと思う」


 と、主張したのだが、変な行動であることは確かなようだ。まあ、普通はしないだろうか……。


「屋敷の見取り図は渡してあるだろ」

「そうだな。まあ、実像と差異がないか確認したかっただけだ」

 わかったのは、ほぼ完ぺきな見取り図であると言うことだった。

「まあ、ベランダで水をかぶったのは部屋の中だと濡らしてしまうと思ったからでしょうし、屋根に上がろうとしたのは、上から周辺を見たかったのでしょ。一応、理由はあるし配慮はしているようだから、以後気を付けると言うことで無罪放免でどうかしら」

 セアラがそう言うと、ギルバートも忠告以上のことはするつもりはなかったようで、「異議なし」と言った。だが、真剣な表情でこうも言った。

「明日は宮殿に上がるんだ。私やセアラでなくて、ジーンでもいいから、無理そうなら事前に言えよ?」

「わかっている」

 一応。言葉遣いも改める。


 その前に、今日眠れるかが心配であるが。


 付き人とはいえ、宮殿に上がるとなればそれなりの格好をしなければならない。ジーンとブルーノは騎士の正装に近いが、メイはドレス姿だ。五年ぶりに着た。

「それにしてもあなた、背が高いわよね。オーダーメイドが間に合ってよかったわ」

 セアラが一仕事終えたように言ったが、別にメイを着替えさせたのは彼女ではなく、使用人である。

「私がこういう格好をするとなると、既製品では入らないのがな……五年前はもう少し平均的だったんだが」

「五年で人ってこんなに身長が伸びるのね、って思っちゃった」

 メイは下手をすると成人男性と同じくらいの背丈がある。実際、ブルーノより背が高かった。彼の場合は、まだ伸びる可能性はあるが、ギルバートにも身長で迫っている。ハイヒールを履く必要はなかった。

「まあ、いいんじゃないか。すらっとしてて」

「そうですよ。周りはハイヒールですよね? だったらあんまり気にしなくていい気がします」

 ギルバートが適当にほめるのに対し、ブルーノは的確に意見してきた。たぶん今、ハイヒールを履いたセアラとメイの身長を見比べて言ったのだろうが、なかなか理にかなった意見だ。

「なるほど。ありがとう、ブルーノ」

「いえ」

 にこっと笑うブルーノが可愛らしかったので、頭を撫でておいた。


「ジーンは? 何か言っておくことはない?」


 セアラがメイの肩に手を置き、期待するようにジーンを見た。騎士服に身を包んだ彼は、体格の良さあるだろうが、かなり見栄えがいい。強面でも美形は美形だ。ブルーノも似合っているが、こちらはなんとなく従者感が抜けないかわいらしさがある。


「………………悪くないと思う」


 顔をそらして言われた。不格好でないなら良しとしよう。

「お前……ブルーノくらい素直になれない?」

 ギルバートが呆れたように言う横で、メイはセアラを見て言った。

「セアラは今日も美人だな。ドレスもよく似合っている」

「ありがとう。実はメイとおそろいなのよ」

 と言われ、メイはセアラの青いドレスを眺めた後、自分の菫色のドレスを眺めた。なるほど。型が同じなのか。

「なるほど」

「メイも、もうちょっと情緒が欲しいわ」

 装飾が違っているので、たぶん、言われなかったら気づかなかったと思う。

「大丈夫です! お二人とも、キレイですから!」

「ブルーノ、そうだけど、そうじゃない」

 ギルバートが昨日からツッコミが大変である。

「ジーン、ツッコミを放棄するな! メイも仕事をしろ!」

「ギル、ジーンに女性に対するツッコミは厳しいわ」

「セアラ!」

 執事にさっさと行ってこい、と怒られたので、出発することにした。











ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


メイの奇行を考えるのが難しい。どこまでが奇行なのかしら。


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