徐々に灯る心の火3
「西河さんってこっちの会議室ですか?」
「はい、そこです!」
「ありがとうございます〜!」
コンコン
「庵ちゃーん、失礼します」
(あ、聞こえてないんだ…集中してるのか…)
トントントン
「庵ちゃん?」
「うわぁ!宏太さん…!」
「ははっ、粟島さんと羽多さんが、庵ちゃんここに
いるって言ってたから。もう16時なの知ってた?」
「えっ、もうそんな時間立ちました?」
あれから5時間もたったのか…時間が立つのは早いな…
羽多さんの脚本からの流れを崩さないように、むしろ
なんのフラグも建てず、ここに混ざってもなんの影響も
与えず、この先の展開がスムーズに進むように…
そう考えつつ、私の色も出さないと…
「とりあえず、おにぎり買ってきたから置いておくね?」
「ありがとうございます…!」
「そういえば、明日立ち稽古らしいね?」
「あ、言ってましたね、まだ全然かけてなくて…
役者さんに申し訳ないです」
「まあまあ、庵ちゃんの思うように書いてみたらどう?
羽多さんが役者さんもう見つけたって言ってたよ?」
「えっ!?もうですか!?」
「うん、すごい優秀な人だから、どんなのでも大丈夫だって」
そう言うと、宏太さんは会議室を後にした。
それからひたすら、書いて書いて書いて…はっと気付いて
時計を見ると20時になろうとしていた。
(うそ!もうこんな時間!?)
急いで会議室を出ると、廊下の先に羽多さんがいた。
「どう?順調?」
「な、なんとかっ!すいません、こんな時間になっちゃって」
「いいのよ、どうせ私も粟島くんもまだいる予定だし。
どうする?庵ちゃんは、まだ居る?帰る?」
「それが…21時から明後日の生放送の打ち合わせが
あることをすっかり忘れてて…!」
「あら、本当に?それは大変、確か制作会社って
バードプロだっけ?急げば40分でつくよ!
タクシーでもいいけど、この時間だと渋滞に
はまっちゃうかも」
「あ、ありがとうございます!
あの!明日の朝には完成させて持ってきます!!」
「はいはーい、楽しみにしてるからね?」
羽多さんに、お礼をいいつつ、急いで劇場をでる。
私としたことが、打ち合わせがあることを忘れてた。
宏太さんもいつの間にか帰ってて、メールが入ってたけど
全然気が付かなかった…。
……ん?電話だ!
「はい!西河です!」
「あ、もしもし?庵さん?もしかしてもう会場近くにいます?
これから会社に行こうとしてたんですけど、もしあれなら
迎えに行こうかと思ったんですけど?」
「た、助かります!あの、ルーパ劇場わかります?
あの近くなんですけど…はっ」
「…?もしかしてダッシュしてたりします?」
「してます、かなり急いでます!!!」
「ははっ、わかりました。その近くの橋ありますよね?
そこにいてください、急ぎますね」
「あ、ありがとうございます!!」




