津乃田拓のある1日2
自動販売機の奥の廊下に、庵ちゃんがいるのはわかってる。
だから尚更、この会話を聞いてるんだと思うと
申し訳ないのと、腹立たしいので反論せずにはいられなかった。
「僕ね、庵ちゃん凄いなって思うんです」
その後は色々言ったけど、後々考えてみれば
庵ちゃんに聞かれてるのに、恥ずかしかったな、と
反省した。けれど、話し終わった後の庵ちゃんの顔が
嬉しそうだったから、結果オーライだな、と思った。
スタジオに戻ってからの庵ちゃんが前のように
元気に喋ってたし、アイデアも沢山出てるみたいで安心した。
庵ちゃんを見てると、僕まで元気を貰えるようだ。
アイデアが、想いが溢れて止まらない、そんな風に
作品を作ってる庵ちゃんがすごく素敵だと思う。
だから、変な噂でやる気を失ってほしくなかった。
「津乃田さん!今日も素晴らしかったです!
この後お食事でもどうですか♪?」
「実はこの後、ラジオ収録があって…」
なんて嘘を、ついてしまったのは申し訳ないけれど
なんとか上手くかわしていくしか無いか…。
なんて思ってたら。
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拓ちゃん、ご飯でもどう〜〜?
庵ちゃんと、宏太くんも来るけどー!
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と、晋太さんからメールがあった。
(庵ちゃんが来るのか…もっとちゃんと話す場が持てるか)
そう思いつつ、行きます、と返信した。
(よし、ご飯もあるし、片付けて帰ろう)
と、思いながら片付けてたら、話している
スタッフの声が聞こえてきた。
「西河さんって梅代さんとも仲いいんですか?」
「らしいよ、この間あのよく打ち上げとかで使う居酒屋
あるじゃん?あそこの前のお洒落しょうなお店から
二人で出てくるとこ見たって」
「へぇーーー、そういう感じなんだ?」
「それはわからんけどさあ、凄い仲良いのは確かだよね」
「浅川さんとこで働いて梅代さんとも
仲良いとか凄いなあ、新人なのに」
(庵ちゃんと?梅代くん?どこで?
女子パの時話してたっけ?)
そうか…仲良いのか…いや、どんな感情だこれは!
違う違う、庵ちゃんが元気出るなら、それでいいんだ。
梅代くんも呼ぶか。
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梅代くん庵ちゃんと仲良いんだって?
今から皆でご飯なんだけど、梅代くんも来ない?
庵ちゃん元気ないみたいなんだけど、僕じゃ
元気だしてあげれなくってさ、居るの知らない
ふりでもしてきてくれない?
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なんかこんな情けないメールで大丈夫か?とは
思ったけど、仕方ないか。
庵ちゃんが元気出るなら。
晋太さんに会って、梅代くんが来ることも伝えて…
庵ちゃんが元気のないことも伝えると。
晋太さんも心配してたみたいで。
やっぱり彼女は皆から好かれるな〜。
僕が元気だしてあげたかったけど…。
こうして、こちらはこちらで良くわからない感情を
抱えたまま、津乃田拓の1日は終わっていった。




