僕の可愛い弟子2
「いや、それが実は…」
「ーーーーーっていう訳でして」
「そんな事があったんですね…」
「本当なんですよね?」
「えっ、あ、あぁ、そうですね、そもそも
僕が誘ったんですよね、庵ちゃんのこと。
でもコネとかそんなんでは…!」
「それは、僕もわかってます!
浅川さんが何も言わなかったのは、きっと本当に
深い意味は無いんだと思ってます」
「実は、庵ちゃんが言わないでほしいと言ってて…
確かに僕の事務所、となれば自然にコネなんじゃないか
って思われるよな、って僕も考えて思ったんですよね」
「そんな…じゃあ、今の状況って本当に最悪じゃないですか…」
「庵ちゃんは、僕が事務所に誘ったときには
美東さんとこのコンクールに応募してたんですよ。
彼女は、すごい作品が作れると僕は信じてるんです」
「そうなんですね…僕も実は1番期待してる新人さんなんですよ
すごく真面目だけど、アイディアが面白くって。
しかも、熱量があるんですよね、だから協力したくなって
正直今の現場が、可哀想で仕方なくって…」
美東さんから聞かされた話は、想像よりも悪いようで。
2話を撮る前に、2回ほどあった打ち合わせにも
来てはいたものの、前のように積極的ではないと。
美東さんが心配していた。
でも、僕が何を言っても、きっと今庵ちゃんには
逆効果になるのは目に見えてる…。
気の利いた言葉の1つでも、思いついたら良いのに。
作家のくせにこんな時何も浮かばない。
誰かを慰めるのは、昔から苦手なのだ。
今は庵ちゃんが、自分で解決することを
祈るしかできないなんて。
結局、有名になっても、可愛い弟子の1人も
助けてあげることができないなんて…僕もただの凡人だな…
よし、宏太くんに相談しよっと。




