増える悩み2
「「おはようございます〜」」
スタッフさんが返事を返す。
オールブラックの私服、相変わらず素敵すぎる…。
「津乃田さん、おはようございます!
先日はお世話になりました、またご一緒出来て嬉しいです〜!」
いや、逢坂さん、貴方が津乃田さんをねじ込んだんじゃない…
「逢坂さん、今回もお世話になります、脚本
読ませていただきました、面白いです、参加できて嬉しいですよ」
推しがこんなにアタックされてるのを、こんな目の前で
見ることになるとは、夢にも思わなかった…
あっ、こんな悠長に眺めてる場合じゃなかった!
とりあえず、スタッフに紛れてよう。
「それでは、打ち合わせの後、リハーサル始めます」
打ち合わせを後ろで聞きながら
2話を作る島崎さんを、横で見守る遠野さんと私。
次の収録まで時間もないから、焦る島崎さんを見てると
こっちまで焦ってくる。
参考にしつつ、私も構成を練らないと。
もはやリレー脚本とは、名ばかりだけど
逢坂さんがいるし仕方ない、か…。
打ち合わせも終わり、リハーサルに入った。
これは…正直泣きそうだ…ずっと、ずっと推してきて
一緒に仕事できることを夢見て、脚本書いて…
そうやって、今やっと、津乃田さんが目の前で
リハーサルしているところを、見ることが出来るなんて。
やっぱり、ちゃんと私の仕事で、津乃田さんといつか共演したい。
リハーサルは順調にすすみ、休憩の後、収録だ。
「それでは30分休憩になります」
とりあえず、今から休憩だし、少し休もう。
ずっと気を張りすぎて疲れた〜〜。
あ、コーヒーを貰ってこよう。スタッフさんがいる。
「すいません、コーヒー1つ頂いてもいいですか?」
「はい、あ、お砂糖入れますか?」
「2つお願いします」
「僕はブラックでお願いします〜」
「えっ!」
「庵ちゃん久しぶりだね〜〜」
「あっ、はいっ、おひさし…ぶりです…
(なんてこった、迂闊にコーヒーを貰いにきたばっかりに)」
「庵ちゃんが参加してるなんて、さっき知ったんだよ〜
先に言っといてくれたら良かったのに、あ、連絡先聞いてなかったね」
「いえいえ、お気になさらず!
(もう余計なことは言わないでくれっ…というか今日はなんでそんなに
親しくしてくれるんだ、緊張するだろうっ!)」
「津乃田さん?西河さんとお知り合いなんですか?」
怪訝な顔をして、逢坂さんが声をかける。
(あぁ、お願いだから、当たり障りの無いことを…津乃田さん…)
「庵ちゃん、晋太さんのところで働いてて
前回仕事一緒に仕事したんですよ、ねぇ、庵ちゃん」
(あぁ、もう、誰か私を隠して……)




