3人だけの親睦会2
「そういえば、この間の現場も新人脚本家さんがいたんだけどね
庵ちゃんとは全然違ったよ。最悪だった〜」
「内野さんがそんな事言うなんて珍しすぎませんか?」
「いや、梅代くん、本当にすごかったんだから」
「えぇ、どんな新人脚本家なんです?」
「それが、局のお偉いさんの娘さんらしくて
しかも津乃田さんが好きとかで、私には挨拶もなしなの!」
「あ〜、そんな事が…」
「それくらいなら良いけど、別に脚本が凄くちゃんとしてるとか
そんなこともないの!しかも津乃田さんが居ないとこで
会えればいいだけだから脚本は適当にどうにかしといて、とか
言ってたからね!許せない!」
「そ、そんな人がいるんですか、本当に!?」
「いるんだから、本当に、びっくりよね」
なんというか、そんな漫画のようなことが…お偉いさんの娘さん…
世の中凄いなぁ、津乃田さんが、変なことに巻き込まれさえなければ
私には別世界のような話だけど。同じ業界だから、なんとも。
「あ、電話だ、ちょっと出てくるね」
「庵さん、大変ですね」
「えっ、何がです?」
「お偉いさんの娘さん、とかいうライバル出来て」
「ラ、ライバル!?別にそんな、好きとかじゃ
ないですから!いや、好きですけど、そんなんじゃ!」
「ははっ、本当面白いですね、反応が一段と」
「からかわないでくださいっ!」
「でも庵さん他人事じゃないかもね」
「なんでですか?」
「美東さんから、この間、新人脚本家何人かでリレー形式に
作品作るのもありだね、って話してたから。そこに庵さんも
名前上がってたし、さっきの人も入ってるかも」
「えっ、そんなお話が!なんであれ、お仕事いただけるなら
何でも嬉しいです、私は」
そうだ。今は他のことにかまってる暇はない。
もっと色んな作品を書きたいし、もっと色んな現場を見たい。
賞をとっただけでこんな風に、お仕事させてもらえるのは
きっと凄く幸せなことだ。
晋太さんのことも、ちょっとした不審者とか思ってた
時もあったけど、あの人、脚本家や作家として、実は
すごい人だった。今までの言動、土下座して謝罪したいくらい
すっごい尊敬できる人だった。
宏太さんも、検索した時びっくりしたらしい。
まあ、あれだけ人を軽く誘ってたら不審がられるだろうな…
いつかちゃんと津乃田さんにまた会えるときまで
もっともっと、頑張らないといけないんだ…。




