つかの間の休息
慌てっぱなしだったオタ活も終わり。
いつもの忙しさもなく、事務所でゆったりした時間を過ごす。
そして、来週には応募したコンテストの受賞者発表が近づいていた。
初めて文章にした作品が、選ばれるなんて思ってはないけど
それでも誰かが私の作品を呼んで、評価してくれてる。
それだけで、なんだかソワソワした。
「大賞が取れたら、スペシャルドラマ化か〜」
「あの大賞、影響力あるよね」
そう、宏太さんが言ったように、大賞作品はスペシャルドラマ化。
夢のまた夢だけど。
「どうする、スペシャルドラマ化したら?
どの俳優さんにやってもらいたい?」
「ん〜〜、私は〜…」
どっちかって言うと、アニメ化の方が嬉しいんだけど。
「映像化されるなら、それだけで嬉しいですよ」
まあ、これは凄く、本心。
「庵ちゃんってほんと、欲張らないよね
もっと貪欲になっていいと思うよ、夢なんだし」
「もっと貪欲に‥?」
「そう、自分の夢なんでしょ?それならもっと
こうしたい!こうでありたい!って思っていいよ。
遠慮なんかしなくて良いんだから、ね?」
昔から、あまり高望みするほうじゃなかった。
もともと夢なんて、はっきり持ったことなかったし。
欲張ったって、”二兎を追う者一兎をも得ず”って言うし。
地味に、静かに、オタ活して、ゆっくり生きていくはずだった。
もっと欲張っていい、そう言われても、いまいちピンとこないのが
今の私だけど。誰かにそう言ってもらえると、少し認められた気が
してなんだか嬉しい。
「そうですかね?欲張る、か」
「どう宏太くん、最近〜」
「なんですかその、軽い感じ。というか、最近よく事務所居ますね」
「まあ、最近は打ち合わせ少ないからね〜
兎に角書いて書いて書きまくる、って時期だからさ」
「構成作家って、ほんといつも思いますけど、凄いですよね」
「なになに、褒めても何もでないよ〜〜」
「ボーナスくらいくださいよ。まあ、それは良いんですけど
晋太さん見てるとほんと、才能!って感じします。凄いです」
「そんな事ないよ、僕だってね、結構悩むんだ。
僕より庵ちゃんの方が凄いと思うよ?
色んな条件をちゃんと考えて答えを出すんだ、あの子」
「あぁ、わかります、綿密ですよね、結構」
「庵ちゃんが作る道は本当に安全だよ。もっと派手でも、って
思うかもしれないけど、安全な道を作ってこそ、派手に歩けるからね」
「そうですね、僕も頑張らなきゃな〜!」
「宏太くんも頑張ってると思うよ、思いつかない角度から
アイデアくれるじゃん」
「なにもでませんよ〜〜〜?」
「ははっ、僕は二人に可能性をすごく感じてるんだ。
積み重ねたものは、いつか、ちゃんと形になるんだから」
忙しい時間の、つかの間の休息はこうして終わっていった。




