今日という日を成功させよう3
「足、痛いんじゃない?」
言われると思ってなかった事を言われ、少し驚いた。
「なんで…」
「わかるよ〜、湿布もらったから、貼っとこ?」
まさか気付くなんて思ってなかったし、それが
津乃田さんだなんて思ってなかった。
「いった…っ」
「うわ、ちょっと赤くなってんね」
「アホですよね、慌てたばかりに…」
「そんな事無いよ、ゲネでの印象って
その後の公演に関わってくるし、あそこで
ミスが起きなくてよかった、庵ちゃんのおかげだよ」
「本当、二人して転ばなくてよかったです…」
「あははっ、それだとだいぶヤバいね、ふふっ」
熱を持った足首に貼られた湿布が、冷たくて気持ち良い。
「なんか、いつも助けてられてますね。
ありがとうございます」
「えぇ、急にどうしたの、助けたなんて〜〜
今回は手当、でしょ?ははっ」
津乃田さんは当たり前に知らないし、これからも
言うつもりなんてないけど…本当にいつも助けられてる。
まだ、こっちに状況してくる前、会社員だったころ。
仕事の内容は嫌いじゃなかったけど、人間関係が
死ぬほど悪かった。それこそ病むくらい。
でも、そんな時、津乃田さんのラジオを聞いたり
映像を見たりしていつも元気をもらった。
『あぁ、この為に頑張ってるんだ』
そう毎回思ってた。津乃田さんが知らない所で
こうやって助けられてる人が、沢山居ると思う。
いつだって推しは誰かを救っているのだ。
推しが笑って楽しそうに話してるだけで、自分の心の
暗く重いものがすぐどこかへ行ってしまう様な…
そんなすごい力を持ってるんだ、推しってのは。
「いやいや、本当に、助かってますよ」
「うん?どうしたの?元気ない?」
「あぁ、いえいえ、めっちゃ元気です!足首以外は!
湿布ありがとうございまいた、戻って手伝ってきますね」
「あ、うん、頑張れ〜〜」
いけないいけない、急に前の嫌な出来事とか
色々思い出してしまった…大事なゲネの最中だってのに。
戻ると、舞台は終盤に差し掛かっていた。
「嘘だろ…俺は…弁当屋の店員じゃないのか…
なんだよ、これ、どういうことだよ…」
前半不思議で面白かった脚本から一転、後半は
シリアスなミステリーになってくる。
さっきまで笑っていた客席の人たちは、これから
この話がどう転がっていくのか、皆真剣に観ている。
「凄いよね、羽多ちゃん、前半と後半パートの
緩急がいい感じについてて」
「そうですね、私も初めて脚本読んだ時、面白くて
びっくりしちゃって…これが脚本家か、って思いました」
「僕も脚本家だよ…?」
「分かってますよ、晋太さんも凄いですけど!
羽多さんも凄いって話です!」
「あははっ、知ってる知ってる」
自分で言うんじゃないよ…。




