今日という日を成功させよう
「おはようございます、宜しくおねがいします!」
主演の下坂さんの大きな挨拶が響く。
本番と同じくらい気合を入れて、今日のゲネを
しっかり進めないとな…。
演技や衣装の最終確認と、準備が終わって
もう後1時間後には始まる。
「晋太さーん、宏太くん、庵ちゃん!
今日は頑張ってね」
「あ、拓ちゃーん!ありがとう〜久々の
舞台実は凄く緊張してるんだよ、僕」
「ははっ、晋太さんでも緊張するんですね?」
「緊張はするに決まってるでしょ〜
それに…「津乃田さーーーん!!!!」
「あぁ、下坂くん!」
「あぁ!じゃなくて!僕には応援なしですか?
ちょっと〜僕が主役なのに〜〜?!」
「ちゃんと横見な、晋太さんすごい睨んでるよ?」
「ひぃぃい!そんな睨まなくても…」
「あっはっははっ」
本番前の他愛もない会話で、皆の緊張が緩む。
「本番5分前でーす!」
普段のお客さんと違って、観に来るのが
関係者ばかりなのが、身体をこわばらせる。
下坂さんが主演なだけあって、業界でもなかなか
注目されているこの舞台。
「うわぁ〜〜、なんか、凄いですね…
前観に来た舞台と、入るお客さんが違うと
こうも雰囲気が変わるんですね…」
「ちょっと、庵ちゃんそんなに緊張しないで
なんか私まで緊張してくる…」
私の横で羽多さんがそう言うから
せっかく緩んできた緊張が、また戻ってきた。
始まる前のアナウンスが、流れ終わり
会場が少し暗くなる。静寂が少し怖い。
私が全て作ったわけじゃないのに…
羽多さん達は、毎回こんな思いをしているのか…
すべての責任があるというのは、こういう事をいうのかな。
「はぁ〜〜〜、もう昼だってのに、今日も
全然人こないわ〜〜なんでかな〜〜美味いのにな〜
前にチェーン店出来たからかなぁ〜はぁ〜〜」
下坂さんのセリフとともに、ゆっくり舞台が明るくなる。
出だしは順調。関係者の雰囲気も悪くない。
下坂さんの所々で出るアドリブに、笑いが起こる。
ここからだ…。
ティロリロリーン
「いらっしゃしませ〜〜!
おすすめは、ハンバーグ弁当です
何になさいますか〜?」
「あ、満漢全席ありますか?」
晋太さんの登場は、少し会場をざわつかせた。
それもそのはず、今回の晋太さんの登場、実はお知らせ
していないのだ。会場は関係者ばかり、声優も舞台俳優も
脚本家としての仕事が多い今では、珍しいことなのだ。
(私に任せてくれたこの部分、実は結構凄いことなんじゃ…)
晋太さんのそんな話を、ゲネが始まる
数分前に聞かされてよかった。
もしこれが脚本を書く前だったら、物凄く面白く
しないといけないと、慌てふためくところだった…




