恵みの雨
アメリカのある大都市。
刑事で麻薬取締官のケイトとカレンは、女性の麻薬密売人を追いつめていた。
数ヵ月前に男性の密売人が逮捕され、自供から女性密売人が浮上。
女性の刑事2名が捜査を続け、ようやく密売の女と場所を特定。
覆面パトカーで連日張り込みしていた。
朝からかなりの時間が経過。
天気はくもりで、肌寒い日。
昼近くになり、2人は車内で持参の軽食をとり、
ペットボトルのミネラルウォーターを飲んだ。
カレンがケイトに、「ねえ、トイレに行きたくない?朝からずっと張り込みで、おしっこしたいの」
ケイトは、「私も。でも、ここを離れると、密売人を見失うかも。
ようやくここまで来たんだから、きょうこそはなんとしても捕まえないと」
「がまんするしかないわね」
そのとき・・
ホシと思われる女が現れた。
どこにでもいるような娘で、見たところは女子大生風。
服装は地味で、バッグも安物。
彼女は繁華街から裏通りへ。
使われていない古いビルが並び、人通りが少ない地域。
ふつうの女性が1人で立ち入るところではない。
女性の刑事2人はパトカーを静かに走らせて、
落書きの多い、ある廃墟の前で停車。
足音がしないシューズで歩き、女子大生風の娘を尾行した。
密売人と思われる娘は、歩道にある電話ボックスに入った。
もちろん、警察署が盗聴している。
数分の通話が済んだようで、娘は近くのビルへ。
使われていない建物に、ふつうの人間は入らない。
(続く)