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ヘリオドール・オブ・アンバースデイ  作者: 嘘乃成木
1章HelloWorld
7/8

6.「女神の祝福OR厄介な呪い」

場面転換、目線変更に#を使用するように変更しました。

これまでに投稿した後書きの【魔法】【魔力】の項目を改稿しました。


これからもよろしくお願いします。

 

 彼女はなんでもない風に笑い、()()()()()だと自分に言い聞かせるように語った。


「どうでした?驚きましたか?」

「…………。」


 想像はしていた。彼女が大人に見えるほどの事情があるんだろうと。

 先程の問答で言えば彼女は子供とは言えないほど経験を積んでいるんだろうと。

 だが、()()()()()()。想像以上の悲劇にかける言葉を無くして、情けなく口を半開きにしたまま固まってしまった。所詮は平和ボケした大学生だ。そんな奴が思いつく悲劇なんてのはたかがしれていて、その結果がこれだ。


 何かこの薄幸な少女に出来ることはないか?このまま死んでいくのは悲しすぎる。二十一年しか生きていない俺でも体験している幸せはあるんだ。それを経験してから死ぬのでも惜しくないだろう。


「少しの間――――そうだね、次の街までは一緒にいない?」


 この地では常識すら知らない俺がまだ幼い少女を守りながら育てていくなんてのは不可能だ。だがリサちゃんをこのままここに一人置いて行くこともできないし、したくない。それならせめて次の街で居場所を作ってあげる努力をしてお別れしようと考えた。我ながら名案である。


「…………え?」

「次の街で居場所を作れそうになかったらその次の街でもいい。なんにせよ君には落ち着ける場所が必要だよ。」

「沢山ご迷惑をおかけすると思いますよ?」

「俺の方が迷惑はかけると思うし、次の街がどれくらい離れてるか知らないけど大した距離じゃないでしょ?」


 何分こっちに来て一日なもんで。常識も無いし戦えるような力も無い。………………チートが欲しいなぁ。


「確かにそうですが……。」

「なら決まりだね。」


 そう言うと、リサちゃんはクスッと溢れるように笑った。


 可愛い。


「ですね、是非宜しくお願いします。」

「こちらこそ。」


 正直リサちゃんの方が頼りになりそうだなぁ。

 そんな頼りになりそうないい娘が忌み子ねぇ……。今回、リサちゃんのこれまでを聞いて、わかったことや聞きたいことがあった。忌み子についてもその内の一つだ。


「何個か聞いていい?」

「いいですよ。」

「忌み子って何?」


 これが元でリサちゃんが虐げられていたにも関わらずどういうものか全く見えてこない。リサちゃんがただの少女に見えるから尚更だ。


「私も文献で読んだだけなんですが、実はこれといって無いんですよ。どの文献にも。」

「はい?」

「無いんです。そこにあって然るべきはずの(いわ)れや所以というものが。ただ紫の目という理由だけなんですよ」


 そんなわけがないだろ。大規模な人数が絡む物事には必ず理由があるはずだ。


「じゃあ、リサちゃんはただ紫の目をしているだけで忌み子と虐げられられていたのか?」

「そういうことになりますね。」


 平然と答えるリサちゃん。


「わからん……。」

「まったくです。」

「そこも解決しなきゃね。」

「はい。」


 聞いた限り根が深そうだけどな。

 他に話さないといけないことは………あぁ偽名の件がまだか。


 ……偽名かぁ、どんなのがいいだろう。廻帰――廻って帰る、繰り返す、戻ってくる、このあたりの意味だな。安直に考えて英語にしてみるか?英語だとなんだ?リクルートとかか?なんか違うな……リグレッション………か?忘れた、大体そんな感じだった気がする。

 リグレッションからとってリグとかどうだ?なんか語呂悪い気がしないでもない。濁点無くしてリクか。ありきたりだが悪くない。


「もう一つ話したいことがあってね。」

「なんですか?」

「リサちゃんみたいにサクラ国?の貴族って誤解されないように偽名を使おうと思うんだ。」

「分かりました。どんなのにするんですか?」

「リク……とかはどうかな?」

「リクさんですね。いい名前ですね。」

「ありがとう。」


 偽名も決まったし、あとはこの男が目覚めるのを待つだけだな。


「カイ――リクさん。一つ懸念が……。」


 申し訳なさそうに切り出した。


「どうしたの?」

「この男性は確実に忌み子への耐性がないはずです。下手したら私ここで死にますね。」


 リサちゃんの言い方に慣れが見れる。自分が死ぬことをサラッといえる辺りに悲しくなるな。


「あ~なるほど。じゃあ無理やり起こすから部屋の外で待っててくれる?」

「分かりました。」



 リサちゃんが立ち上がり部屋の外へ出ていった。さて、起こすか。

 男のそばへ行き、頬をぺちぺち叩く。


「すみません~起きて下さ~い。」

「んあぁ?」




 あ、目が合った。


 まだ状況が飲み込めてないのか暫く見つめ合う。




「「…………。」」




 おれから切り出した方がいいんだろうか?




「あの~………どちら様でしょうか?」




 すると男は「何言ってんだ」と言いたげな顔をした。




「こっちのセリフだ、ド阿呆。」


「え? すみません。」




 声が低い。

 俗にいうイケボと呼ばれるカテゴリに属す声だ。

 てか、そういう暴言は仲良くなってから言ってくれ。


「え? あ、あぁ…分かってくれればそれでいい。」


 謝らせといて何戸惑ってんだ。


 ………まぁいいか、いやよくねぇな。第一印象はは大事だ、しっかりキめとこう。


「ベッドあるのに床で爆睡してた貴方ほど、阿呆ではないですけどね。初めまして、リクというもので旅をしています。」

「あぁ? ……やる気か?」

「んんー?」

「ニヤつくな。やる気かって聞いたんだ。」

「いえいえ、この顔は元からですし、やる気もないですよ?」




 地球では「お前いつもニヤついてんな」と、よく言われてたがここでも変わらないらしい。俺弱いからな。


 ちょっと舐められそうな空気感じたから煽っただけですぅー。


「お前、腹立つ奴だな。……ふる………降本椿、それが俺の名前。お前と同じく旅人だ。苗字には聞き覚えがあるかもしれないがその降本と思ってくれていい。」


 偉そうに胸を張って言った。

 いや、知らんけど……。どの降本だよ。


「それで?お前――リクだったな。どうして起こした?」

「旅の途中、この村に来た時この惨状だったので生存者を探してたんですよ。そしたらここで寝ている降本さんが居たというわけです。」


 納得したのか深く頷き、「椿でいい。それと敬語でなくてもな。」と言った。


「じゃあ椿と呼ばせてもらうけど、ここで何があった?」

「竜が攻めてきた。」


 眉を(ひそ)めたその顔は、後悔を含んでいて複雑な顔をしていた。ここで色々あったんだろうな。


 ともあれこの辺りはリサちゃんの想像通りか……。


「戦争中だからもしかしたら、と思ってたんだ。」


「あぁ、ずいぶん攻め込まれているよな。セントラルはもうすぐだ。」


 セントラルってどこだっけ? なんか女神のところで教えてもらった気がするが………あぁ、この国の首都がそんな名前だったな。


「それってだいぶヤバいのでは……。」

「当たり前だろ。俺が知ってるだけでもセントラルが包囲されるまであと少しってところだったんだ。ここが襲撃されたってことは、もうそれも完了するころだろう。」

「なるほどな。」


 セントラルに行くのはもう少し時間を空けてからにするか。危険らしいし。


「椿はこれからどうするんだ?」

「俺か?俺はまだ決めてない。旅人だからな、自由気ままにやっていくつもりだ。」

「ふーん」


 目的は無し……と。

 うん、話してみて悪い奴じゃなさそうだし、これなら話してみるか。


「なぁ、椿は忌み子についてどう思う?」

「なんだいきなり? 忌み子?」

「うん。」


 椿が怪訝な目をして「わけがわからん」とでも言いたげな顔をした。


「忌み子か……。正直なところわからん。会ったことがないんでな。会ったら何ともないのか、それとも切って捨てるのか。まぁどちらにせよ俺には関係ない話だ。」

「会ってみるか?」

「は?忌み子に?」

「うん。」


 俺は扉を指刺した。


「……居るのか?」

「うん。」

「切っても知らんぞ?」

「流石にそれはないんじゃねぇの? 話を聞く限り、今までは嫌悪止まりだったようだし。」

「万が一ってこともあるだろう。」

「そこは椿が踏ん張ってくれよ。彼女はリサって言ってまだ小さい女の子だからな。」

「人任せかよ。」


 椿が気怠けな表情をしつつボヤく。


「じゃあ開けるぞ。椿は万が一の時のあるかもしれないからそこで座っててくれ。」


 俺は立ち上がり、扉の前まで歩く。


「リサちゃん、居る?」

「はい!リクさん。」


 扉越しに元気な声が聞こえた。


「開けるよ。」


 返事を待たず扉を開ける。リサちゃんを招き入れる為に開けると同時に数歩下がる。


「疾ッ………。」


 開けた瞬間、その数歩下がった時に出来た隙間を、すごい速さで椿が真横をすり抜けた。

 神が作った(この体)でなければ見逃してたであろう速度、すなわち常人には見えない速度だ。比喩ではなく瞬き一つの間にリサに肉薄していた。

 クソッ!動きが見えて反応出来ても肝心の体が思うように動かない……。四歩だ。四歩動けば二人の間に入れると言うのに、時の流れに対して体が重すぎる。


「リサちゃんッ!」

「え?」


 声を掛けるがリサちゃんはつばきに気づいて無い。

 その間にも、椿は、いつの間にか出している刀に右手を、左手で鞘を持ち、抜刀する構えだ。


「あ……。」


 ここでようやくリサちゃんが気付く。

 ――たった二歩。それが二人の間に入り込むまでの距離。だが遠い。この2歩進む間に椿はリサちゃんを切ることが出来るだろう。

 そしてそれは現実になる。

 まさに神速と言える速度で刀は鞘から抜かれた。

 リサちゃんを狙って放たれる凶刃は左脇腹に逆袈裟の形で迫っている。


「「――!?」」


 誰もが予想していない事が起きた。刀がリサちゃんの体に到達しなかったのだ。まるで何かに弾かれたように跳ね返った。

 椿は、驚きはしたもののすぐさま距離をとり、刀を構え直した。

 俺達三人は一連の流れに――主に、椿の攻撃が不可視の障壁に阻まれたことに――疑問が湧いた。リサちゃんすらも驚いていることから本人も知らなかったのであろう。あれが何か気になるが今はそれよりもやるべき事がある。


「刀、仕舞えよ。」


 椿に言う。

 いつ斬り掛かるか不安で仕方無いわ。


「…………無理だ。今も斬りかかりそうになるのを抑えている状態だからな。これが限界だ。」


 未だにリサちゃんを睨み、険しい顔をしている椿が言った。

 忌み子というのはそこまで影響力があるものなのか。リサちゃん、よく今まで生きてこれたな。もしかして椿が特別とか…………?まぁこの辺も忌み子について調べていけば分かるか。

 それよりも、ここからどうするか…………。膠着状態になってしまい、椿がこのような状態だから取れる手段は少ない。とりあえず、


「リサちゃん、ごめんけど部屋から一旦出てもらえる?俺は椿と作戦会議するから。」

「は――─」

『その必要は無い。』


 リサちゃんの返事に被せるように爺さんのしゃがれた声がどこからともなく響いた。

 その声には()があり身動き一つ取れなくなる。辛うじて動く口を頑張って動かし、


「どなたでしょうか?」


 問い掛ける。

 すると、()が弱まり、返ってくる声があった。


『そう、慌てるな。我の声に気をやられなかった褒美だ。直々に出向こうではないか。』


 偉そうな感じだな。だいぶ上から目線で話しかけられていい気分はしない。椿を見てもムッとした顔をしている。多分同じ思いだろう。


 十秒程経ち、リサちゃんの前には、まるで最初からそこにいたかのように現れた老人がいた。

 厳ついじいさん――それがこの老人の印象だ。しわが深く刻まれた顔には、白い立派なあごひげが蓄えられており、厳格な雰囲気を醸し出している。


 身長もこの中で誰より高い為、威圧感もある。




「申し訳ございません。貴方はどちら様でしょうか?」

「我が姿を現してもそのニヤついた顔は変わらぬか、大した者よ。我の名はルイズ・ドルマーニ、妖精の王ぞ。」



「「「――――ッ!?」」」



 俺はもちろん、椿とリサちゃんも目を見開いて驚いている。

 急ぎ、頭を下げる。

 俺に続いて二人も頭を下げた気配がした。


 とりあえず急いで頭を下げたが、どうしようか……。だって、ねぇ?王様だぞ?大物すぎだろ。


「よい、面を上げよ。」

「失礼します。」


 信じがたいが、この目の前の存在が出す威圧感や、纏う空気が本物だと語っている。


「妖精王、質問をよろしいでしょうか?」


 自分でも声が震えているのが分かる。

 妖精王は「許す。申してみよ」と言った。


「はい。なぜこのような場にいらしたのでしょうか?」

「昔の約束よ。そこの娘が生まれる時に交わしたのだ。」


 ………んん?国を統べる王がただの少女の為に?そんなわけないよな。てことは……。


「失礼ですがそこにいるリサちゃんはもしかして王族ですか?」



「え?」



 それを聞き、リサちゃんが驚きの声を上げる。


「そうだ、認めたくはないがこの混ざり者は我の孫よ。」

「「………。」」


 リサちゃんと椿が言葉を発せない程驚いて固まっている。

 まさか孫とはねぇ……。それは予想外だった、遠い親戚とかかなぁと思っていたがまさか直系だったとはね。妖精王が出てくるわけだ。


「ほう……。」


 妖精王が俺の方をジロッと見てそう溢した。


「あの………私に何かございますでしょうか?」


 めっちゃ怖いんですけど……。


「皆、我に驚いて居るが、我はお主の方が気になるがな。何者だ?我が現れても平静を保てるその胆力。かと言って強いわけではない、むしろ生きていればすぐに淘汰されるほど弱かろう。

 これまで観察しておったが、生で見ると特に面白い。すべてがチグハグで、中途半端で、混ざり者より混ざっておる。

 ………それにこれは……認めるのは癪だが、我でも厳しい程の呪いがかかっておるな。」


「はぁ……。」


 これは……褒めてるんだろうか?いやぁこれはほめてるわけじゃなさそうだよな。

 えっと、チグハグで?中途半端で?なんか混ざってて?呪われてる? …………俺すごい言われようだ、ここだけ見れば褒められてないよな。


「まぁよい。いづれ話し合う機会がある。それよりも、お主に借りを返しておこうか。」


 借りって何のことですか――そう言おうとした瞬間、下からの強い光に包まれる。

 妖精王を見るとこちらに手を伸ばしていた。魔力の流れから見ても、これは妖精王がやっていることらしい。


女神(フレイヤ)の祝福――第一段階解除を確認。】

【能力の一部分がロスト。】

問題(エラー)。強制解除を確認。】

解決(クリア)。原因判明。()()()()と判断。解除を続行。】

【他次元空間に保存しているバイク――H1F型500ss マッハ3――がロスト。】

【魔核の制限を解除。】

【残り女神の祝福――4/5。】


 脳内に誰のものかわからない女性の声が聴こえた。

 その声は抑揚が無く、機械的だった。






 #





「やぁ初めまして。」


 目の前には白髪の少年が椅子に座っていた。

 誰だこいつ。


「僕のことはどうでもいいんだ。」


 今気づいたが、ここはさっきまでいた部屋じゃない。女神にあった部屋に近い空気を感じる。

 それに、さっきまで一緒にいたリサちゃん達もいない。……転移した?


「ここは、君の魂の奥さ。」


「魂の奥?」と声に出そうとしたが発せなかった。よく見たら俺の身体すらない。


「不完全に呼ばれてしまったからね、ここにあるのは意識だけだよ。」


 なるほど。それなら納得だ。

 それにしても魂の奥か………フィクションでよく見る心の中とかと同じことかな。


「その認識でいいよ。今は詳しく話している時間はないんだ。」


 少年はニヤケ面のまま申し訳なさそうに言った。


「君は女神の祝福を解除した。おめでとう。だけどこれは女神にとってはまずい事態なんだ。時期尚早というやつさ。結論を言うと君はこのままだと死んでしまう。魔核の魔力に対して魔力回路が育ってないんだ。

 今は妖精王が魔力を放出してくれてるから何とかなってるけど、妖精王も限界が近い。」


 俺が生き残る(すべ)はあるんだろうか。

 少年は、ふっ、と優しい目をしながら笑い、


「あるよ、一つだけ。」


 どうやら俺はまだ生きれるらしい。


「死ぬほど痛いけどね。」


 頑張ります。


 少年はニヤケ面を崩し真面目な顔をして、俺に生き残る方法を伝授した。




 #



「こうなるか……」


 妖精王――ルイズは納得したように呟いた。

 目の前にはうつ伏せで倒れているリクがいる。リクの体からは、空間が揺らぐ程の魔力が漏れ出ていた。その様子に椿とリサは驚いている。

 その反面、ルイズに驚いた様子は見られない。と、言うのも、ルイズはこの呪い(女神の祝福)を解呪した場合に起こる事を複数予想していたのだ。

 そしてその中の一つが当たったというだけである。


「あの……。」


 リサがおそるおそるルイズに声をかける。


「リクさんに、何をしたの、です、か?」

「彼奴が呪いにかけられていたのでな。それを解いてやったまでだ。

 ………ちと側を離れる。おい、サクラの小僧、お主がこの混ざり者を再び襲わんとも限らん。縛るぞ。」

「え?」


 椿の返事を聞く前にルイズが魔法で光の輪を出し、椿の手足を縛った。


「あとで解いてやる。暫しそうしておれ。」


 そういってルイズはリクのそばに行き、肩に手を当てる。

 後ろでは椿が叫びながらジタバタしているが気にするものはいない。


(うぅむ………これはなかなか……。)


 ルイズが少しだけ眉を寄せ、険しい顔を作った。


(メアリを呼んだ方がいいかもしれぬな。)


「メアリ、我一人だと厳しいやもしれん。」


 独りでにそう呟くと、ルイズが現れたときと同じようにして、女性が現れた。見た目は青髪青目の綺麗なお姉さんだが、慈愛に溢れている優し気な笑みと母性を象徴するかのようにたわわに実った双実もあり、母性の塊のような存在に見れた。


「ルイちゃん、また考えなしにしたの?」


 そんなお姉さんがあらまぁ、と呆れながらルイズに聞いた。


「予想以上だっただけだ。あとルイちゃんと呼ぶな、メアリ。」


 顔をぷいっ、とメアリから背けながらぶっきらぼうに言った。まんま拗ねた子供である。

 椿とリサはメアリが来てからのルイズの変容ぶりに呆気にとられながらも成り行きを見守っている。


「手伝えばいいのね?」

「あぁ。」


 短い掛け合いの後、二人は無言で作業を始めた。

 その様子を不安げに見ていたリサがメアリを見て、何かに気づいた。


「お母さん?」


 その呟きに、メアリは笑みを深くし、


「ごめんなさいね、私はリサちゃんのお母さんではないの。詳しい話はこの子をどうにかしてからね。」

「は……い。」

「メアリ、そろそろ無駄話できる余裕はなくなるぞ。」


 ルイズの言う通り、リクから発せられる魔力量は予想より多く、彼らが施している応急処置も、彼らの限界が近い為困難になって来ていた。


(このままだとじり貧だな……。早く起きてどうにかしてくれればいいが………。)


 ルイズは目の前で意識を失っている青年に目を向けながらそう願った。




 #


「お疲れ様。」


 思っていたよりも長い時間説明された。

 理解は出来たがそれを出来るか五分五分ってところだ。


「必ず成功させないと君も君の周りの人達……妖精王以外は死ぬだろうね」


 頑張ります。


「気張りなよ。じゃあね。」


 その言葉の後、意識が浮上していく感覚と共にその部屋を後にした。



【魔力回路】


【魔力】の項目で少し触れたが生物の体には【魔力回路】と呼ばれる器官がある。

【魔核】から生成される魔力はこの魔力回路を通っている。


これは種族によって発達具合が大幅に違い、獣人等は生きていく上で最低限の魔力が流れているだけで操ることも出来ない。

人間は流れる魔力の量の調節。

魔族はその上位互換で、人間よりもそれが上手い。

だがこれは一般的にと言う話であり個人差はある。魔族より上手い人間もいる。


魔法使いと呼ばれるものはこの魔力回路を操作出来る者だ。


先も触れたがこの世界の生き物は全てに魔力回路が備わっており意志に関係なく微々たる魔力が流れている。

更に、それよりも微々たる魔力が魔力回路に沿って汗穴のような機能を持つ穴から魔力が溢れている。

魔法使いは意識してそれを止めることが出来る。


また【魔力回路】は使用することで成長する。ただし、肉体年齢が大体二十歳で成長は止まる。


著 ティナ・テレーゼ

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