-プロローグ-
まず最初にあったのは『退屈』だった。
先代から受け継いだ魔獣や妖魔の類は、物心つく前からすでにダンジョン内に配置されていた。
たまに困るのは、自分から溢れ出た妖気を吸い過ぎて、魔虫と化した虫共が、不意に飛び出して驚かせてくる程度だ。
――――――もちろん「きゃあ」などと乙女のような悲鳴などあげていない。見た目は乙女だが、私は魔王なのだ。配下の手前、毅然と対応出来ている筈だ――――――
毎日繰り返されるのは、より良い(悪い?)魔王を目指すべく、家庭教師役の執事から受ける座学・実技を交えた『授業』と言う名の悪夢・・・。
この先代がこしらえた最強と言うべき迷宮の最奥、この玉座までは、これまで冒険者で辿り着いた者は居ない。せめてせっかく習得した魔法や剣技を披露する機会もあったのなら、と思って見るが、不甲斐ない冒険者共は今日もやってくる気配は無い。
それなら此方から逢いに行ってやろう、と言う結論に至った。
破壊や恐怖を撒き散らすのではなく、むしろ冒険者共を応援して手助けやろう。そして迷宮の最奥にてラスボスたる私と剣を交えるのだ。
迷宮の守護者たる配下の魔物共からはブーイングがあったが、これこそ鍛えなおす良い機会だと説き伏せ、魔王による魔王の為の『冒険者応援プロジェクト』がスタートしたのだった。