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神は現代に必要ですか?  作者: ヒトカラケ
まじわりのはじまり
3/13

母は強し

 小さい頃から、よく注意された。見ないように。言わないように。バレないように。嘘をつかないように。自然に。普通に。振る舞いなさい、と。どれだけ言っても信じてくれなかった先生やクラスメイトから、嘘つきと言われて怒られた。三者面談で親の前で人格否定されたこともあった。救いだったのは、それに親が怒ってくれたこと。もし、あそこで「そうですか」と精神科に連れて行かれたら、僕は心が折れていたと思う。

 そんなわけで、生まれつき()()()()のを見れる体質だった僕は、今現在も進行形でたまに見ることがある。たまにぼーっとしてたり、何かの音に怯える姿から過去の知り合いから噂が回って、孤立したこともあった。でも、その中で、気にせずに接してくれたのがあの3人と幼馴染の浅斗なんだ。それに感謝しつつも、見えなくなることを願わなかった日はない。


 帰り道の途中で通る、公共の公園に首をもたげて滑り台に腰掛けている女性らしきヒトがいた。横目でそれを見てからは一瞬で目をそらし、気にしないふりをし続ける。バレないだろうか。浅斗は気がついてないだろうか。そんな臆病さに嫌気がさしながらも、笑ってごまかす。


「女将!邪魔していいか?」

「あら、浅斗くんじゃない。久しぶりね〜。ささ、どうぞお入りなさいな」


 営業終了の看板がかかっている扉を遠慮なく開け、大きな声で呼び出された母さんは、奥からひょっこり顔を出して浅斗を歓迎した。笑顔で引き上げると、階段を上がって僕の部屋に押し込む。


「元気してた?お腹空いてない?もう、来るなら前以て言ってくれてたら美味しいもの作ってたのに」


 甲斐甲斐しく浅斗を歓迎していた母さんは、僕の方を振り向いて少し拗ねたように文句を言ってきた。


「しょうがないって。急に決めたんだから」

「まぁ、いつきても歓迎なのだけれどねっ」

「いつも世話んなってます。ちょいと泊まらせてもらおうと思って急に来ちまいました」

「あらあら、そんなの気にすることじゃないわよっ。ちょっと待っててね、今賄いのもの持って来るから」

「うっす!!楽しみにしてます!」


 やだ嬉しいわぁ、とニコニコしながら部屋から出て言った母さんを見送りながら、二人の豹変さに見ているこっちが気後れしてしまったじゃないか。いつもの素は何処へやら。


「全く……。いつもそれくらい行儀よくしてれば学校からも注意されることなんてないんじゃないの?」

「うるっせぇな。しょうがねぇだろ、俺からは問題起こしてねぇよ!」

「それもそっか。あ、学校、明日どうする?」

「んー。朝早くに忍び込んで服交換してから行くわ」


 自分の家に忍び込むって……どうなんだろうか。でも、今までもこういうことはあったし、尊さんも僕の家にいるってことは知っているだろうから、問題ないかも。


「じゃ、ご飯持って来るよ」

「あ、俺も手伝うぜ」

「いいよ、二階はそんなに広くないから」

「そうか、サンキューな」

「はいよ」


 一階の店造りと違ってなるべく経費削減を意識した二階は、人が一人通れるくらいの通路に部屋が三つとあとはトイレと浴室くらいしかない。階段を降りると、厨房には母さんしかいなかった。雇いの人は帰ったんだろうか。


「ああ、取りにきれくれたの?ありがとう」

「うん、ご飯入れるね」

「そこにお茶碗あるから」

「わかった」


 余った素材を煮込んでいる母さんと反対側に2人ぶんのお茶碗が置かれている。それを手にとって近くの炊飯器からご飯をよそった。突然、背後からいつもよりトーンの低い、真剣味を帯びた声がかけられる。


「今日は、何か見た?」

「……少しだけ」

「そう、何かあったらちゃんと言うのよ?」

「わかってるって」


 帰ってから聞かれるこの質問は、僕が昔幽霊と目があって怪我を負わされたことが原因だと思う。足にまとわり憑かれて、その翌日に川遊びの最中に溺れかけたんだ。過保護だとも思うけど、心配してくれることに少し嬉しさが湧いて来るから、まだまだ子供じみてるなと苦笑してしまう。


「さて、と。これ食べたらお風呂はいって、寝るときはちゃんとタオルかけなさいよ?」

「はいはい」

「はい、は一回!」

「はーい」

「もう」


 深夜を回るまでゲーム対戦で盛り上がっていた僕たちは、結局「やかましい!」と母に蹴破られるまで静かになることはなかった。急いで寝支度をして布団に潜り込んだのはいいけど……寝れない。


 ……。

 …。

 。


 イビキがうるさくて寝れん!!



__________________




 今日もまた暑さに打ちひしがれながら、カフェを後にした。きょうはちゃんと時間間に合ってるからね?そんなに睨まないでよ、先生。


 遅刻が常習犯化している僕達には鋭い視線を向けるくせに、他の子には優しいとか詐欺……はい、自業自得ですね、ごめんなさい。


 駐輪場に自転車を停めに裏庭へいくと、目の前から浅斗が走ってこちらへ向かってくる。あのガタイで走ると、イヤに威圧を感じて皆捌()けていくんだよね。


「よう!」

「おはよ。あれ?もう行ってきたの?」

「おうよ!誰とも会うことなかったぜ」


 すげぇだろ、と()張る浅斗。あれ、なんだか体が大きいだけの子供に見えてきたぞ。それを伝えると、ムキー、と猿化した。相変わらず喜怒哀楽激しいね。僕はもう、この暑さで疲れきったよ。


 さて、毎度の事ながら、廊下を通る度にヒソヒソと遠巻きにされる僕らは、連絡通路を独占していた。といっても、通るだけなんだけどね。いい加減、みんなもそのヒソヒソ飽きないのかな。かれこれ一年以上はやってるよね?


だけど、僕の教室手前までくると、その密やかな声がだんだん大きくなっていった。しかも、みんなが窓付近を取り囲んで何やら騒いでいる。その声は、好奇心、不安、驚愕、不信。どうやら、良い知らせではなさそう。


「何かあったのかな」

「だろぉな。オレらも見てみようぜ!」


さすが、本能のままに動きますな。僕もなんだけどさ。


「あ、おはよ。何かあったの?」

「ん?おお、やっと来…!」

「はよー。…あ」

「おーっす……?!」


 いつもの3人を見つけて割り込むと、いつも通り軽く挨拶してくれる。しかし、その語尾は言葉が喉に詰まったように途切れてしまった。うん、急に浅斗いたらびっくりするよね。雰囲気あるから。わかるよ。


「…す、周防(すおう)もおはよう」

「……はよー」

「……おす」

「よう…」


 ……。気まずい。非常に気まずい!なんで挨拶で微妙な空気になるのか。神様、せめて浅斗のド迫力顔を優しくして欲しかったよ。浅斗も真顔でいないで笑う!一見、動じていないように見えるけど、実際は緊張してるんじゃないかな。ガチガチだし。あ、なんか真顔を見てると面白くなってきた。


「ふっ…」


 思わず息が漏れてしまった。咄嗟に口元を抑えるが、代わりに肩が揺れてしまう。4人からはジト目で見られたが、時間あれば仲良くなれるんじゃないだろうか。


 ようやく、笑いを腹の底に沈めると、周りの喧騒を思い出した。


「あ、そう言えば、何かあったの?」

「お前ね…。まあいいや」

「窓が割られたんよー」

「え、なんで!」

「知らねぇ。それを今調べてるらしいけどよ、朝来た時からこうだから、昨日の夜不審者でも入ったんじゃね?」

「へぇ」

「んじゃ、オレもう行くわ」

「あ、うん。今日も頑張れ」

「おう」


 浅斗はこう見えて剣道部だ。しかも、全国大会まで行ったことがある実力者でもある。だから、主将を務める彼は、意外とやることがあるのだとか。顧問の先生や他の部員は、結構浅斗といるところをよく見る。尊敬の目で見られるのはカッコいいな、とよく思うよ。


「これこれ、あんまり、近寄るでない。授業始まるんじゃ、教室入りんしゃい」

「あ、シゲ爺」

「ちょっと危ないよ?」

「大丈夫じゃぁ。こう見えて頑丈での」


 プルプル震える老父が道を割ったかと思えば、まさかのシゲ爺。いやいや、そっちの方が危ないから!と逆に生徒から世話を焼かれるおじいちゃんは、今日もマイペースです。見てるだけで癒される爺さんだが、怒ると震えるほど怖いらしいので、怒らせないように気をつけよう。震えるのがどっちかわからないけども。


 ところで、割れた窓は二つだったらしい。それは僕たちの教室の真ん前にある。そして、その破片は、ろう神散らばって輝いていた。豆粒ほどの大きさにされた、それはもう粉々と言っていい具合の粉砕加減だ。こんな割り方できるのも変だけど、もっと不思議なのは、破片が内側に落ちてるってこと。で、ここ、3階なんだよね。


「外から割らなきゃ、こうはならないよな」

「でもさでもさ、宙に浮いてわれるわけないよね?」

「野球部のボールが当たったとか?」

「いやいや、グラウンド反対側じゃない」


 と、まあ。こんな具合に噂が広まって言って、放課後になる頃には全クラスに行き渡るほどだった。いろんな説が沸き起こって、ツイッテー上にも流れている。3人はかなり気になっていたようだけど、浅斗はあんまり興味がなさそうだった。それよりも、今日の晩御飯の方が気になるそうです。相変わらずで何より。


 それよりも。


「……なんで今日もいるの?」

「いいだろ。家出中なんだから」

「いつから家でに…」

「昨日から。オレはあいつらが諦めてくれるまで帰らねぇことにした」

「その年で今頃反抗期!?」

「誰が反抗期だっ!いいから寝ろ!」


 ちょっと!枕投げるの禁止!

 顔面に当たった仕返しに、投げられた浅斗の枕を部屋の隅に置き去りにしてやった。すると、僕が頭を預けていた枕が引き抜かれて布団に頭を打ち付ける。びっくりして首を吊りそうになった。


「っ!?」

「ヘヘッ」

「こんの、悪ガキ!」

「おっと」


 枕を瞬時に取り返して叩きつけるも、寝ながらの体制でかわされた。くそっ。次は当てる。

 お互い、やり返しているうちにだんだんヒートアップしてきて、バフバフと枕の音が外に漏れ始める。途端に、ダダダダっと怒涛の勢いで何かが扉に近づいて来る音がし、まずい!と思ったがもう遅かった。


「うるっせぇな、静かに寝れないのかガキども!!!」

「「ひっ!ごめんなさいっ!」」


 扉を蹴破った母さんに、僕らはゲンコツをもらってすごすごと就寝した。

おかん強いよね…

ワイは勝てたことがないです。

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