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レンジ パパはかっこいいだろう!



 レンジは背負った日本刀の鞘を左手に持ち、右手で柄を掴む。ミチロから視線を逸らすことはしない。ミチロの目が細められた。


「今日こそ勝負をつけようじゃないか」


 ミチロは低い唸り声をあげた。


「科学の光をその身に浴びてッ! 無敵の正義の超人にッ!!」


 そう叫ぶと同時に青年の全身の筋肉がありえないほど盛り上がる。肌の色が緑に変化した。一度見ているが、やはりその異常な変化に驚きを隠せない。


「やっぱりすげえ」


 レンジは姿勢のよいゴリラのような姿に呟いた。ミチロは天に向かって大きく吠える。


「うおおおおおおお」

「こっちから行かせてもらうぞ」


 レンジはミチロとの間合いを詰めると、右手で一気に刀を引き抜いた。その勢いのまま、ミチロに襲い掛かる。渾身の一刀はミチロの太い腕によって阻まれた。前回と同じくミチロには余裕の色が見える。


「相変わらず、硬っえ」


 この刀で男の腕につけられるのは多少の切り傷である。すっと刀を引けば、ミチロの腕から血が滴った。


「そのようなもの、効かないな」


 ミチロについた傷がすっと消えた。レンジは眉を寄せた。前回は傷が治るということはなかったはずだ。しかもデーモンコアも今は使っていない。


 思い当たるのは先ほどみずきが飲ませた水。


「だが、これも特注だぜ」


 左手に持っていた鞘を捨てると、柄についていた布を外した。今日持ってきた刀は新タント(ニュータント)用に開発中のものだ。まだ実験途中であったが、タケヒコに持って行くように言われて持ってきていた。どうやらタケヒコはここでミチロに会うことになると睨んでいたようだ。

 用意周到なことで、と幼馴染の冷静な顔を思い浮かべながら内心ぼやく。

 開発中の刀を両手で構えなおした。


「もう一度だ!」


 ミチロに再び上段から刀を振り下ろした。ミチロは再び自分の左腕でそれを受け止める。


「何!」


 ミチロの方が今度は驚きに目を見開いた。刀の触れ合たところが焼けるように痛む。じゅうっと嫌な音がした。慌てて距離を保とうとミチロは刀ごと押し返す。


「あれ、思ったより効果がない?」


 レンジは首を傾げた。


「ふん、俺がどれほどの実験に使われたか知らないだろうな」

「まさか」


 嫌な予感がした。マドカ達によって人体実験をされたことでもしかしたら……。


 考えているうちに、いつの間にか間合いが詰められた。

 ミチロの拳がまともに腹に入った。慌てて腹筋に力を入れるが、それ以上の力で殴られ後ろに吹っ飛んだ。がたんと激しい音をさせて後ろに合った物にぶつかる。背中が圧迫されて痛みが襲った。


「うぐ……」


 辛うじて意識はとりとめたが、まずいことにかなりのダメージを食らってしまった。レンジは視線を走らせ自分の刀を探す。手を伸ばし、落ちている刀の柄を掴んだ。掴んだとたんに腕に激痛が走る。どうやら腕にも傷を負ってしまったようだ。


「くそ……」

「これで最後だ」


 ミチロが低い声で宣告した。


「レンジ!」


 ふわりとレンジに抱き着くのはみずきだ。レンジは目を見開き、みずきを見つめた。大きな印象的な目が彼を真剣に見つめてくる。驚きに息を飲んだ。


「バカ、下がっていろ!」

「これ飲んで!」


 ちっとも人の話を聞かないみずきに苛立ちを感じながら、さらに怒鳴ろうと口を開いた。そこへみずきが遠慮なく瓶を突っ込んできた。ぐいっと中身を流し込まれた。突然流れてきた水に、ごほごほごと咽る。


「おまえ、何を……」

「ほら、効いてきた。じゃあ続き頑張って」


 みずきは訳の分からないことを言うと、あっさりと離れていく。


「あ?」


 体の中から何かがこみあげてきた。熱く突き上げるような何かに戸惑いながら、自分の中に力が湧いてきたのが分かった。ぶわっと広がる。痛みが急激になくなり、怪我もするすると治っていく。


「なんだ、これは」


 予想外の出来事に思わず呟いた。この水を飲んだミチロが復活するわけだと心のどこかで納得する。


「これね、ある神社の聖水なの。日本でも最強の願いを叶える水よ。巫女の祈りが込められているんだから」


 嬉しそうに説明するみずきを見た。レンジは訳が分からないという顔をしている。


「はああああ」


 ミチロの気合の入った咆哮にレンジは意識をみずきから切り替える。まずは目の前にいる敵を倒してからだ。

 再びレンジは刀を構えた。ミチロから注意を逸らすことなく見据えた。


 レンジは襲い掛かるミチロに刀を斬りつけた。




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