エピローグ とあるネカマヒーラーの冒険
本日2度目の更新です。
今日も一段と空の青いベルモンテ。水しぶきが煌めく噴水広場の隅の壁に寄りかかり、会話しているプレイヤー達の姿があった。
「お久しぶりですね、師匠!」
「久しぶり、かれん。元気してた?」
桃色の長髪をなびかせ、ファンシーな格好をしたホビティの少女。そして黒髪で剣と盾を持ったヒュームの青年。
「元気でしたよー! ところでメールが来たから分かりましたけど、なんで師匠は男キャラになっているのです?」
「ああ、これはちょっとした気分転換みたいなものでね。相方と相談して試しにやってみようってことになったんだ」
初心者装備に身を包んだ青年はそう答える。これではどちらが師匠か分からないな、と苦笑する。
「2年もやってたらそうなりますよねー。私も新キャラ作ろっかなー」
「と、どうやら相方が来たみたいだ」
青年の隣でアバターの実体化が始まる。誰かがログインしてきたようであった。
「お、レオンさんですね! じゃあ私はレンちゃんやティーナさんと遊んでこようかな」
「気を使わせちゃったみたいで悪いね。積もる話はまた今度ね、かれん」
青年が申し訳なさそうに少女に頭を下げる。
「良いんですよー。久々のカノジョとのネトゲライフを邪魔するわけには行きません! それではまた!」
そう言って少女が去ってゆく。カノジョではないんだけど……と青年が苦笑していると、アバターの実体化が完了した。
「お待たせしました」
「僕もさっきログインしたとこ。僕の格好もだけど、なんだか変な感じだね」
出現したヒュームの少女に対し、青年がぎこちなく告げる。少女も同じ感想なのか、不自然な笑みを返した。
「やっぱり見慣れたアバターじゃないと違和感がありますね。どうします?」
「ま、今日はこのままで良いんじゃない? たまにはアリかなって」
「そうですね。ではまずは……やっぱり森に行きます?」
「だね。彷徨いの森が、僕たちのスタートにぴったりだ」
お互いに理解し合ったように、言葉少なに会話が成立する。青年と少女はいつかのように、少女と青年がそうだったように、握手をして、PTを組む。
きっと今日も楽しい冒険になるだろう、彼らはそう思って歩き始めるのであった。
これにてこの物語は完結です。
処女作のため至らない点が多々あったかとは思いますが、感想、評価、ブックマークなど頂けると幸いです。




