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銀の魔導外伝 帰るべき場所  作者: 雪仲 響


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 明け方馬車を走らせながらあくびをする陽太と、隣でセリアがウトウトと居眠りしながら陽太に頭を預けていた。

(ふぁぁ、まだ眠いな、湯浴みしてるときにセリアが来るから緊張して余り寝れなかったよ、明るいのは良いんだけど少し大胆というかセリアは意識していないのかな、それとも誘って……るのかな、僕も男だし長い間一緒だからそういう……したいというか今年十五だもん、女の子の身体に興味がないわけじゃないだから)

 ちらりと横目でセリアを見るが何事もないように目を瞑っている。

(はぁ何か、試されてるみたいだ、結婚するんだし別に構わないって言えばいいんだよなぁ、けど初めてだし……)

 勿論お互い初めてな訳だが、やはり男としてここは引っ張っていかないわけにはならないと考えると緊張してなかなか手が出なかった。

 もやもやした考えのまま馬車は分かれ道に来た。

(えっとどっちでもアルステルには行けるんだよね、右は海岸で左は山越えだったかな)

 陽太は考えた末、左道に入った。

 そのまま森の中を突き進むと少しずつ木々の隙間から視界が開けてきた。

 大きな川が見えてその向こうににも平原が広がっている。

 目の前の橋を渡り緩やかなカーブを右に行くと広い街道に変わり検問所が見えてきた。

 そこが国境でミーハマットを出ると道の舗装も悪くなり、大きな石や凸凹道になってきて、速度が出せずにゆっくりと進むしかなかった。

 馬車の揺れで起きたセリアに挨拶すると、途中で止まって休憩をした。

 原っぱに座って昼食を取り、昨日買ってきていた食べ物を取り出して草原の風を感じながら食べた。

「よく寝てたね、次は僕が一眠りするよ」

「うん、良いよ」

 食事を終えて寝不足と重なって眠くなった陽太は草の上に横になり昼寝をした。

 頬に流れる優しい風が撫でられているようで気持ち良く寝ることが出来た。

 深く眠ったせいか夢を見ることも無く、気がついたときはすっきりと目覚めると陽太の胸を枕にセリアも眠っていた。

 そのまま暫く空を眺めながら、

(青い空は何処でも同じだ、ゆっくりと進む雲は何があっても歩みを止めないで確実に前に進むんだ、僕も前に向かって進んでいればいずれ……)

 元の世界の空と変わらない景色が陽太を迷わせる。

(見えない先には何が待っているのだろう、魔道士になった先は……セリアと結婚したその先は……、僕はこのままずっとここで生きていくのだろうか、そう僕は望むのだろうか、帰る機会が出来たときこの世界から出て行くのか、どちらの世界が僕にとって良いのかな)

 ブルルルッとポムの鼻息に意識が戻される。

「さていこうかな、セリア起きて」

 肩を揺らして優しく声を掛けた。

 セリアは一人で起きてることは少なく、陽太が寝てしまうと起きたばかりでもまたすぐに一緒に寝てしまう。

 陽太が起きるといつも隣でセリアが寝ていた。

 セリアは母親を亡くしてから今日まで一人で行動することが少なく、つねに陽太の側にいることが普通になっていた。

 起きたセリアと馬車に乗り歩を進める。

 途中、山道へ行く街道と山肌に沿って西に行く街道があったが、陽太は山道へと曲がった。

 ミーハマットを抜けてアルステルの領内までの間には山岳地帯となっていて、大きな連山が遙か西の方まで山肌が続いている。

「この山を越えないとアルステルには入れないよ、どの位掛かるのかな、一応寒さ対策で毛布は多めに買ってあるんだけど」

「あそこ、白くなってる」

「雪があるんだね多分万年雪かな、まだこんなに暑いから冬ではないけど標高がかなりありそうだし、寒くなるかもね」

「ヨータまた分かんない言葉ばっかり」

「山が高いから上の方は寒いよって」

「なんで上は寒いの?」

「んと、高い所に行くと寒くなるの」

「なんで高いと寒くなるの?」

「なんて言えば分かるのかな、まぁ言うより行けば分かるよ」

 セリアに分かるような説明は無理だろうなと、実際に体験させた方が良いと思った。

 とはいえ、この山の山頂に行くまでは、まだかなりの日数が掛かりそうな距離になるだろうと思われた。

「セリアは雪って知ってるの?」

「雪ってなに?」

(まぁ大体分かってたけど、南国育ちだから見たこと無いか)

「氷はわか……らないよね」

「……うん」

「そっか、じゃあ寒い所も初めて行くんだね、きっと驚くと思うよ、向こうの寒いとは又違う感覚だしね」

「だって私、ドゥーラントから出たことないもん……」

 セリアが悲しそうな顔をしたので陽太は慌てた。

「そうだったね、この旅はセリアにとっては良い経験になるかもね」

「ヨータだって南の国にいたのに、どうして色んな事知ってるの?」

「ま、まぁ……昔にね」

「ずっと南の国にいたって、お爺さんといたって言ってたよ」

 セリアからの鋭いつっこみに陽太は焦った。

「いや、オルサから聞いた話なんだけどね……」

「じゃあヨータも私と一緒だ、初めてだね」

「そ、そうだね、セリアと同じだね」

 陽太は言葉を選びながら話した。

(人に教えるのは大変だな)

 陽太も年齢的にまだ学校に行ってる年齢で、陽太自身も勉強しなければ分からないことだらけだったが、ここでは今の知識でもかなりの学者レベルではあった。

(変に物知りだと魔女狩りみたいなことにならないかな、魔法使えるんだけどな)

 時折すれ違う行商に挨拶をしながら旅をしていると時間は夕暮れ時になってきていた。

「今日はあそこで野宿しようか」

 街道を少し外れた所に大きな岩があった、そこの岩に隠れるようにして馬車を止めた。

 一応ここはどの国にも属さない無法地帯だったので、念のため野宿するときは見つからないようにすると決めていた。

 日が沈む前にたき火を囲んで食事にした。

 持ってきたお菓子はセリアが馬車の上でつまんでいたらもう半分に減っていた。

「もっとゆっくり食べないと山に入る前に無くなっちゃうよ」

「だって美味しかったんだもん」

「しらないよ、お菓子が欲しいって言っても町があるかどうかも分かんないんだから、ゆっくり食べないと」

「ぶう」

 食後のひとときはセリアにとっては甘えの時間で、寝るまで陽太にくっついて頭を撫でて貰うのが日課になっていた。

 陽太の足に挟まれたセリアはもたれ掛け、陽太の胸の中で目を閉じている。

「なんかここがセリアの定位置になっちゃったな」

 上からセリアを見ると、か細い体をだらりとのばしていて陽太でも包み込めるぐらい小さかった。

(僕が大きくなったのかな、自分じゃ分からなかったけど少し背が伸びたかも)

 知らずの内に成長している自分に気づいた。

(もう小さかったあの頃じゃなくなってたのか、全然知らなかった、ここの人は皆体が大きいから気付かなかったな)

「ヨータ」

「ん、なに?」

 セリアが顔を近づけてくる、こういうときはキスの合図だった。

 陽太はキスをするとセリアを見て、

「どうしたの、最近よく甘えてくるようになったね」

 と、言った。

「…………」

 セリアの方は真剣な表情で体の向きを変えて陽太に腕を回して抱きついてくる。

「ど……どうしたの、何かあった?」

 セリアがきつく力を入れて離れようとしなかった。

「痛いよセリア」

 陽太はセリアの腕を離して彼女の顔を見ると、セリアは目に涙を浮かべて泣いていた。

 声には出していなかったがあふれ出る涙が頬を伝う。

「どうしたの、何がそんなに悲しいの?」

「だって、もうすぐヨータと別れないといけないんでしょ、……別れたくない」

「それで最近よく甘えるようになったんだね、悲しい事なんてないでしょう、結婚するって言ったんだし、少しの間だけだよ」

「でも……寂しい」

 セリアは一人ぼっちになる寂しさと不安で、どうやって生きていけば良いのか分からずにいた。

 セリアはこの旅が終わらない事を願ったが、それも虚しく一日が刻々と過ぎていくたびに胸の鼓動が大きくなっていく不安にさいなまれていた。

 その行為が陽太に甘える結果に繋がっていたのだが、そうとは知らず陽太はセリアが誘ってるのではないかと思い込んでいた。

「ちゃんとした所で安くても生活出来るようになるまでは一緒にいるから心配しないで」

 けれどもセリアはいつかは一人で生活しなければならない不安は拭いきず、表情はまだ硬かった。

 陽太はぎゅっと抱きしめて落ち着くまで何度もキスをしていた。

(寂しいかったのか、セリアの気持ちを考えてなかったな、ちゃんと住める場所が出来れば安心して学校に行けるってぐらいしか思ってなかった、何も文句も言わずに用も無い土地に連れてこられたんだ、怖かったんだね)

 魔道士学校で何年通うのかも知らず、その間セリアは一人で陽太を待たなければならない、その間のセリアの気持ちを考えていなかったことに気づいた。

 何もかも漠然とした目的と、しなければならない事とでかなりのズレが陽太の中で生じてかみ合っていなかった。

(アルステルで一度、住みやすいか町を見てみよう)

 その夜はセリアが不安がらないように抱き合い眠るまで見守っていた。

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