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主人公とヒロインが出会う話
日差しいい散歩日和りの空。
一人の少女が、一人の少女だけがこの大草原にぽつんと立っている。
(何故だ何故だ何故だ何故だ何故だああああ!!!)
「あたまがキンキンしますぅ…。」
僕は今、猛烈に後悔している。
何をだって?異世界転生なぞした事をだ!
いや、異世界チートの前に障害があることはざらだった。
しかし、これはないだろう。
(なんで、僕の精神がこんなガキの躰に入っているんだ!)
「わ、わたしだって分かりませんよ。神さまもそんなこと言ってなかったし……。
あと、ガキじゃないです。桃花です。」
いくら頭の悪い少女を助けることが出来なかったとはいえ、その少女と一緒に転生してきて、
しかも融合してしまうなんて。
その上気に入らないのは、この少女の精神もあるせいか体の主導権が僕にないことと、コイツの言う神さまとやらに僕が会っていないことだ!
普通は主人公=僕が出会う物だろう!常識的に考えて!
「そ、そんな事言われたって……」
しばらくの沈黙。
そこで僕は気が付いた。この桃花という少女が神さまに会っているというのなら、
この小娘が異世界転生の定番、チート能力を持っているのではないのだろうか。
(おい小娘、お前なにかすごいこと出来ないか。)
「えっと、理科が得意です。」
(違う!!)
理解の遅い子供め。
(そういうことを聞いているんじゃない。
なんかすごい魔法が撃てたり、大木を指一本で倒したり、そういう凄いことだよ!)
「ええっ……そういうのはもう卒業しました……。」
何っ、僕は高校まで続いたというのに。
(お前の言う神さまは、お伽噺の様な世界と言ったんだろ。
だったら、魔法があってもいいはずじゃないか。)
「確かにそうですけど……。」
ええい、なにを渋っているんだ。
(いいから叫んでみろ!この大地を深紅に染め世界を絶望で満たせ、ギガファイアだ!)
「…………え、えぇ~。」
(なんだその反応は!返事はサー!復唱しろ!この大地を深紅に染め世界を絶望で満たせ、ギガファイアー!)
「サ、サー!このだいちをしんくにそめせかいをぜちゅッ、ぜつぼうでぇ~!ぎがふぁいやーーーーーー!!!!」
シーン。
「な、なにも出ませんよ?……うぅ恥ずかしいぃ~……。」
少女は顔を赤くしてプルプル震えている。
(くぅ~言えてないではないか!!もう一回だッ!!)
「もう嫌です~!」
その後一時間程叫ばせたが、結局魔法っぽいものは出なかった。