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日本、日曜日、太陽が真上にある時間。
僕、天野才人はこれから異世界転生をする。
(クククッ。このまま予測通りに事が進めば、僕は晴れて異世界行きだ!)
転生するための手順はこうだ。
横断歩道で赤信号を渡る頭の悪い幼女と、居眠り運転をしている暴走トラックが同時に来るのを待ち、
その時僕が颯爽と登場して、幼女の身代わりとなって死ぬ。
実に完璧な作戦である!無理があるとすれば、二週間経ってもその場面に遭遇しないことぐらいだ!
…………ンッ!?
来た、幼女だッ!赤信号を渡ろうとしているッ!
その傍ら運転手が居眠りしているトラックも見える(僕は目がいいのだ)!
来るべき時が来たぞ!
「うおおおおお!!!!」
そして僕は雄叫びを上げ、赤信号を渡る幼女に飛び掛かった!
「きゃあぁっ!」
幼女が驚いて声を上げるが、もう遅いッッ!
僕は身代わりになるため、幼女を歩道まで突き飛ば――――うおっ!?
(なんてことだッ!この僕が小石如きに躓くなんてッ!!)
道路に足をつき、最後に見たのは――――――眼前まで迫りくるトラックだった。
トラックに轢かれて死ぬ事で、結果的に異世界転生は成功した。やはり僕の予測は完璧だった。
しかし予想外だったのは、僕とあろうものが小石に躓き幼女を助けることが出来ず、巻き添えにしてしまった事と、
…………僕の躰がないという事である。