No.2 2日目:朝のひだまりに晒されて
おはようございます、わごむです。
青春時代無為な時間を過ごしたなと、学生ながらに思う今日この頃でございます。
それでは、世界滅亡議事録2話目です。どうぞ。
「…おかしいだろ、5時って」
現在時刻は4時50分。日が出始め、ほのかに明るい。
春暁というやつである。
まだ待ち合わせ場所の駅前には礼司しかいない。
というよりは、さすがにこれだけ朝早くだと閑散としていて、指で数えられるほどしか人間がいない。
これだけ人が少ないと、知り合いを探し出すのも随分と簡単なようで。
「あ、礼司おはよう」
「お、よぉ、甲斐」
礼司に次いで2番手にこの場所にやってきたのは、小峰甲斐という男子だ。小柄で、男子にしては髪の毛が長めなため、かっこいいというよりかわいいという表現の方が似合う、美形な子である。
「5時に駅前集合なんて結ちゃんも無茶なこというよね」
あはは、と可愛らしく微笑みかける甲斐。
もし彼が女の子だったなら、礼司は結奈より甲斐のことを好きになっていたかもしれない。
「あぁ、そうだな。あいつは昔からそういう奴だ」
彼女は昔から自分で言ったことは曲げないタイプだったと礼司は理解している。
「どうしたの、にやにやして?」
「な、にやにやなんかしてねぇよ!ったく含みのある言い方しやがって」
照れて顔を背ける礼司。
「そういえばさ、礼司は結ちゃんと一緒に来なかったの?」
幼なじみはいつでも一緒にいるようなものだと、甲斐は認識しているらしい。
が、礼司はそれを否定する。
「幼なじみったってそんなにいつも一緒にいる訳じゃねぇよ」
「へぇ、そういうもんなのかな。きっと結ちゃんも僕と同じようなこと言うと思うんだけど」
「いいや、あいつは俺のことを分かってくれる」
「じゃあ賭けしよう。勝った方が貸し1ね?」
「おう、いいだろう」
そんな小さなことで賭けなど、人間も小さな生き物だ。
と、そんなこんなをしているうちに残りの2人がやってきたことに甲斐が気付く。
「あ、噂をすれば結ちゃんがきたよ。それに奈々ちゃんも一緒だ」
「ん、おおそうか」
礼司の幼なじみ坂原結奈と彼らの友人、奈々ちゃんこと小櫻菜々子がこちらへ向かって歩いてきた。
「おっはよー、礼君!それに甲斐君も!」
「……2人ともおはよう」
菜々子は、結奈とは性格も体格も対照的である。
いつでも冷静沈着な態度をとり、スレンダーな体つき、腰まで伸びる長髪も相まって美しいという印象を強く受ける。
なんにしても、これで『いつもの4人組』の完成である。
「礼君はどうして私よりも先にこっちに来ちゃうかなぁ。幼なじみなんだから一緒に来てもいいでしょ~?」
「……うちも、そうおもう」
女子2人が礼司を責め立てる。彼女らの思う幼なじみとは、甲斐の思うそれと同じようなものらしい。
「お前らもか……はぁ」
甲斐は、自分の思惑通りになってうれしそうににこにこしている。
「3対1で僕の勝ちだね」
「え?どういうこと?」
「なんでもねぇよ、こっちの話だ」
ふーんまあいいけどね、と結奈。
「それより2人とも5時より前に着くなんてえらいねぇ」
まるで人事のような発言だ。
「それをやらせたのはほかでもない結奈だけどな」
一拍おいて、結奈。
「あっはは~ごめんごめん。今日はみんなと目一杯遊びたかったから」
そのあと心なしか結奈は寂しそうな表情をしたが、誰も気付かない。
「……じゃあ早くいこう」
菜々子のそんな言葉にかき消されてしまうのだった。
■ ■ ■
「だぁ。また負けたっ!」
「ふっふー、また礼君か!じゃあ今度の命令は……」
結奈に言われるがまま電車に乗せられ早30分。
昨日の一件もあってか車両内には人っ子1人いない。
席が自由に使えるので、彼らはボックス席に座り全員でダウトをやっている。
そう、ダウト。トランプのダウトである。
1から13までを裏向きにして順番に出していくのだが、自分の順番に対応したカードを出す必要がない、つまり別の数字を出しても構わないという、トランプにおける最大の嘘付きゲームだ。
ちなみにトランプは菜々子が持ってきた。
なのだが……
「笑いながら車両内を走って1往復してきて貰いま~す!」
「い、いや、それは迷惑だろ」
「何を言ってるの、礼君。どうせこの車両には誰もいないから大丈夫だって!」
なのだが彼らは、1位の人がビリの人に一つ命令できるというルールを余計に作りだしてしまったらしい。
「……それは、面白そう。礼司、頑張れ」
「ふざけんな菜々子!もちろん、甲斐は俺の見方だよな、な!?」
「いや、僕もちょっと面白そうだなって思ったんだけど……」
「お前もか!?お前までそっち側にいるのか!?」
「ほらほら礼君~。諦めてやっちゃいなよ~」
「くっ。わかった、やればいいんだろ、やればっ!」
礼司は通路でクラウチングのポーズをとる。
「それじゃあ。位置について~、よ~い、どん!」
優奈の掛け声とともに、走り出す礼司。
「あはははははっ!はははははっ!!はっはっは!!!」
「「「ぶふっ」」」
嗤い、もとい笑いをこらえてプルプルとふるえ出す一同。
「はぁ、はぁ……。ど、どうだ。やってやったぞ……!」
「う、うん。お疲れ、礼司。面白かっ、ふふふ」
思わず吹き出す甲斐。
「わ、笑うなよ!傷口に塩を塗らないでくれぇ!」
「……心が痛んでるところ悪いけど、礼司」
「な、なんだよ?」
「……外にいた女の子が『う、うわぁ』って顔しながらこっち見てた、ふふっ……」
追い討ちをかける菜々子。
「も、もうやめてくれぇ」
「黒歴史がまたひとつ増えたね、礼君?」
「誰のせいだと思ってる!」
「え~?誰のせいだろうねぇ?」
すっとぼける結奈。
「そりゃないぜ……」
みんな礼司のことが好きなようである。
いや、語弊があっただろうか。
正確には、礼司をいじるのが、好きなようである。
それにしても、と甲斐。
「ダウトでもそうだったけど、礼司って何でも顔に出るよね。高校入って同じクラスになったけど、初めて会ったときはもっとクールで近寄りがたい人かと思ったよ」
甲斐に限らず、礼司は他人に持たれる第一印象がだいたいそういった感じだったので、結奈に助けられてきた部分が多い。
というのも……
「昔から礼君に友達が少なかったのも第一印象がよくなかったからなのかなぁ?」
というわけである。
「特に中学の頃なんてひどかったよね」
「だあああ結奈ぁ!その話はするなぁ!!」
「……なんの話?気になる」
「ほら、こういう話に食いついてくる奴がここにはいるんだよっ!」
そんな馬鹿みたいな話をしながら笑いあう彼らが、ボクには余りにまぶしく見えて。
「あーあ、面白いね」
独り彼らのことを、見上げながら見下げていた。
■ ■ ■
電車に揺られて実に1時間とちょっと。
やってきたのは……
「なぁ、結奈。なんだ、これ?」
「あれ、礼君は知らない?ここ、ポンカンの館っていう旅館だよ?」
旅館だった。旅館の玄関口である。
「それくらい分かるわ!俺が聞きたいのはどうしてこの旅館に来たのかってことだよっ!まさか泊まる訳じゃないだろうな?」
礼司はいささか不安だった。遊ぶ計画は全部結奈に任せてしまったが、彼女はどこか抜けているところがあるのだ。
今回礼司が持ってきたお金は2万円弱。他の3人も似たような金額だ。
ただでさえ電車での長旅で1000円ほど使ってしまっている。帰りのことを考えると旅館に泊まるなどということは考えられない。
そんな焦燥は礼司の思い過ごしだったようで。
「まさか泊まるなんて有り得ないよぉ。礼司ってちょっとおバカなところがあるよね」
「おばっ、じ、じゃあなんのためにここまで来たんだよ」
おバカはお前だバーカバーカという言葉を頑張って飲み下す礼司。
「うちの親がね、ここの温泉のタダ券たくさん持ってたんだよ。それを貰ったからみんなで温泉入ろうと思って」
どうやら泊まるのとは別で温泉に入ることができるらしい。
「そういうことはここに着く前に教えとけ」
と結奈の頭をチョップする。
「礼君、痛いよぉ」
半泣きの結奈にざまあみろと礼司。
「この2人をみてると飽きないよね」
「……2人まとめてペットにしたい」
「あー、放し飼いとかしとくといつでも喧嘩してそうだね」
「……こんなところでも口論を始めちゃう2人、かわいい」
甲斐と菜々子、こちらもこちらで自由である。
4人ともひととおり言いたいことを言い終えたところで、結奈の一言。
「じゃあここ混浴だから、みんな持参してもらった水着に着替えて中で集合ね」
「……え?」
「あ、はは、は……」
釈然としないその返事が気に入らないらしい結奈。
「え?どうしたの、みんな?」
甲斐と菜々子がおとなしく耳をふさぐ。礼司はわなわなと震えて。
「水着持参なんて一っ言も聞いてねぇよ!おバカはお前だバーカバーカっ!!」
やっぱり結奈はどこか抜けていた。
ここまで読んでくださってありがとうございます。お久しぶりです、わごむです。
夏休みがあと2日で終わってしまうのが悲しくて悲しくてついつい夜更かししてしまいます。
え?学生のくせに夏休み終わるの早すぎだろって?
いやいやうちの学校には夏期講習というブラックな行事があるんですよね。
いやこれを読んでくださっている学生の皆様方には私の分まで夏休みを楽しんで貰いたいです、本当。
こうも暑いといろいろ萎えてくるので、涼しくなるような身内話を一つ。
あ、身内話めんどくさい方は読まなくてもいいですよ、って読みたくない人はこんなこと言わなくても読まないですかね(笑)。
あれは去年の冬のことでした。
なんとなんと雪が降ったんです。
雪なんて滅多に降らない地方に住んでいますからそりゃあもうみんなで大騒ぎして。
学校帰りに友人ら10人くらいと雪合戦をしようってなったんですね。
でもただ雪合戦するのも味気ない。じゃあ『寒い』といったら雪の降る中上裸になってなんかやれと。
これ聞いた瞬間に友人が5、6人ほど「じゃあ俺ら観戦してるね」って言いました。
いや、もちろん私は雪合戦しましたけどね。
で、4人バトルロワイヤルでもいいんですけど、2対2でチーム戦ってことになりました。
最初は普通に雪合戦やってたんですけど、学生のノリって恐ろしいんですよ。
2対1、相手が零距離で私1人を集中ねらいしてくる形になってしまって。
雪玉をぎゅっと固めると硬くなるじゃないですか。
あれを顔にゴリゴリ押しつけられて、顔のパーツ無くなったかと思いました。
最終的には無意識のうちに「寒い」って連呼してましたね。
もう十分寒い思いしたんですけど、ここからが本番なんですよね、残念なことに。
はい、罰ゲームですよ。全員寒いって言ったんで4人ともやったんですが。
まず、1人目の友人。
雪の中、10秒間くらい、じっくりと、もちろん上裸で、ついでに裸足ですよ、ボディビルダーっぽいことやってました。うん、お疲れさま。
てことで次、2人目の友人。
外で上裸って言ったらやっぱあれしかないですよね。
「そんなの関係ねぇ!そんなの関係ねぇ!」
やってました。寒いですね。
3人目の友人。
やっぱり男は女が好きなんだなって思いました。
雪でおっぱい作ったあとダブルピースして決めてましたね。人間の核心はここなのかなって、考えさせられました。
4人目、私です。
いや、ほかの3人に比べて私は楽に終わりました。
雪の上で前転をして、後転をして、寝転がってごろごろとひたすら転がっていただけです、上裸で。
これやってるときは本当に周りの目が気になってしょうがなかったですよね。とは言っても恥ずかしいとかじゃなくて。通報されたりとか、学校から退学しろとか言われたりしたらどうしようとか、そんなことばっか考えてました。
人間って小さい。
結局のところどうなったかというと、次の日の模試で死にました。
長々と何を話したかったかというと、重大な日の前日には羽目を外さないようにしようね、ということでした。
前回に続きおバカな話、失礼しました。
身内話も疲れますね。ていうか完全に第2の本編になってる気が……。
肝心の本編については、文字数はそれなりに増えたんですけど、話のグダグダ感が否めないですね。
次回は頑張ります。
そのうち3話も投稿しようと思いますのでよろしくお願いします。
最後に、ここまで読んでくださった読者の皆様方に感謝を。
ありがとうございました。