第七話 『ギルド登録』
今回は説明会に近いですが、ギルドの説明は必要です。
そしてやっとダリウスさん以外のキャラが出てくる……!
それではどうぞ!
あの日の晩から一夜明け、馬車を走らせ暫くすると昼過ぎに【ラフリア】に着くことが出来た。
馬車を門近くの留置所に置き、俺達は街のなかに入った。街の中には鎧を着た恰幅の良い人や金髪、青髪等の様々な髪色をした人、時々獣耳をピクピクと動かす獣人女性など、多数いた。
「すげぇ! 本物の獣耳だ! それに久し振りの都会だし!」
一週間以上も森の中で生活していたのだから無理はない。動物や魔物しかいない森とは違う。人間や憧れのファンタジー生物が溢れ帰っている事に感動を覚えた。
「大袈裟だよ、カンザキ君は」
ダリウスさんはそう言うが、これは大袈裟でもなんでもない。俺はロマンに生きる男だからな。
「カンザキ君は、店でその髪を隠せるフード付きの服を買った方が良いよ。その服も目立つし」
「俺のこの髪が異世界人に多いからでしたっけ? 確かに珍しいので色々と聞かれるのは面倒くさいですね。分かりました。ギルドに訪れた後、直ぐ武器屋で防具を買いますよ」
まあ、実際異世界人何だけど。異世界人は大昔から勇者として召喚されていたみたいだから、その関係者だと思われるだろうな。でも珍しいだけだから誤魔化せるだろう。
「それじゃあ、僕はそろそろ行くよ」
「えっ、もうですか?」
「うん。悪いけどね。あ、そうだ。はい、これ」
ダリウスさんは何か入っている袋を俺に持たせる。ジャラジャラと音をたてて何かと重い。袋の口を開けると、そこには銀色の絨毯が――
「って、これ銀貨じゃないですか!?」
銀貨の山が盛り上がっている。よく見ると銀貨に埋もれているように金貨が一枚だけあった。
「銀貨が百枚に、金貨が一枚入っているはずだよ」
それって大体二十万円じゃないですか……。俺の小遣い何ヵ月分だよ。
「貰えませんよ! こんな大金」
「良いんだよ。一日の護衛代は約四万ゴルぐらいなんだ。それを五日間だから丁度二十万ゴルで合ってるさ」
「ですけど……」
「貰ってください。これはケジメだからね。商人としては貸し借りはしっかりと返さないといけないんだから」
えぇ……。商人魂をこんなところで出さなくてもいいじゃないですか……。
「何かあったらここから北にある【エルノ商店】という店に来てください。僕がやっている店なので優遇するよ。僕が居なくても妻に言ってくれれば良いですし」
「えっ、結婚して――いや、……はい、分かりました」
怖っ! 意外そうな顔したら睨まれたよ!
「僕の妻との出会いはね――」
「また再会した後にしましょう! じっくりと聞きたいですし!」
これって長くなるパターンだ。咄嗟に回避する。俺の機転凄いね!
「それは残念だね。それじゃあカンザキ君、また会いましょう」
「はい、ありがとうございました!」
ダリウスさんが見えなくなるまで手を振る。周りの人に変な風に見られたが気にしない。
俺も冒険者ギルドに行くとするか。
「確かギルドは西の方だったよな?」
そう言って西の方へ足を向け、歩き出した。
◇
歩き出して三十分程でギルドに着くことが出来た。
ギルドの外装は木造だが、屋根は赤煉瓦を敷き詰めている。そのギルドの壁には『ラフリア・冒険者ギルド』と大きく書かれている。
その文字は明らかに日本語ではないが、ダリウスさんに教わったお陰で大体の文字は理解することが出来た。
石で出来た段差を登り、両開きになっている木製の扉を開けて中に入る。
中の様子は予想通り外装と変わらず木製の質素な造りで、奥には五つに仕切られたカウンターのような窓口がある。その窓口の右には一際大きな窓口が二つあり、『買取窓口』と書かれていた。
ギルドの登録の為に普通サイズの窓口に向かう。
「(なんだか視線が多いな……)」
ギルドに入ってからもだが、ギルドに備え付けてあるテーブルにいた冒険者と思われる人達が鋭い視線を送る。新人の俺を見極めているのかもしれない。いや、この黒髪か?
そんなことを気にしつつ、一つの受付の前に立つ。受付嬢は二十歳前に見える可愛らしい女性がいる。何でここにしたかって? 言わせんなよ、恥ずかしい。
「ようこそ、冒険者ギルドへ! ……って、その髪は……?」
「あっ、これですか? 生まれつきなんですよ。気にしないでください」
「へぇ、そうなんですか? あっ、すみません。本日の要件は何でしょうか?」
「気にしていませんよ。ギルドの新規登録に来たんですけど」
「初めての方ですね。それではこちらの登録書類に記入してください」
渡された書類には名前と年齢、登録レベル等の記入欄があった。それを異世界文字で記入して受付嬢に渡す。
「はい、ありがとうござい――名字持ち……? もしかして貴族の方でしたか?」
この世界では名字は貴族や大商人に多く付けられている。俺の服は見たこともない素材で出来ているからだろう。まあ、地球の学生服なんだけど。それで貴族と思ったのかもしれない。
「いえ、貴族ではありませんよ。昔から付いているで、きっと昔に没落した貴族だったのではないでしょうか?」
「確かに貴族の方にしては私達平民に対して礼儀正しいですね。えっと、カンザキ……さん? ギルドカードの発行には銀貨が一枚必要なんですが、頂けますか?」
「はい、分かりました」
「――確かに頂きました。少々お待ちください」
ダリウスさんに貰った銀貨を一枚出すと、受付嬢はギルド内部に入り、五分ほど経った後に戻ってきた。
「こちらがギルドカードとなります。登録のために本人の情報がいるので、血を一滴だけもらえますか?」
渡された針で指を突き刺し、出てきた血を受け皿に垂らした。この数日でこのぐらいの痛みには慣れてきたな……。
受付嬢は垂らした血をカードの窪みに落として、俺にカードを渡した。
「これでギルドカードの登録は終わりました。ギルドについて説明は必要ですか?」
「はい、お願いします」
「分かりました。まずギルドカードは偽装不可能となります。完全な個人情報なので無くさないようにしてください。後、ギルドカードを持っている時に魔物を倒すとその情報がギルドカードに記されるようになっていますので、依頼の際に確認させていただきます。ギルドランクについてですが、FからAランクまであります。その上はSランクとなりますが、ほんの一握りの方しかなれません」
「ほんの一握り?」
「はい。例えば竜を討伐したり、Sランクの魔物を討伐したら認められる事になりますよ」
竜って、無理じゃね。Sランクってそんな上なのか?
「話が逸れましたね。カンザキさんは登録したばかりなのでFランクからのスタートとなります。後はこの国にある迷宮についてですが、最低でもDランク以上にならないと入ることを認められません。そのランクに到達したら、ギルドが管理している魔方陣の所まで案内させていただきます。続いて依頼についてですが、採取や討伐、護衛の依頼等、多々あります。迷宮にいる魔物の素材採取の依頼もありますが、少し危険が高いので報酬も高めに設定されていますよ」
「迷宮に入ったとして、帰るにはどうすればいいんですか?」
「自分が現れた魔方陣に乗っていただければ帰還することは出来ます。後はとても高値ですが、とある冒険者の方が作られた魔法結晶を使えば、登録していた場所に戻ることが出来ますよ。他に質問は有りますか?」
「いえ、大丈夫です」
魔法結晶か。ゲームで言う帰還魔法と同じ働きみたいだな。あれってPKプレイヤーが持っていて、逃げられたりするから厄介なんだよな……。
染々そう思うと、元の世界が懐かしくなってきた。迷宮に入るには冒険者として頑張らないといけないな。
「では、これを渡しておきます」
受付嬢が渡してきたのは小さな巾着袋のようなもの。というか只の袋だ。
「これは?」
「それは【インベントリ】といって、道具を仕舞える魔法具なんですよ。何かアイテムを持っていたら、『収納』と唱えてください」
インベントリ? つまりアイテムボックスのようなものか……。
昨日狩ったグレーフウルフの素材を手に持って唱える。
「『収納』」
すると持っていた素材は俺の手から消えてしまった。
「うわっ、凄いですね!」
「ふふっ、そんな反応久し振りです。もし取り出したかったら、そのアイテムを念じれば出てきますよ」
直ぐに実践してみると手に素材が出てきた。それをまた収納する。
「インベントリですが、それは上限がないわけじゃありません。自分のレベル×十キロ分をいれることが出来るので、頭に入れておいてください」
「はい。分かりました。あっ、この近くの武器屋って何処にありますか?」
「武器屋なら、ヴィリムという男の方が東の方で経営しているはずですよ」
「ありがとうございます。助かりました」
やった。情報をゲットだ。早く行くことにしよう。
頭を受付嬢に下げてギルドを出ようとすると、ふと思った。
「すいません。最後に名前を聞いても良いですか?」
「えっ、どうしたんですか?」
「いや、世話になった方の名前を知らないのはどうかと思いまして」
「へぇ、カンザキさんは人柄の良い方なんですね! 私はティオといいますよ。よろしくお願いします!」
「ティオさんですか。覚えておきますね。これからもよろしくお願いします」
そう言って今度こそギルドを出る。
出るときに冒険者達の視線があったが気にしない。『てめぇ! 俺のティオたんを……殺す!』なんて聞こえてない。うん。
まあ、でも。早速いい人に出会えて良かったと心から思う。親切な人と交友関係を結ぶと良いことが多いしな。
……別に美人だからお近づきになろうとなんて考えてないんだからねっ!
明日は18時に更新します。
少しだけソラの事?も書く予定なので、次回もお楽しみに!